第10話 おっさん試験を受ける

入門して3ヶ月。館長から「そろそろ昇級試験を受けませんか?」

と打診があった。私が通う道場では3ヶ月に一回昇級試験がある。子供に関しては

年齢との兼ね合いを考えて、受けたり受けなかったりするが、大人は毎回受けることも可能らしい。


せっかく空手をするからには早く黒帯も欲しいので、受けさせていただくことにした。



試験当日。はっきり言って、全く緊張はない。まあ、10級から8級に上がるだけだし、今更落ちる不安もない。というか昇段審査と違って基本的に受ければ合格だ。


今まで見てきた感じだと最初の試験は基本動作だった。各種の突きや受けを一通りやっておしまいのはずだ。


経験者とばれてしまった今、さすがにある程度のクオリティは見せておかないといけないが・・・。



道場奥に長机と椅子が置かれ、館長が座る。その横にナオキ君が横に立ち、名前を呼んでいく。私の名前も呼ばれる。最初は低級者からだ。私の他に小学生が4人。白帯は私ともう2人、後の2人は白帯の一つ上の黄色帯だ。


全員で基本の受け・突きを行った後、二十七の型という基本動作の型を行う。

一通り終わり、館長から声がかかる。


「お疲れさまでした。白帯さんは下がってください。」


残った黄色帯の子達は平安の型まで行うのだろう。

一礼し他の白帯の子達と一緒に回れ右をして下がろうとすると、


「お父さんは残ってください。」


館長から声がかかる。


そういえば飛び級させるって言ってたな。

平安初段一応一通りできるが・・・。


平安初段を何とか無事に終えた所でさらに館長から声がかかる。

「二段も行けますよね?」


まあ、行けるけど・・・。できれば先に言ってほしかった・・・。

まさかに二段までさせられるとは。しかもソロで。



二段も何とかノーミスで終了。今度こそお役御免となった。

その後中級・上級の子たちの試験が終わり、全員で並んで一人ずつ館長からの指導をしてもらう流れに。


「佐々木さん」

「はい」

「基本動作はほぼ問題ないです。かなり長いブランクがあったにも関わらずこれだけ基本が出来るのは、小さいころにかなり真剣に取り組んだからでしょう。

今小学生の皆さん、今真剣に取り組んでいることは大きくなっても絶対に残るというのは佐々木さんを見ればよく分かると思います。」


館長は続ける。


「平安型に関しては、流派の違いもあって戸惑うこともあったでしょうが、全体的によくできていたと思います。ただ、1点気になったのは、前屈立ちの際の後ろ脚が若干曲がっていることですね。体が硬いせいもありますが、そこは修正していってください。」


そういえば前屈立ちの確認してなかったな・・・。



とはいえその日は無事に試験は終了。後日昇級の証書をもらうことになった。


結果は6級。白から黄色を飛び越して青帯ということになる。跳びすぎだろ・・・。


「会長と話して今回は6級ということになりました。元々茶帯を持ってるので本当はもっと上まで飛ばしたかったのですが、他の道場生の兼ね合いもあるので・・・。」


いやいや、そんなに飛ばしたら、下手したら1年ちょっとで黒帯の試験になってしまうんですが・・・。


何はともあれ初の昇級試験は良い結果で終えることができた。上達が認められるというのは何歳になっても嬉しいものだ・・・。


昇級もしたことだし、次の課題に取り組もうと考える私であった。


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