第73話 奴隷オークション

-ティナのオークション当日-


 オレたちはドルダナ商会の店にやってきた。趣味の悪い成金趣味の内装で、気分が悪くなりそうだ。

 こうして比べるとディグルムの店はセンスがあることがわかる。高そうなものを並べるだけだと、この店のようになるのだ。


 店の雰囲気から店主の人柄が伺える。まぁ、奴隷なんてものを扱ってるやつだ、ロクな奴じゃない。


「3人ともオレから離れないように」


「はい、わかりました」


 みんなが頷くのを確認してから、オレたちはオークション会場に入場した。そこは、小さな映画館のような部屋で、正面にステージがあり、その前に椅子が並んでいる。


 座席はどれくらいあるだろうか。50人か100人近く座れそうだ。


 ちなみに、入場するときに身元確認をされた。

 とりあえずギルドプレートをみせると、「はぁ?冒険者だぁ?金持ってんのか?」という顔をされたので、100万ルピーの金貨袋を見せたら態度が急変し、丁寧に通してくれた。現金なものだ。


 オークションがはじまるのを待っていると、席がほとんど埋まったタイミングで壇上に男が現れ、挨拶を述べた後、オークションがはじまった。


 まずはじめに出てきたのは、小さい子ども、人間の幼女だ。


 その子に対して、

 「20万!」

 「35万!」

 「40万!」

 のように金額が競り上がっていく。


 正直、気持ちの悪い空間だと思った。


 オレの妻たちも同じ気持ちのようだ。顔をしかめている。


「ごめんね、みんなには宿で待っててもらった方が良かったよね」

 小声で話しかける。


「いえ、わたしたちが望んだことです。できる限り、ライ様の近くにいたいので」


「うん、そっか、ありがとう」

 嬉しいことを言ってくれる。


 その後、オークションは進み、人間以外にも亜人の人たちが競りに出されていた。7人目が競り落とされると、ついにティナの番になる。


「さぁ!それでは皆さま!お待ちかね!本日の目玉商品!エルフの娘でございます!」


 首輪をつけられたティナが鎖を引っ張られて、とことこと歩いてきた。


 目に生気はない。


「このエルフ!人間の村に住み着いていたところを捕獲!苦労してここまで運んで参りました!とても美しい見た目をしていることは皆さまもわかっているでしょう!

 そして!なんとこの娘!生娘であります!高潔なエルフの生娘!このような商品は滅多にございません!

 それでは、100万ルピーから!さぁ!はじめて参りましょう!」


「150!」

「180!」

「200!」


「560!!!」


 シーン……


 オレは攻略さんに教えてもらった金額をそのまま叫んだ。


 こんな場所から早く立ち去りたいからだ。


「ご、560!さぁ!他にはございませんか!」


 はやくしてくれ、と思う。


「さぁさぁ!……ございませんね?ありがとうございます!」


 タンッ!

 とハンマーが鳴らされ、オークションは終了した。


「みんなは先に出て、店の前で待ってて」


 契約のとき、下品な商人たちに妻たちを紹介したくないからだ。


「はい、わかりました」


 オレが不機嫌そうなのを見てか、みんな、素直に従ってくれた。


「さぁさぁお客様!こちらへ!」


 オレは奴隷商に案内されて、応接室へ入る。


 すぐにティナが連れてこられた。


「お客様が落札しましたのは、エルフの娘ティナルビアでございます。

 これから奴隷契約の上書きを致します。金貨のご準備をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「……」

 オレは無言で金貨の袋を机に並べる。


「はい、はい、たしかに、ありがとうございます。

 おい、契約の準備だ」


 男が指示すると魔術師らしき人物がやってくる。


 ティナルビアをオレの正面に立たせて首輪を外し、詠唱を始めた。


 ティナルビアの首には黒い鎖のようなアザがある。奴隷契約の証だ。魔術師の詠唱がおわると、その鎖が光り、「契約は上書きされました」と言われる。


「どう確認すれば?」


「なにか命令してみてください」


「……この商会を潰したいと思っているだろうけど、我慢してくれ」


 契約が更新された途端、彼女から殺気のようなものを感じたので、一応釘をさしておく。


「……くっ…」


「な、なんてエルフだ…クソッタレめ」


 正直、この店をつぶしたいという気持ちは同じだ。でも、今騒ぎを起こすのは得策じゃないと判断した。


 だって、もしここで暴れてもいいなら、攻略さんがわざわざティナを競り落とさせた理由が説明つかなくなる。


「ついてきて。……彼女に靴は?」


「奴隷に靴は履かせませんので」


 ちっ、なんなんだこいつら。オレはティナルビアに近づいて、


「ごめん、宿に着くまで我慢してくれ」と言って背中を向けた。


「オレの背中に乗って」


 ティナルビアは奴隷契約のせいなのか素直にオレに乗っかってくれた。


 オレは店を出て、みんなと合流する。そのまま宿に向かった。



 宿についたら、まずは食事をさせた。


 食べようとしないので、「食べて」と命令するとゆっくりと食べてくれた。


 その後は、みんなに任せてシャワーを浴びせて服を着替えさせる。元々着てたものは捨てるように言っておいた。

 奴隷商に与えられた服だ、イヤなことを思い出させないようにしてあげたい。


 シャワーを浴びている間に、オレは攻略スキルを開く。


-------------------

ティナルビア

 好感度

  0/100

-------------------


 落札した彼女の好感度に変化はない。そうか、まぁ、まだなにもしてないしな。


 アドバイスはないのだろうか?うずうずと待つが、まだ出てこない。


 うーむ、じゃあどうするか。


 すぐにでも奴隷契約を解除したい気持ちはあるが、ソフィアの言う通り、解除した途端に逃げ出して、さっきのドルダナ商会に殴り込みに行くような気がする。


 1日様子をみるか……


 そう思い、ティナルビアの着替えが終わったと教えてもらってから部屋に戻る。


 ティナルビアは、1番背格好が近いソフィアのパジャマを着ていた。身綺麗にはなったが、あいかわらず目に生気は宿っていなかった。


「ティナルビア、オレはライ・ミカヅチ、よろしくね。それに妻たちを紹介させてくれ」


「リリアーナ・クローバーと申します」

「ソフィア・アメジストよ」

「ステラ・ファビノです」


「みんな、キミにひどいことはしない。だから、安心してくれ」


「……」

 ティナルビアは生気を失った目のまま何も言わない。


「……今日は疲れただろうから、眠ろうか」


 オレはそういって、ティナルビアをベッドに誘導した。


 残りのベッドは1つしかないので、もう一部屋とって、その部屋はリリィとステラに使ってもらう。


 オレとソフィアが一緒のベッドで寝て、ティナルビアの様子を伺うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る