2章 金髪清楚シスター

第9話 金髪シスターとの出会い

「よしっ、この条件なら間違いないよな」


 オレは、ギルドのいつもの宿泊スペースにて、あぐらをかきながら攻略スキルを使っていた。

 シーナちゃんの一件があってから、検索条件を見直すことにしたのだ。


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検索条件

 ・美少女

 ・処女

 ・現在、恋愛対象がいない

 ・一夫多妻制への抵抗が少ない

 ・条件が揃えば旅に出れる

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 以上である。

 冒険者という条件を消して、3つ条件を追加した。


 まず、オレは略奪愛とか興味ないし、面倒なので、〈現在、恋愛対象がいない〉、というのをマストにした。


 次の条件だが、お恥ずかしい話、わたくしハーレムというものに憧れていまして、

異世界に来たからにはそれを目指したいと思っておりまして。

 なので、この〈一夫多妻制への抵抗が少ない〉という条件を追加いたしました。


 後ろめたくて、言い訳がましい説明になる。


 でも、実際、2人3人とパーティが増えていったとき、いちいち喧嘩になるのはイヤだからしょうがない。これも必要な条件だ。


 ただ、〈一夫多妻制への抵抗が全くない〉という条件にすると、極端に対象が減ったので、少し柔らかい条件で妥協した。


 ま、この条件でも、好感度MAXならなんとかなるやろ?という算段だ。


 ちなみに町の人に聞いたところ、貴族とか領主、村長とかは一夫多妻のことも多いらしく、文化的にはそこまでありえない話ではない、とのことだ。


 最後に、一緒に旅をしてくれれば、別に冒険者でなくてもいいや、と思って、

〈冒険者〉という条件をはずし、〈条件が揃えば旅に出れる〉という条件に変更した。


 それに、今は冒険者じゃなくても、パーティに入れてからレベル上げるとかできるだろうしね、たぶん。


 ちなみに、〈旅に出れる〉という条件にしたところ、またまたヒット数がだいぶ減ったので、〈条件が揃えば旅に出れる〉という内容に緩和した。

 おそらく、家族や文化などの理由で無条件では旅立てない人も多いのだろう。


「ふぅ」

 考え抜いた条件を設定し、満を持して念じる。


『検索』

 表示されたマップには、町全体が映っている。

 そこには、オレを示す青い点以外――


 なにも表示されていなかった。


「はぁ……」

 まぁそりゃそうか、簡単にはいかないよね……


 ため息をつきながら、マップを上下左右にスクロールする。近くの大きな町にいけば攻略対象がいるかもと思ったからだ。


 マップを操作していると、町から少し離れたところに、赤い点が表示されているのを見つける。


「お!おお!」

 テンションが上がって前のめりになる。


 場所は西門からさらに西へ。徒歩だと10分くらいのところだろうか?そこに赤い点は表示されていた。


 なんでこんなところにいるんだろ?

 マップには建物らしきものが映っていて、赤い点はその中を動いている。つまり、旅人ってわけでは無さそうだ。

 町外れに住んでる、変わり者?みたいな人なんだろうか?


 考えていてもわかることではないので、赤い点を選択し、『攻略対象に設定』と念じる。


すると、好感度が表示された。


----------------

???

 好感度

  3/100

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 …ずいぶん低いな。

 

 まだ数人でしか実験してないけど、ここまで好感度が低い人は初めてだった。


 そう、シーナちゃんの一件があってから、攻略スキルに疑念を持ったオレは、何人かの女性にスキルを使って、ちゃんと好感度が上がるのか、アドバイスを無視すると下がるのか、などを実験していたのだ。


 ここ数日で、4人の女性で実験したが、初期の好感度が10以下の人物は一人もいなかった。

 つまり、この子は警戒心が強い子なのか。はたまた気難しい子なのか。


「うーむ…」


 そんな子、攻略できるのだろうか?と疑問に思っていると、攻略さんからアドバイスが表示された。


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アドバイス①

 日持ちのする食料を買い込んで攻略対象のいる場所に昼までに向かってください。


アドバイス②

 攻略対象には、寄付という名目でその食料を渡してください。


アドバイス③

 ○○○○○○○○○○○○○○○○とイイことがあるでしょう。

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 寄付?ボランティア団体かなにかなのだろうか?


 よく分からないが、時間制限付きのアドバイスなので、急いで身支度して食料を買いに出かけることにした。


 しかし、アドバイス③も気になる。これの通りにしても、全くイイことが起きる未来が見えなかった。でも、攻略さんがイイというならイイことが起きるんだろう。オレは安易に考えて、素直に従うことにした。


♢♦♢


 オレは、紙袋を両手でかかえて、町から西に向かって歩いていた。マップの通りなら畦道を進んでいけば建物にたどり着けるはずだ。

 ちなみに紙袋には、フランスパンが3本とジャムが2瓶入っている。日持ちがする食料、というのに該当しそうだったのでこれらを選んだ。


 しばらく歩いていくと、石造の建物が見えてきた。洋風の建物だ。


 入り口から奥にむけて長方形の形をしていて、奥の方に小さい塔のような作り、その塔には金色の鐘が吊されていた。


「教会?」


 実物は見たことはなかったが、ゲームなどのイメージから、教会というのが1番しっくりくる。


 とにかく中に入るか。と思い、大きな扉に手をかける。


 あれ?教会って誰でも入っていいんだよね?不法侵入なのでは?と一瞬疑問に思ったがもう遅い。扉を開いた後のことだった。


 扉の先には、やはり教会、という内装が広がっていて、正面にはステンドグラス、左右には長いベンチがずらっと並んでいた。


 人は誰もいない。

 あれ?誰かいるはずなんだけど?


 疑問に思い目をつぶり、マップを確認する。マップ上の赤点は建物のすぐ隣に表示されていた。庭にでもいるのだろうか。


 オレは一度扉を閉じて庭の方に向かう。


 その先では、サラサラサラと水が葉っぱに当たる音がした。植物に水をあげているのだろうか?


 石造の壁がきれるところまで歩いて、庭の中を覗き込む。


 そこには、シスター服に身を包んだ少女がジョウロを片手に水を与えていた。


 太陽の光にキラキラと反射する金色の髪はとても美しく、風になびく長髪を片手で抑えていた。

 目の色はエメラルドグリーン。

 とても優しそうな表情で植物に水をあげている。


 清楚だ清楚の塊だった。


 オレはしばらくその姿に見惚れていた。今まで見たこともないような美少女だった。


 とても可愛い、可愛すぎる。


 身長は今のオレよりだいぶ小さそうだ。華奢でとても細いという印象を受ける。でも、出てるとこは出てる。スタイルもすごくいい。


 髪の毛は腰より少し先まで伸びていて、サラサラの綺麗な金髪ストレートだった。


 彼女のことをじっくり観察していると、


「あら?」

 という声と共に彼女と目が合う。


「どうかされましたか?」

 ニコッと微笑んでくれる。


天使なのか?


「………あっ!えっと寄付に来たんですけど!」


 見惚れすぎてフリーズしていたが、話しかけられているということに気づき慌てて答えを返す。


「え?寄付?ですか?あの、町の方ではないのですか?」


 不思議なことを聞かれる。町の人は寄付なんかしないってこと?


「自分は冒険者なので、町の人ではないですね!」


「そうなんですか。変なことを聞いてしまい、すみません。こちらへどうぞ」


 彼女に連れられて、庭の方から改めて教会に入る。


 彼女の後ろ髪からはとてもいい匂いがした。


 …やばい、変態っぽいか?

 いや、まぁ変態には違わないか。頭の中で自問自答しつつ、ついていく。


「それでは、こちらの祭壇に寄付のお品物を置いていただけますか?」


「はい!わかりました!」


 ステンドグラスの前に置かれている祭壇に紙袋を置いて、数歩下がる。


 彼女はそれを確認してから両手を握り、頭を少し下げて目をつむった。祈りをささげているのだろうか?


 オレも見よう見まねで同じポーズをしておく。


「あら?あなたもクロノス教徒の方ですか?」


「クロノス教?あっ、すみません。あなたの真似をしていただけです。失礼なことでしたら、すみませんでした」


「そうですか、大丈夫ですよ。クロノス様は寛大な方ですから」


 彼女は微笑みながら許してくれて、

「寄付のお品物ありがとうございました」

 頭を下げてくれた。


「いえ!ぜんぜん大したことしてないので!また来ます!

 あの!オレ、最近、冒険者になったライ・ミカヅチといいます!

 よろしくお願いします!」


「ライ・ミカヅチさんですね。

 わたしはリリアーナ・クローバー。クロノス教のシスターをさせていただいております。こちらこそよろしくお願いしますね」


 ゆっくりと丁寧に話す彼女の声色はとても穏やかで癒された。ずっと聞いていたいまである。


「あの?どうかされましたか?」


「あぁ!いえ!なんでもありません!また来ますね!それでは!」


「はい。ありがとうございました」


 緊張のあまり、少し早歩きになってしまいながら、オレは正面の扉から教会を出た。


「ふぅ…」

 緊張した〜。


 あそこまでの美少女が出てくるとは思わず、かなりあたふたしてしまったと思う。


 いや、だって金髪碧眼美女なんて見たことないし!かわいすぎたじゃん!


 いや!でも!あんなに可愛い子を攻略できるんだよな!最高かよ!


 オレは、浮かれた気分が冷めやらぬまま、ギルドへ帰ることにした。

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