第35話 クソガキ攻略完了、いただきます

 ソフィアの好感度カンストを確認した翌朝、攻略スキルに新しいアドバイスが表示された。


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今日はいつも通りモンスター討伐を3人でこなしながら、

隙あらばソフィアの容姿を褒めてください。


夕飯をとった後、シャワーを浴びたら、ソフィアに気付かれないようにソフィアの部屋に入ってください。


しばらくソフィアの様子を確認したうえで、上半身の服を脱いでから彼女に近づき、その後は、好きにしてください。

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『…好きにしてくださいとは?なんかまた適当になってませんか?攻略さん?』


 ざっくりとしたアドバイスに不安を覚え、攻略さんに質問する。


『……』


 でも、答えてはくれない。

 なんだろう、なんかリリィのときもこんなことがあったような?


『気のせいでは?』


『あっ!またそんな反応してくる!なんなんすか!?』


『……』


 攻略さんは、それ以上なにも言ってこなかったので、諦めてギルドにいく身支度をし始めた。


 ガチャっと扉を開けると、隣の部屋からソフィアとリリィがちょうど出てきた。


「あっ、おはよ、ソフィア、リリィ」


「うん、おはよ」


「おはようございます」


 ソフィアをジーッと見る。


「なによ?」


「ソフィアは今日も可愛いね」


「なっ!朝からなによ!」


 さっそく褒めてみたら、赤くなってしまう。


「ソフィアは可愛いです」


 なぜかリリィも加勢してくれた。


「もう!ふ、2人してからかって!ほら!ご飯行くわよ!」


 ソフィアはズンズンと先に歩いて行ってしまう。


 そのあとは、いつも通り、宿の近くの食堂でご飯を食べる。


 朝食をとりながら、

「今日からモンスター討伐を再開しようと思うんだけど、大丈夫そう?」

 と聞いてみた。


 リリィは「大丈夫です」と。


 ソフィアは「……うん、がんばる……」と言ってくれた。


 やはり、あんなことがあった後だ、怖いのだろう。


「もちろん、相手は慣れてるベアウルフにするからね」


「わたしたちがいれば、大丈夫ですよ?」


「う、うん、2人がいれば、頑張れる……」


 という感じで話はまとまり、ギルドに向かうことが決まった。


♢♦♢


「じゃあ、いつも通りに!」


「うん!」


「はい!」


 オレはベアウルフに向かって駆け出す。


 慣れた動作でやつの前足、そして後ろ足を切りつけていく。そうすると、やつは地面に崩れておちる。

 それを確認してベアウルフからステップを踏んで離れつつ、

「ソフィア!いまだ!」と合図する。


「ウォーターレーザー!!」

 すぐに魔法が飛んでくる。


 そして、ヤツの頭をかすめ、致命傷を与えた。しかし、まだ息があるので、すかさずトドメを刺す。


 絶命しているのを確認してから2人の方を見ると、リリィはMP回復魔法をソフィアにかけてくれていた。


「よっし!いい感じだ!」


 オレは言いながら2人に近づきハイタッチの構えをする。2人ともそれに応えてくれて、

「やりましたね!」

「これくらい余裕よ!」

 と嬉しそうにハイタッチに応えてくれた。2人の柔らかい手が両手に当たり、パチンと気持ちがいい音が鳴る。


「じゃあ、どんどんいこうか!」


 調子を取り戻すためにも、もう何匹かは狩ろうと思う。


 そして、ベアウルフを6匹狩ったところ、

「今日はソフィアの復帰戦だから、これくらいにしよう」と提案した。


「わたしはまだまだいけるわ!」

と、「ふんす!」と鼻を鳴らしていたので、


 頭を撫でながら、

「可愛いソフィアが心配なんだ、言うこと聞いてくれないか?」と言ってみた。


「な!なによそれ!や!やめなさい!」


 言いながら頭の手を両手で掴まれてしまう。でも、力は入っておらず、全然振りほどかれない。


なでなで、と撫でつづけて「いいよね?」と再度質問する。


「ふん!ライがそういうなら言うこと聞いてあげてもいいわ!」


 顔を赤らめながら言うことを聞いてくれた。


「ありがとう」と言って撫でるのをやめた。


「あっ……」


 なんだか名残惜しそうにオレの手を見つめていたので、もう一度なでなでして

「帰ろうか」と声をかける。


「…うん」


今度は静かに答えてくれる。


「ソフィアは可愛いですね」


 リリィがそう言っていたので、リリィのことも撫でておいたら嬉しそうにしてくれた。



 ギルドに戻ってきて、報酬を受け取り分配する。そして、時間があるので、ぶらぶらと町を散策した。


「そういえば、ライ、あんたのその剣、新調した方がイイんじゃない?」


「んー、まぁそうだよね」


 オレの剣がキマイラレーベと戦ったときに、かなり痛んでしまったことは自覚していた。おそらくライトニングを剣越しに打ったのが良くなかったのだろう。しかし、手入れして騙し騙し使ってみたのだ。


「んー、なんかピンとくる剣がないんだよね」


 そもそも、今の相棒は安いものを適当に選んだ節はあるのだが、長い間握っていると愛着も湧くものだ。傷んだから、はいさよなら、という気分にはなれない。


「もし処分するのが嫌なら、わたしのアイテムボックスにいれておいてあげてもいいわよ?」


「ホントに?それは嬉しいよ!」


 オレが何を気にしているのか汲み取って、そんな提案をしてくれるソフィアが愛おしくなる。


 たまらず、頭をなでて

「ソフィアは気も使えるし、可愛くて最高だね」というセリフを吐く。


「ちょっ!?ちょっと!人がいるところではやめなさいよ!」


 赤くなりながらも、今度はすぐに振り払われてしまう。


 リリィも隣でコクコクと頷いていた。


 人前じゃなければいいらしい。なるほどなるほど。


 結局、その日は新しい武器を買うことはなく、時間を潰してから宿に帰った。


 そして、みんなで宿の食堂で夕食を食べて、それぞれの部屋に戻る。攻略さんのアドバイスに従うとしたら、このあとシャワーを浴びてからソフィアの部屋に行くんだよな?


 リリィになんて言おう?


 オレはそんなことをウォーターファイアでお湯の準備をしながら考えていた。


 そこにリリィがやってくる。


「いつも、ありがとうございます」


「ううん、ぜんぜん大丈夫」


 オレはお湯の入った袋をパイプの上にセットしながら答える。


「ところでリリアーナさん?」


「なんでしょう?」


「この後……ソフィアの部屋に1人で行こうと思うのですが、いいでしょうか?」


 素直に白状することにした。


「えっと?それは?あ……わかりました。優しくしてあげてくださいね」


 にっこりと微笑まれてしまう。なにもかもお見通しで、でもそれを許してくれるリリィに頭が上がらなかった。


「うん、もちろん、許してくれてありがとう」


「いえ、わたしもソフィアが大好きなので大丈夫ですよ」


 とうちの天使が言ってくれる。なんて素晴らしい嫁なのだろう。


 リリィに先にシャワーを浴びてもらってから、オレもシャワーを浴び、

「いってきます」と部屋を出た。


 ゴクリ……


 これから、どうなってしまうのだろうか。

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