第6話 助けた美少女配信者と再会してみた
「――この度は危ないところを助けていただき、本ッ当にありがとうございました!!」
ホムラアカリ――もとい、ホムラさんと出会った俺が真っ先に言われたのは、深々と頭を下げての感謝の言葉だった。
「え、お礼なんていいですよ。困った時はお互い様って言うじゃないですか。それにお礼の言葉は
「それでも、やっぱり面と向かってお礼を言うのと、言わないのとでは全然違うと思うので……改めてお礼を言いたかったんです。命の恩人の
カメラが回っていない所でも、こんな風に他者に気を遣えるとは。
彼女の動画を見ても思ったが、やはり実力だけでなく人柄も優れているようだ。
そうでないと配信者としても一流にはなれない、という事か。同じ配信者として参考になるなぁ。
「わかりました。そういう事なら、素直に受け取ります。どういたしまして。……とはいえ、この話題はこれくらいにしておきましょうか。予定の時刻も迫ってますし、早速準備に取り掛かっちゃいましょう」
「あ、はい。そうですね!」
そして俺はホムラさんから返してもらった配信用ドローンを立ち上げ、
◆
(三人称視点)
――ホムラアカリと
(どうしよ……)
ホムラは内心、戦々恐々としていた。
しかし時間が経つにつれ冷静になり、逆に再会するのが怖くなってきたのだ。
というのも。
(数十億分のお礼って何すればいいの……!?)
彼女が渡された回復ポーションは、少なくとも数十億円分の価値がある超希少品だ。
Aランク探索者のホムラといえど、すぐに払える額ではない。飲まなければ死んでいたので仕方がなかったが、ホムラはトオルに数十億の借金をした形になる。
(Aランク探索者として活動を続けられれば、返済不可能な額ではないけど……数年、或いは十数年は掛かる。それまで逆川さんが待ってくれるかどうか。もしくは、代わりに別の何かを要求される可能性も……?)
十六歳という若さで莫大な額の借金を背負った気持ちになり、割と人生の崖っぷちに立っているのではないかと戦慄するホムラ。
(けれど……命の恩人に、恩を仇で返すような真似はしたくない。まだお礼の言葉もちゃんと伝えられてない)
そんな混迷を極めた状態ではあったが、覚悟を決めて
そして薬のお礼の件について、トオルからの回答は。
『あ、別にいいですよ。タダであげます』
(え、えええぇぇぇっ!!?)
完全に予想外の回答で、ホムラは更なる混迷に突き落とされる。
(いやいやいや、数十億ですよ!? それくらいあったらほぼ何でもできるじゃないですか! それをタダであげるって言われても素直に『わ〜ありがとうございます☆』って流石に受け取れませんよ!? この人石油王か何かですか!??)
『回復ポーションなんて超高級品を頂いてしまって、感謝の言葉だけで済ませてしまうのはあまりにも申し訳ないです! 何か私にお礼をさせてください!』
『全然気にしなくて大丈夫ですよー。ポーションくらいなら腐る程余ってるので。』
(く、腐る程余ってるんだ……)
内心ドン引きだった。この世界に一本数十億円のポーションを、腐る程余らせている存在がいるなんて思いもしなかった。
しかしホムラもこのまま引き下がれない。金額も一つの理由だが、彼女の誠実性などの理由から、それを認められない。
『その、私が納得できないんです。助けられた身で失礼かもしれませんが、何か私にできることはありませんか……? 困っていることや、手伝えることがあれば仰ってください!』
『うーん、本当に気にしなくて大丈夫ですよ? こちらも配信用ドローンを回収してもらいましたし、それで
欲のない人だな、とホムラは思う。
回復ポーションはそれ一本で、大勢の人生を左右する程の代物だ。ホムラの人生だって歪められるだろう。
それをせず、なんの見返りも求めず、その実力をひけらかすこともない。
誠実な性格、というよりは単純に興味がないのだろう。よく考えれば当然なのかもしれない。彼ほどの力があれば、何だって手に入れられるだろうから。
故に私から彼に与えらえるものなど何もない――ホムラがそこまで、トオルを分析したところで。
(……興味?)
引っかかる単語、停止する思考。彼の行動を思い出す。
彼は今、何に対して興味を抱いているのだろうか。
助けてもらった時、真っ先に特異個体の肉を回収していなかったか?
奇声を上げる程の執着。食材。彼はその食材をどうするつもりなのか。
……確か彼は、自分の経営する料理店の動画を配信していなかったか?
『……逆川さん。確か、料理店を経営していらっしゃいましたよね』
『え? はい、そうですけど』
『私が逆川さんのお店を宣伝する、というのはどうでしょう』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます