おじさんがフルコン空手を始めてみた
@yongmoon
第1話 白帯の中年
真新しい道着に袖を通す。今日が初日だ。
小学1年生になったタイミングで息子が始めた空手。
「お父さん、柔道とアメフトしてたんでしょ?体格も良いし一緒にやりましょうよ!」
送迎のたびに、館長や大人の門下生に言われ続け丸3年。
運動不足気味だし、親子で一緒の趣味も悪くないと思い、ついに入門の運びとなった。
道着を着るのは中学の柔道部の時以来。まあ体が覚えているもので、帯も問題なく結べた。
いつもは車から降りる息子を運転席から見送るのだが、今日からは一緒に道場向かう。中に入った瞬間、挨拶がこだまする。こちらも挨拶を返し、改めて館長の下へ・・・。
「よく来てくださいました。息子さんも励みになると思います。無理しない程度で頑張ってください。」
初老の館長は優しい笑顔で声をかけてくれる。
時間になり練習開始。
準備運動から軽い筋トレを行い、突きや受けなどの基本稽古に入る。
「細かい動作は追々教えていくので、今日は先輩たちのやってるのを真似してみてください。」
大きな道場ではないが、子供と大人が一緒に練習するので人数は合わせて20人くらいになる。
館長にそう言われ、4人×5列の一番後ろでやってみる。
基本稽古の後はミットを使った蹴りの練習。ミドルキックをミットに打ち込む。
「お父さん上手ですね。筋が良いですよ!」
黒帯の長谷部さんがほめてくれる。長谷部さんも小学校6年生の道場生のお父さんなのだが、こちらは息子さんと同時に習い始めて、4年で黒帯になった(息子さんは茶帯)。
「いやあ、K-1とかよく見てましたから・・・」
この道場、館長の方針で褒めて伸ばす傾向が強い。よほどのことがないと厳しく怒らないが、そのおかげか子供たちものびのび練習に励んでいる。私も基本稽古から褒められっぱなしで、気分は良いが、若干照れくさい。
館長は私の動きを黙ってみている。
ミットへの蹴りこみが終わり、次は組手だ。ここからは小学生以下と中学生以上に分かれて練習となる。
まあ、初日なので今日は見学だろう。顔面パンチ禁止とはいえ直接体にあてるフルコン空手を初心者にいきなりやらせはしないだろう、そう思ってたら館長衝撃の一言。
「お父さんも組手やってみましょう!」
そんなこんなで初日から組手デビューとなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます