4章 青髪騎士団長お姉さん
第41話 城塞都市リングベル
城塞都市リングベル
冒険者の町オラクルよりも更に大きいその町は巨大な城壁によって町全体が囲まれている。
隣国との間に壮大な山脈を挟んで位置するリングベルは、戦争の前線基地の役目を担うために建設された。
しかし、人間同士の戦いのために作られた その城壁は異なる場面で活躍することになる。
遠い昔、エルネスタ王国の兵士たちが山脈をこえ、隣国に攻め込もうとしたところ、その山を守護する雷龍キルクギオスの逆鱗に触れ、大量の竜たちがリングベルに攻め込んできたのだ。
エルネスタの兵士たちは城壁を駆使して奮闘するも、苦戦を強いられる時期が続いた。
季節が何度か移り変わるころ、どこからか現れた氷龍の眷属を名乗る勇者が次々と竜たちを撃退、雷龍キルクギオスの怒りを鎮めて戦いは終わった。
これが、約200年前のことだ。
という話を、話好きなおじいさんから馬車の旅の中で教えてもらった。
そんなリングベルまで、馬車を3台乗り継いで向かってきた。1台で来れれば楽だったのだがそうもいかず、8日間かけてリングベル周辺までたどり着いたのだ。
そろそろ、次の攻略対象の女の子が待つ城塞都市リングベルに着く。ワクワクしかない。
改めて、今回の攻略対象の美少女について確認しよう。今回オレは、前衛で一緒に戦ってくれる子をパーティに加えるべく、ここまでやってきた。
攻略スキルで以下のように検索したのだ。
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検索条件
・美少女
・処女
・現在、恋愛対象がいない
・一夫多妻制への抵抗が少ない
・条件が揃えば旅に出れる
・前衛職として冒険者ランク上級以上の実力がある
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こうだ。
ソフィアのときとは、一番下の条件だけが違う。
なぜ前衛職の子を勧誘するかというと、単純に今のパーティのバランスを考えてのことだった。
現在のパーティは、前衛職がオレだけで、リリィは後衛の治癒魔術師、ソフィアは後衛の魔法使い、という具合でバランスが良くない。
例えば、複数の敵に襲われたとすると、オレの手が回らず2人のうちどちらかが危険になってしまうかもしれない。
ソフィアは防御魔法が使えるとはいっても、身体能力は普通の女の子だ。守る対象であり、危険には晒せない。
だから、オレと一緒に前衛をこなせる美少女、それが今の理想だった。
「お客さん方~、そろそろリングベルに着きますよ~」
パーティについて考えていると、馬車の御者さんから声がかけられる。
そろそろ目的地に着く、ということなので、馬車の荷台から顔を出し前方の様子を伺った。
「おぉ〜、噂どおりすごい城壁だ」
城塞都市リングベルは、おじいさんに聞いた通り、巨大な城壁が待ちをぐるりと囲っていた。その石積みの城壁は3階建ての建物くらいの高さがありそうで、とても人力では登れなそうだ。
「ホントね、あれならどこから攻められても守れそうね」
「すごいですね」
ソフィアとリリィも顔を出して確認する。
「やっぱり新しい町にくるとワクワクするな!」
「ん〜、まぁそうかもね」
「そうですね」
ソフィアとリリィはそこまでワクワクしてなそうだった。
なんだろう?こういうのって男だけのロマンなのだろうか?
2人と話していると、馬車が巨大な門をくぐり、町の中に入っていく。
「あれ?通行税とかないんだ?」
オラクルでは、冒険者だからという理由で免除されたのだが、リングベルはそもそも通行税が存在しないのか。
勝手に納得していると、門を入ったすぐのところで馬車が止まったので、みんなして降りる。
「ふぉー!やっと着いたー!」
オレは両手をあげて伸びをしながら、あたりを見渡す。本当に、町を一周ぐるりと石の壁が囲っていた。
聞いた話によると、門は今入ってきた東門と西門の2つしかないとのことだ。西門の姿はここからは確認できない。
「まずは、宿の確保からね」
「御者さんに聞いてきましたが、すぐそこに3軒宿屋があって、〈ふくろう〉という宿屋の食事が美味しくておすすめと教えていただきました」
「ありがとう、じゃあまずは宿の方に行ってみようか」
少し歩くと、リリィの情報通り3つの宿を見つけることができた。1つは見るからに安そうな古い宿、これはないな。残り2つはどちらも同じくらいの見た目ではあったが、宿屋ふくろうの方は店先に食堂のメニュー表が掲げてあって、料理を売りにしていることがわかった。
「じゃあ、リリィが聞いてきたとおり、ふくろうに入ってみようか」
「はい」
同意を得られてたので、入口をくぐり受付に向かう。
「いらっしゃいませ、はじめてのご利用ですか?」
20代の女性に声をかけられる。
「はい、3人で1部屋借りたいのですが」
「今は、3人以上ですと、ダブルベッドが2つある部屋しか空いてませんが、いかがしましょう?」
「あー…他の宿にはキングサイズのベッドの部屋ってあるんですかね?」
「?そういった部屋はこの町では聞いたことないですが…あっ…」
受付の女性は、最初なんでそんなこと聞くんだろう?と不思議な顔をしていたが、オレと後ろの2人を見て察したのか、すこし気まずそうにする。
「あー…わかりました。では、その部屋で大丈夫です。料金はいくらですか?」
なんだか恥ずかしいので、さくっと話を進めることにした。
「一泊1万ルピーになります」
「わかりました。とりあえず1週間お願いします」
「わかりました。延長する場合は、前日までにお申し付けください」
オレは料金を払いながら
「食堂はいつでもやってるんですか?」と聞く。
「はい。モーニングから夕食の時間まで営業していますが、夜は早めに閉めることにしています。宿屋ですので」
寝る人の邪魔にならないように、ということかな。
「あと、うちでは、お酒を出してませんので、ご承知おきください」
やはり、騒がしくなって宿泊客の迷惑にならないように配慮しているようだ。その気遣いで、この宿の主人の人柄がなんとなくわかる。
「それでは、こちらが鍵になります。お部屋は階段を上がって1番奥の210号室です」
「わかりました。ありがとうございます」
オレは鍵を受け取って、みんなで部屋に向かう。
「へー!結構広くて綺麗ね!うわー!ひさびさのベッド!ふかふかー!」
ソフィアがベッドの1つにダイブして嬉しそうに声を上げる。
「ソフィア、お行儀が悪いですよ」
リリィがその横に腰かけて注意する。
「え〜?べつにいいじゃない」
ソフィアは足をバタバタさせている。
「少しのんびりしたら、下の食堂に行ってみようか」
「いいわね!楽しみだわ!」
今日はまだ軽食しか食べてないので、お昼を過ぎて、そろそろお腹も空いてきたころだ。
リリィが聞いてきた情報だと、この宿屋の売りは料理。食事が楽しみである。
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