第85話 昨日パパとママ交尾してたね!!
リリィお嬢様とのデート翌日、ティナとノアールを連れて、改めて灯台までやって来た。
「ここに宿を作ろうと思うんだけど、どう思う?」
そう、宿の相談をティナに、宿のデザインをノアールに、お願いするためだった。
「ここに宿を?なぜじゃ?子どもたちの店は、あそこではないのか?」
ティナが釣り堀の方を指差す。
「そうなんだけどさ。たぶん、釣り堀の反響でウミウシは観光地として栄えると思う。だから、宿でも稼げると思うんだ。この場所を選んだのは、単純に景色がいいからだよ」
「ふむ、なるほどの、しかし子どもたちに2店舗も運営できるかのう?」
「あ、それは大丈夫。5人に追加で宿もやらせるつもりはないよ」
「そうなのか?ならよいのじゃが。
して、宿を建てたいという話じゃったが、ここは建物をたてるには土がよくないのう」
ティナがしゃがんで地面に触れながら言う。
「あー、やっぱり地盤が弱いか、崖の上だもんね」
なんとなく予想はしていたが、エルフちゃんがそういうなら、ここに宿を建てるのはやめた方がいいかもしれない。
「う~ん」と頭を悩ます。
「ここに宿を建てるのは、子どもたちのためになるのか?」
「あぁ、もちろんだ」
「そうか、ならば。土の精霊よ、この大地に自ら立つ力を与えたまえ」
ティナが唱えると、小さな光の粒が集まってきて、地面に吸い込まれていく。
「これで、建物を建てても大丈夫じゃ」
「おぉ!すごい!さすがティナだな!」
「……これくらい、大したことではない」
「そんなことないよ!ティナはすごい!」
「エルフなら誰でもできることじゃ」
「でも!オレには出来ないよ!ティナはすごいなー!ありがとう!ホントに助かるよ!」
ちょっとわざとらしいな、と自覚しつつもティナを褒めちぎる。この前プロポーズしたとき、自分に自信がなさそうにしてたのが気になったからだ。
「……もうよい、わかった。その感謝を受け入れよう」
一応オレのお礼は受け取ってくれたけど……な、なんか思ってた反応と違う。
もうちっと照れたりしてほしかった。
いや、むりか……好感度1だもの…
「ねぇ!パパ!ノアはなにすればいいの!」
「ノアールには、宿のデザインを絵に描いてほしいな!」
ちょっと凹んだが、切り替えてノアールに向き直る。
「いいよ!やってあげる!」
オレは布を地面に敷いて、2人にも座ってもらう。
オレが座ると、お絵かきノートを持ったノアールがすぐに駆け寄ってきて、オレの足の間に陣取った。
「じゃあ、ノアール、オレがイメージしてる宿のことを説明するね」
「うん!」
ノアールはオレの足の間に座ったまま、お絵描きノートを開いて、色鉛筆を手に取った。オレは口頭で純和風の宿のイメージを伝えていく。
そんなオレのイメージを聞きながら、ノアールは、見たこともない和風の宿を見事に描いていく。
感受性が高いのか、想像力がすごいのか、ノアールの絵の才能は確かなものだと思う。
子どもは褒めて伸ばせ!
そう思って、絵を描いているノアールの頭をよしよしと撫でる。
「パパの撫で撫ですきー!」
「そっかそっか」
「昨日はママに撫で撫でしてたね!」
「……え?」
突然、なにかおかしなことを言い出したネコミミ幼女に身体が固まる。
「ママにナデナデしてたね??」
とは??
「そこの灯台の後ろで!」
ノアールが指をさす。
オレたちが昨日、愛し合っていた場所を……
「ノアールさん?」
「ねぇ!パパ!パパは交尾が好きなの?」
「はい?」
「これ!昨日のパパとママ!」
渡された絵を受け取ると、そこにはリリィに覆い被るオレが描かれていた。
「これね!ティナねぇねに見せたら、〈人間は交尾が好きじゃから〉って言って、真っ赤になってたよ!」
「ティナさん?」
ティナに話しかけると、気まずいのか、オレのことを見ようとせず、向こうをむいていた。頬は赤い。
「あ、あの…」
「破廉恥な人間じゃ…」
そ、そんな、どこぞの委員長みたいなこと言われても…
「……の、ノアール?このことは、パパとママが恥ずかしいから、みんなには言わないでくれるかな?」
「えー?なんでー?2人とも楽しそうだったよ?」
「え、えっと……あとでお菓子買ってあげるから秘密にできるかな?」
「お菓子!うん!わかった!秘密にするー!」
「ふ、ふぅ……」
オレは、ノアールにもらった絵をそっとアイテムボックスにしまった。
幼女の好奇心はおそろしいものだ。
♢
ノアールは宿の絵を描き終わったら、オレの膝の上でそのまま寝てしまった。可愛い寝顔である。
猫耳の間を撫ででやると、気持ちよさそうな反応をしてくれる。
「むにゃむにゃ……ぱぱぁ……」
なかなかあざといネコミミ幼女だ。
「……わしとも、デートしたいのか?」
ノアールに癒されていると、隣のティアがひとりごとのようにつぶやいた。
「え?」
「……なんでもないのじゃ」
「え?いやいや!!そ、そりゃしたいけど、イヤじゃない?」
「イヤでは…ないが…少しこわいのじゃ」
「こ、こわい?」
「わ、わしにもリリィにしたようなことをするのじゃろう?」
「いやいや!!さすがに突然あんなことしないよ!!
ああいうことはさ!ちゃんとティナがオレのこと好きになってくれてからしたいというか!」
「は、はれんち人間め…」
こちらをジト目で見るティナの頬は赤かった。
「す、すみません、変なこと言って…」
「んんっ!……じゃ、じゃが、デートとはそういうものではないのか?
その…交尾とか…」
「いやいや!普通に2人で出かけて、綺麗な景色みたり、美味しいご飯食べたりするのがデートだよ!」
「そ、そうなのか?なら、してやってもよいぞ。おぬしには前々からお礼をせねばと思っておったしな」
「ホントに?なら、さっそくだけど、明日とかどうかな?」
「わかった。明日はお主とデートしてやろう」
ひゃっほう!!
…いやいや、紳士的にいこう。
これはきっと好感度を上げる大チャンスイベントだ。
慎重にいかねばならない。
そして、最後には惚れさせてみせる!
……どうすればいいのかわかんないけど…
とにかくだ!
明日は、かわいいロリエルフちゃんとデートしてもらえることになった。
ちゃんとエスコートして楽しんでもらえるよう努力しよう!
そう考えながら、しばらくのんびりと座っていたが、ノアールがなかなか目覚めないので、おんぶして宿に帰ることにした。
子どもをおんぶしながら帰るオレたちってなんだか夫婦みたいだね、なんて言おうと思ったが、さすがにキモすぎてやめた。
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