第318話 禁欲の限界

 ウチナシーレへの大移動は、予定通りの行程で進み、2週間ほどで国境の砦まで到着した。


 目の前には、アステピリゴス教国が建てた立派な石の砦があり、大きな鉄の門がガラガラと音をたてて上がっているところだった。


 砦の衛兵には事前に話は通してあったし、この一団には聖騎士隊も同行しているので、すんなり開門してもらうことができたが、実はちょっと不安もあった。


 数か月前までギクシャクしていた国同士だ。どこかに二国間の友好関係を破綻させようとする勢力とかいないだろうか、とドキドキしていたのだ。


 でも、そんな杞憂は当たることもなく、門はあがりきる。


 開門が終わると、リューキュリアの人たちが前進を再開しはじめた。門が開いた先は大きな川にかけられた石橋が続いており、さらにその先にリューキュリア教国の砦がある。


 オレたちは、リューキュリアの人たちが石橋を渡って行くのを川のほとりから眺めていた。


「こりゃ、みんなが渡り切るのにしばらくかかりそうだね」


「そうですね、のんびり待ちましょうか」


「だねー、それにしても……そろそろ、禁欲つらい……」


「ライ様……がんばってください……」


 弱音を吐くオレをリリィが励ましてくれる。


 旅に出てから2週間、周りにたくさん人がいるので、オレはみんなとのイチャイチャを自重してきたのだ。


 ここからウチナシーレまで、さらに2週間はある。果たしてオレは我慢しきれるのだろうか。


「おにいちゃん?…どうしたの?」


 オレがしょんぼりしていると、ミリアが近づいてきた。


「んー?ちょっとしんどくって…」


「え?…だめだよ…むりしたら…ミィが癒してあげる…」


「え!?いいの?」


「え?…うん…肩…揉む…ね?」


「あっ……そっちか……」


 一瞬期待したオレは、さらにしゅんとしてしまった。せっかくの妹の好意に対して、失礼なやつである。


「はわっ…おにいちゃん…どうしちゃったの…」


「ミリア、ライ様はですね……あの……」


 リリィがミリアに耳打ちをする。


「はわっ!?にゃ、にゃるほど……」


 オレの悩みを知って、恥ずかしそうにするミリア。それから、赤い顔をしてもじもじしはじめる。


「ミィは……いい…よ?」


「え?それって……」


「ミィは、おにいちゃんが…つらいなら、してあげる…」


 な、なんて素晴らしい妹なんだ……


 オレはうるうるしながらミリア神のことを崇めた。


 だが、オレのわずかに残った理性がストップをかける。


「で、でも……誰かに見られたらまずいから…がまん…します…」


 絞り出すような声だったと思う。

 ぐぬぬ、と歯を食いしばって我慢することにした。

 ……つらい…


「はう…おにいちゃん…かわいそう…」


「ライ様…」


「どうしたのじゃ?」


 しゅんとしているオレ、甘やかす2人。そこにさらにティナがやってきた。


 リリィがティナに耳打ちし、ごにょごにょと、また説明してくれる。


「はぁ……おぬし……なんでそんなに忍耐力がないのじゃ…」


「だって…うう…ごめんなさい…」


「やれやれ、なのじゃ……どれ、わしが認識阻害の魔法を」


「マジで!?じゃあ!すぐにでも!」


 ティナの素晴らしい提案を聞いて、食い気味にティナの言葉を遮り手を握りしめる。

「おぬし!?落ち着くのじゃ!」


「ミリアも!」

 そして、もう片方の手でミリアの手を握る。

「はわっ!?」


「リリィも来て!」


「は、はい…」


 そして、3人を川辺の木陰に連れ込んだ。


「ティナ!ティナ!」


「お、落ち着くのじゃ……すぐに魔法をかけるからのう」


 ティナが長い耳を垂れさせて、恥ずかしそうにしながら認識阻害の魔法をかけてくれる。オレたちの周囲に透明なもやのようなものが広がった。


「もういい!?いいよね!?」


「よ、よいぞ?」


「じゃあ!まずは3人でして!」


 オレは、どどんと仁王立ちのポーズをとる。

 リクエストを聞いた3人は顔を見合わせてから、恥ずかしそうにしてオレの前に跪いた。


 真ん中のリリィがカチャカチャとズボンを脱がしてくれる。


 そして、右側のミリアが真っ先に奉仕を始めてくれた。


 すぐにリリィが続き、ティナがおずおずと触れてくれる。


 オレはその様子をじっくりと眺めながら、2週間分のフラストレーションを解き放つことにした。


-数十分後-


「ライさーん?リリィー?」


 ステラの呼ぶ声が聞こえる。


 オレの目の前には、木の前にへたり込んだ美少女が3人、みんな荒い息をして、はぁはぁ言っている。


 オレは、まだまだ元気だ、もっとできる、もっとしたい。

 一応、さっきよりはスッキリしたけども……


「ふ、ふぅー……ほれ、そろそろ移動じゃぞ」


「………もっとしたい」


「ライ様、またティナに認識阻害をつかってもらいましょう」


「……はぁい……」


 と、いうことで、オレはしぶしぶ馬車に戻ることにした。


 馬車に近づくと、オレたちを探していたステラが近づいてきた。


「何してたんですか?

 ん?くんくん……なるほど…そういうことですか、うふふ♪」


 ステラに匂いをかがれ、すぐに妖艶な笑顔を向けられる。

 あ、これはバレちゃったかな?



-その日の夜-


「ライさん♡」


 オレのテントにステラが忍び込んできた。


 禁欲のために旅の途中は1人で寝ることにしていたのにだ。


「……ステラ、だめだよ」


「なんでですか?お昼はお楽しみでしたよね?ねぇ?コハル?」


「え?」


 テントの入り口を見ると、コハルももじもじしながら入ってくる。


「なんでボクは呼んでくれないんだよ……ステラから聞いたぞ……」


 頬を染めながら、恨めしそうなジト目を向けられてしまう。お昼に仲間はずれにされたことを怒ってるようだ。


「いや……たまたまいなかったから……」


「じゃあ……今は目の前にいるけど?」


 ふいっ。

 コハルが誘うようなセリフを言いながら、恥ずかしそうにそっぽを向いた。


「ごくり……」

 つい、喉が鳴ってしまう。


 目の前に美味しそうなデザートが2つもあるからだ。


「ば、バレてもいいんだな?」


「それは……やだ…恥ずかしい…」


「サイレントのベルもありますし、大丈夫ですよ♪たぶん。

 ……あっ!と思ったらベル持ってくるの忘れちゃいました♪そうだ!私とコハルが声を我慢すればいいんですよ!ねっ!」


 およ?サイレントのベルはオレも持ってるのだが?


 ……はっ!?

 まさかこいつ!?

 あえてバレるかもって状況で、そのスリルを楽しもうって!?


「………じゃあ、2人とも声出すなよ……」


 オレはその素晴らしい提案にぬるりと合意することにした。


「え?ボクはそんなの…んむっ!?」


 オレがキスをして身体を弄ると、すぐに色っぽい声を出してしまうコハル。


「だからダメだってばー、声出したらさ」


「だ、だってぇ……」


 もじもじするコハルをニコニコしながら眺め、手を動かす。


「コハルから誘ったんだから、我慢しないとですよ♪うふふ♪」


 ステラは楽しそうに、コハルの服を脱がし始めた。


 オレはそんなステラの身体にも手を伸ばす。


「うぅん♪そんなえっちな触り方♡」


「ステラも声出てるぞ」


「はぁい♪ごめんなさぁい♪」


 しばらく2人の準備体操を手伝って、それから1人ずつ楽しませてもらった。


 結局、1回戦が終わったころにコハルがギブアップしたので、サイレントのベルを使うことになる。

 

 ベルを鳴らした途端、遠慮なく声を出し始めるコハル。その声は、なんだかいつもより艶っぽくて、すごくグッとする音色だった。


「コハル、かわいい声だね」


「……ばぁか」


 すごく可愛かったので、2回戦も大いに張り切らせてもらった。



-翌朝-


「おぬしら、するんじゃったら事前に言わぬか。サイレントのベルは完璧ではない。わしが認識阻害をかけなかったらあぶなかったぞ?」


 朝起きたら、ティナに釘を刺された。


 オレたちに気づいて魔法を使ってくれていたらしい。


 お礼を言って頭を撫でておく。


 ティナの頭を撫でていると、後ろからもう1人の魔法使いが顔を出した。


「ふーん?これで、あと2週間は我慢できるわね?」


「あっ……」


 ソフィアが杖を握りながら頭に怒りマークをつけて、睨んでくる。


 ソフィアとは昨日、イチャイチャできていない。

 ところでソフィアさん、その杖で何をする気なんですか?


「……ソフィアとは今日するから」


「イヤ」


 拒絶されてしまった。

 うちのツンデレには困ったものだ。



 ガタガタ。


 馬車が揺れる。


「やっ……やめなさい……」


「だって嫉妬するから」


「してないわよ……」


 オレは、馬車の1番後ろの席で座りながら、ソフィアを膝の上にのっけて、正面から抱きしめていた。

 小さい腰を逃げれないように掴んで離さない。


 もちろん、荷台の前の垂れ幕はおろし、外から見えないようにしている。


「大丈夫だよ、誰も見てないから」


「みんながいるわ……」


「それは大丈夫」


「なにがよ……」


「いいから、今してることに集中しよーな」


 ガタガタ。


「やっ!?」


 馬車が大きく揺れると上に乗っているソフィアたんもびくりと動く。なんて素敵なアトラクションなんだ。


「そろそろオレも動こうかな?」


「ダメよ!」


「なんで?」


「だめなんだから……」


 このあとも、ダメダメ言うロリ魔法使いを存分にいじめてやって、次の休憩がくるころには、すっかりソフィアの機嫌も回復した。


 ふぅ……みんなを幸せにするのも大変だぜ!

 ご馳走様でした!


 オレは、溜まりに溜まったフラストレーションを発散して、ハイテンションになりながら手を合わせたのであった。

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