廃れた世界のリボルバー

恋若スミレ

嵐の前の静けさ?

1.ここは敵地。警戒せよ。

目の前に、銃口が突き出される。


瞬間、耳を裂く様な轟音と共に銃弾が頭蓋に撃ち込まれた。視界が弾け、て、ゆく···




『それで、ほんとうにいいの?』


  


     


――――――――――――――――――――


西暦a-66年、大規模な戦争が始まった。


政府軍とオカルト連合の内戦である。


きっかけは、政府の「新興宗教禁止法」成立である。


宗教問題の本格化により、新興宗教の創始、布教、信仰が全面禁止となった。当然、宗教側は猛抗議。


連日のデモや暴動に対して政府が武力を行使した。


この政府の動きに宗教側は痛烈な批判を浴びせ、ほぼ全ての宗教組織が結束し、オカルト連合を結成。


お互いに緊張感を高め、遂に武装蜂起。一般人までも巻き込んだ内戦となった。


――――――――――――――――――――




突如私の脳に鮮明な画像が浮かびあがる。


砂塵に呑まれたビル、最早人の姿を留めていない化け物、リボルバーを構える私の姿。


視界が白いヴェールに包まれていった。全てがヴェールに隠されたとき、あの少女が目の前に現れた。なにか言っているが聞き取れない。紙芝居のように移り変わっていく視界。また少女が現れた。こちらを振り向いた。同時に紙芝居は途切れ、私は···現実空間に引き戻された。






覚醒してから真っ先にこの眼に飛び込んで来たのは灰色のコンクリート壁。私はゆっくりと起き上がった。


そして視界の違和感に気付く。


···視界の左半分が白い。何だこれは?触ってみる。


布···あぁ、包帯か。痛みこそ感じないが、私は左眼の辺りを怪我しているようだ。


頭が殴られるように痛い。それに、何かを忘れている気がする。銃の使い方?いや違う。何が思い出せない?全部覚えている。砲撃に巻き込まれたことも、消えていった仲間のことも。教官から頭に叩き込まれた敵の情報も···


 とにかく、私は何を忘れたのか分からないため、ここがどこなのか考えることにした。その問いは案外早く解き明かされた。眼前にでかでかと掲げられた幕。描かれたマークは、オカルト連合最大の構成組織「黄金の機界」通称「黄界」のものだった。




 『やれやれ、私はとんでもないところに


 来てしまったようだ···』

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