2.状況を的確に判断せよ。
『やれやれ、私はとんでもないところに来てしまったようだ···』
私が今いるのは、敵であるオカルト連合の最大組織、「黄金の機界」の本拠地である。
ここで、「黄金の機界」について説明しておこう。
「黄金の機界」通称「黄界」は、科学とオカルトの融合によって不老不死となることを目指す集団だ。確か、「女神ヴィオリエッタがいつの日にか女神の子たる我らを救う。我らは、その救いを受けるために救いの日まで生き続けなければならない。しかし、人間はいつか死ぬ。ならば、死から逃れようではないか。」といった教えだった。少なくとも私はそう習った。
そんな倫理的にもすれすれの行為を日常的に行っている組織の病室だ。ただの病室なものか。あちこちに用途も分からない機械がある。この機械たちだけでも一般人が目にしたら卒倒しそうな代物だが、私はそれ以上に恐い事実を知っている。ここに収容されている政府軍の兵(捕虜)は、儀式と称した人体実現のモルモットになるということ。これ以上恐いことはない。私だって恐いのだ。これが新兵だとしたら、間違いなく発狂するだろう。
冷静に思考を巡らせていると、実はそんなに時間は残されていないのではないか、そんな結論にたどり着いた。もたもたしているとモルモットにされる。かなりまずい状況だ。
脱出のヒントを探そうと、部屋をぐるりと見回すと、隣のベッドが動いた様な気がした。少しカーテンをどけてみると、金糸のごとき長い髪を持つ少女が起き上がってこちらを虚ろに見据えてきた。
「どうしたの、君?何か気になることでもある?」
そう問いかけると少女は急に目を見開いた。
急激な少女の変化に驚いていると、少女がドアの方を探るように見てから、こちらを身を寄せて口を開いた。
「お姉さん、政府軍のひと?だったらすぐにこの部屋を出たほうがいいよ。もうすこしすると悪い人が来てひどいことされちゃうから」
(…それは分かっているんだよ)
この子は私の思いを知らないから当然だが、やはりほぼ確定されている運命を口にされると気が重い。急に心臓にダンベルをねじ込まれたかのような重さだ。
(ああ…私、死ぬのか…)
より冷静に分析しても、この絶望的な状況と迫りくる死の運命に精神を抉られ思考力を奪われる。負のループだ。このままではどうしようもない。
「ねえ……ねえ、お姉さん」
「……あ、ごめん。どうしたの?」
急に話しかけられて少し驚いていると、少女はそのあどけない愛らしさを持つ顔に不釣り合いなほど妖艶で蠱惑的な笑みを浮かべた。その笑みからは、少女が何か有益な情報を持っていることがひしひしと伝わってきた。
『お姉さんはさ、この
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