第64話 ツンデレ魔女っ娘のおねだり

 釣りを楽しんだ後、ちょっと歩いてから、お昼にしようか、という話になったので、アイテムボックスからサンドイッチを取り出して食事の準備をする。


 今更だが、アイテムボックスの中に食材を入れると時が止まるようで、食料品が一切傷まないことは確認済みだ。冷蔵庫が必要なくて実に便利である。


 地面にシートを敷いて、2人で座ってお昼ご飯を食べる。


 ご飯を食べたら、また湖で水遊びをして、またソフィアの足をふきふきしてあげてから、シートに座って休憩することになった。


 ソフィアと湖を眺めながら、のんびりと話をする。


「ソフィア、雷龍様からオレのこと助けようとしてくれたんだよね?」


「うん」


 ソフィアは隣に座って、オレの肩にもたれかかっている。


「怖かったよね」


「うん、すっごく怖かった」


「オレたちのために頑張って戦ってくれてありがとう。ソフィアは自慢の妻だ」


「うん」


 そっと、キスをする


「大好きだ」


「わたしも大好き」


 また、ボーッとする、心地よい沈黙だった。


「そういえば、ソフィアって神級魔法使えたんだね」


「うん、雷属性だけだけどね」


「そうなんだ。すごい、んだよね?」

 よくわからず質問する。


「神級魔法が使える人はあんまりいないと思うわ。わたしは昔から雷属性が得意だったから、師匠のおかげで習得できたの」


「へー、ソフィアは天才だもんな」

 よしよしと頭を撫でる。


「そうよ。だから、わたしが守ってあげるわ」


「うん。でも無理しなくていいからね。みんなで力を合わせよう」


「うん」


「それに、やっぱり、ソフィアのことはオレが守りたいな」


「かっこいいライも好きよ。でも、わたしも仲間なんだから、ちゃんと頼ってよね」


「そっか、そうだよね。うん、ソフィアのこと頼りにしてる。こんなに強くて天才で、かわいいお嫁さんを持って、オレは幸せだ」


「…か、感謝しなさいよね」


「ありがとうな」


「……わたしも、強くて、かっこよくて……でも、なによりすごく優しいライが大好きよ」


「ソフィア……」


 オレのどこか好きなのか、ソフィアからその理由を聞いたのは初めてな気がして、

すごく感動する。


 しばらく、まったりと会話していると空が赤くなってきた。


 オレは焚き火と夕食の用意をはじめることにした。ソフィアには手伝わせず見ててもらう。今日はオレがおもてなしすると決めていたからだ。


 ステラの手際には劣るが、自分なりに夕食を用意してソフィアに器を渡す。


「ライのご飯も美味しいわ」


「ありがとう」


 2人してご飯を食べる。


 食べ終わったあと、焚き火を見ながら、隣のソフィアが寂しそうに言う。


「もう…デートおわっちゃうのね…」


「いつでも、できるよ」


「ホントに?」


「うん、もちろんだよ」


「でも、リリィやステラに悪いわ」


「じゃあ、順番にデートしよう?」


「それ、いいわね。帰ったら2人にも話すわ」


「うん」


「そろそろ帰ろっか」


「うん…」


 ソフィアはやっぱり寂しそうだった。


「ねぇ」


「なぁに?」


「わたしもお姫様抱っこしてほしい」


 ステラを攫ってきた日、ステラをお姫様抱っこしていたのが気になっていたようだ。


「もちろん!」

 オレはひょいっとソフィアを持ち上げた。


「わっ!」

 少し驚いた顔でオレの腕の中で縮こまっている。


「どうでしょう、ソフィア姫」


「い、いい感じね」


 あたりはもう暗くてよく見えないが、腕の中のお姫様は赤くなっているように思えた。


 オレはゆっくりと帰り道を歩き出す。


「ねぇ」


「なぁに」


「んっ」


 顎を上げて目をつぶる、キスの催促だった。


 優しく紳士的にキスをする。


 口を離すとソフィアが目を開けた。


「もっと…」


 かわいくおねだりされ、今度は長めにする。

 離れようとすると、ペロっと唇を舐められた。たまらず、オレも舐め返す。


 徐々に深いキスをしていく。


 我慢、我慢だ、今日はそういう日じゃない。


 少しして、理性を保つため離れることにした。我慢できなくなりそうだ。


「なんで?離れちゃうの?」


 悲しげな声をさせてしまう、申し訳ない。


「が、我慢ができなくなるので…」


「なんで我慢してるの?」


「だ、だって、今日はソフィア姫をエスコートしないといけないから…」


「ふ〜ん?……ライ、耳貸して?」


「なぁに?」


 ゆっくり、ソフィアの口に耳を近づける。


「わたしもライとしたいから……我慢しなくても、いいよ?」


「……ソフィア!」


 オレは最後のブレーキを破壊されてしまった、目の前の小悪魔に。


「んむっ!んあっ!」


 むさぼるようなキス。


「ソフィア!そんなこと言われたらもう無理だよ!」


 たくさんキスをする。


「当たってるね?」


 ナニのことかは言わずもがな。


 オレはソフィアを下ろすと、右手で握らせてからまたキスをした。ソフィアはそのままさわさわしてくれる。


 すぐにアイテムボックスから布を出して湖のほとりに広げて、またソフィアを抱っこしてそこに寝かした。


「じゃ!じゃあ!するから!」


「うん、いっぱいしたいな?」

 ニコッ

 小首をかしげながら、おねだりしてくる。


 なんて罪な生き物なのだろう、こんなの我慢できるはずがない。


「ソフィア!」


 オレは星空の下、ソフィアを求めつづけた。



 結局、ソフィアが眠るまでたくさんしてしまった。


 オレはリリィに明るくなったら帰ると意識共有で伝えて隣の少女を見る。今は、なにも纏わないソフィアを胸に抱き、毛布をかけて頭を撫でていた。


 夜明けまで数時間だ、オレは、このまま起きていよう。



「ソフィア、ソフィア、そろそろ帰るよ?」


 空が白んできたので、ソフィアを起こすことにした。ゆさゆさと肩を揺する。


 このままでは、ソフィアの神聖な裸が太陽の元にさらされてしまう。それはよくない。


「……んん~?……ん~、わかった~……むにゃ…」


「おはよ」


「うん……おはよ~…」


 寝ぼけ気味のソフィア姫のお着替えを手伝いながら、ゆっくりと身支度をした。


 地面にしいていた布をしまうと、またソフィアを抱っこする。


 ぎゅっとハグをした後、オレたちは、リリィとステラが待つテントの方へと帰ることにした。

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