第189話 遊牧民のキャンプ地での今日の予定

-主人公視点-


「リリィ、ありがとう、最高だったよ」


「い、いえ、わたしも…あの……すごく、気持ちよかったです…」


 照れながらそう言ってくれるリリィにキスをして、タオルでお互いの身体を拭き合ってから、寝床に戻ることにした。


 音を立てないように、こっそりとカーテンを開け、自分の布団に入って寝ようとすると、枕元にぽかへいが座っていた。

 ジーっとオレのことを見ている。


「なにかね?」


 話しかけるが、じっと座って、特に何もしてこない。


「……」


 なんだかイヤな予感はしたが、このクソウサギをコントロールできないのは分かっているので、無視して眠りにつくことにした。



「ふがっ…」


 朝起きると、顔の上にぽかへいのお尻が乗っていた。


 ガシッとうさぎの耳を掴み、吊し上げる。


「なにかね?窒息させようというのかね?ちょっとやりすぎではないのかね?」


 話しかけるとバタバタと暴れ出した。

 なので、パッと離してやる。すると、地面にぼとりと落ちて、オレを一瞥し、「けっ!」とでも言わんばかりの態度をとって、カーテンの向こうに消えていった。


 うーむ、あいつマジでどうにかせんと…



 巨大テントの中で、みんなで朝食を食べながら、今日の予定について話し合うことにした。


 絨毯の上にお皿を並べて、それを囲うように円になってご飯を食べる。なんだか、このゲルっぽいテントとあいまって、民族体験をしているみたいですごく楽しい。

 楽しい食事をしながら、今日の予定について口にした。


「今日は、馬車のデザインの打合せに行くけど、ついてきたい人はいるかな?」


「私!私行きたいです!」


 ステラが元気よく手を上げて、嬉々として同行を求めた。


「うーん、あんまり興味ないけど、ステラの趣味でオーダーされるのは、不安しかないわね」

 とソフィア嬢。


「それどういう意味ですか!」


「あんたのセンスがヤバいって意味よ」


「ひどい!」


 あ~、そういえば何度かステラのセンスやばいんじゃね事件があった気がするな。ソフィアはそういった経験をもとにステラのセンスを疑っているんだろう。


「あ、あの…ミィは、お留守番してる……ソフィアちゃんと…お話…したいから…」


「わたしと?もちろんいいけど、なにかしら?ん~、でも…」


「わたしもついていきますから、大丈夫ですよ」

 とリリィ。


 〈大丈夫〉というワードにステラがピクついていたが、どーどーとジェスチャーをすると頬を膨らませるだけでおさえてくれた。


「別にリリィがいなくても大丈夫ですもん…」

 と小声でいじけている。


「そうね、リリィがついてくなら安心だわ。じゃ、わたしも留守ば~ん」


「わしはこのキャンプをぷらぷらするのじゃ」


「じゃ、ボクも一緒に探検するー」

「ピー」


「わかった、じゃあ、それぞれ好きに行動しよっか。なにかあったら、意識共有で伝えてね?」


「いしき…きょうゆう??」


 みんなは頷くが、ミリアだけ首を傾げる。


「あっ!そっか!ミリアには説明してなかったね、ごめん。オレとみんなは主従契約を結んでいて、意識共有ができるようにしてるんだ」


「??そうなんだ??」


 まだ不思議顔のミリア。


「あー、そのあたりは、わたしから説明しておくわ」


 さすがソフィアたん、助かる申し出だ。


「ありがと、任せるね」


 このあと、日課の稽古をして、昼食を取ってから、それぞれバラけて行動することになった。

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