第74話 奴隷エルフを助けたい

-翌朝-


 みんながまだ寝ているころに、一足先に起きて攻略スキルを確認する。すると、やっと次のアドバイスが表示された。


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ティナルビアから今1番したいことを聞き出し、その願いを叶えてください。

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 なるほど、やっぱり1日様子を見て正解だった。


 もし奴隷契約を解除して、彼女が逃げなかったとしても、奴隷契約がない状態で、オレの質問に正直に答えてくれるとは思えないからだ。


 オレはみんなが起きるのを待たず、部屋をこっそり出て人数分の朝食を調達しにいく。


 帰ってきたら、みんなも起きていたので、自室で朝食を取ることになった。


 今日もティナルビアは食べようとしないので、「食べて」と命令する。食事が終わったら、改めてティナルビアと向き合った。


「ティナルビア、少し話したいことがある。いいかな?」


「……」


「キミは、町中でカイリという少年と話していたけど、彼とはどんな関係なの?」


 カイリの名前を出したら、顔を上げて、オレの方を見る。


「なぜ、そのようなことを聞くのじゃ」


「キミのことをもっと知りたいからだ」


「それになんの意味がある」


「もしかしたら、キミを助けられるかもしれない」


「ふん、わしはおぬしの所有物じゃ。助けなどいらぬわ。煮るなり焼くなり、好きにするがよい」


「う〜ん。オレはキミを所有したいとは思ってない。仲間になって欲しいんだ」


「金でわしを買っておいて、おかしなことを言うな、人間」


「そうだね。それは本当にごめん。でも、キミを助けるにはああするしかなかったんだ。それが人間社会だからね。オレも不満はあるけど」


「人間とは愚かじゃ……同族同士で殺し合い、子どもたちに危害を加えるなど…エルフではありえないことじゃ」


「そうだね。人間は愚かなところもある。オレもそう思うよ。でも、良い人間もいるって、キミには知ってもらいたい」


「はっ、そんなことは信じられぬ」


「そっか。どうすれば、信じてくれるかな?キミが今1番したいことはなに?」


 ここで、やっと本題に入る、攻略さんのアドバイスだ。


「………カイリを、子どもたちを助けたい」


 意外にもティナルビアは素直に答えてくれた。オレは命令していない。


「子どもたちっていうのは?」


「わしが住んでおった村の子どもたちじゃ。突然、人間たちが襲ってきて、親は殺され、子どもたちはわしと一緒に捕らえられた」


「その1人がカイリなんだね?」


「そうじゃ。じゃが、わしはあの人間たちと約束をした。わしが奴隷になるから、子どもたちは解放してくれ、と。あいつらは頷いた。わしを大人しくさせるためじゃ。そして、裏切られた」


 なるほど、この子は奴隷商と約束をしたのに裏切られた。それで更に人間への不信感を募らせたのだろう。


「そうか。子どもたちは何人いるの?」


「5人じゃ」


「同じ奴隷商に攫われたんだね?」


「そうじゃ」


「わかった。みんな、これからティナルビアの友達を助けに行く。協力してくれ」


「もちろんです」

「いいわよ!」

「やりましょう!」


 みんな頷いてくれた。


「……なぜ、そのようなことをする?」


「キミを助けたいからだ」


「そこになんの得がある?」


「キミに仲間になって欲しい」


「ちがうな……正直に申せ、小僧」


 見透かすような、そんな瞳に見つめられて、誤魔化すのはよくないと感じ取れた。


「……キミをオレの妻にしたいからだ」


「ふん……俗物め」


 ティナルビアはそれ以上何も言わなかった。


 オレたちは、これからのことを相談する。


 やることは簡単だ。


 ティナルビアがいう子どもたち5人を探し出し、奴隷になっているならオレたちが買い取って連れてくる。それだけである。


 ただ、その子どもたちがどこにいるかがわからない。


「ティナルビア、その子たちの名前を全員教えてくれないか?」


「……」


「キミが協力しないと子どもたちは助からない」


「……カイリ、ユーカ、ノアール、トト、キッカ」


「わかった。まずは、オレが昨日の奴隷商に話を聞きに行く。その間に、みんなはティナルビアの服を揃えてあげてくれるかな」


 みんなの同意を確認してから、オレは部屋を出た。

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