いつも厳しかった姉が義姉だと分かった途端、滅茶苦茶甘々になり、甘やかしたり、イチャつこうとしてくる件 ~そこにトップアイドルの幼馴染まで参戦してきて、もう大変~
YMS.bot
第1話 義姉と幼馴染
これは俺が手にした未来。
俺が選び取った未来。だから、そこに後悔なんて微塵も無い。
「ユウカさん!! 今日という今日はアヤトを譲ってもらいます」
「何を言っているの? 今日のアヤトは私の膝の上で眠って、よしよししてあげる日なのよ? それを邪魔するというの? ミクちゃん」
「そ、それ、昨日もやったじゃないですか!!」
俺を挟んだ両サイドで俺の腕を思い切りグイグイと引っ張り合ったまま言い合う二人の美少女。
右側は『藤堂 ユウカ』
俺の姉だったが、とある事情から義姉だと判明し、今では立派な恋人。
艶のある黒髪を靡かせ、あくまでもクールな雰囲気のまま、力強く俺の右手を引っ張る。
「ダメよ。アヤトは疲れてるの。私が癒してあげないと大変な事になっちゃう……」
「それは問題ないです。私だって包容力はありますから」
「あら? その無駄についた脂肪の塊で? 私のこの洗練されたボディを見なさい」
そう言いながら、右側にいる姉さんがくいくいっと胸を押し付けてくる。
確かに姉さんは左側感じる柔らかく、それはそれはマシュマロのように優しく包み込まれる感覚ではないが、しっかりと柔らかさと温もりは感じられる。
しかし、それが左隣にいるミクの怒りに触れたのか。むぎゅっと左側で強く抱きついて来る。
「アヤト~♡」
「……何?」
「アヤトは、私の身体の方が好きだもんね。あんな見た目だけ綺麗なスレンダー体型よりも、このボンキュッボン体型が好きだもんね~♡」
「貴女、喧嘩を売っているのかしら……」
「先に吹っかけてきたのはそっちじゃん!!」
グルルルル、といった様子で可愛らしい威嚇をする左側の女性。
彼女の名は『清水 ミク』
現在は引退してしまった元トップアイドル『Miku』その本人であり、今では俺の腕にがっしりとしがみ付き、同じ立場である姉さんに敵意をむき出しにしている。
俺はただただ、困惑していた。
いや、同じ立場という事は二人共、俺の恋人である事は間違いないんだ。
そして、それを俺が選んだ。
どっちか選ぶ事が出来ず、中途半端な俺を二人が受け入れてくれた。
だから、俺は二人共、同じだけ愛しているし、好きだと自信を持って言える。
でも、本当に一つだけなんだ。一つだけ。
こうして互いににらみ合って、喧嘩するのだけはやめて欲しい。
宿命なのかもしれないけれど、出来るだけ穏便に事をすませたいんだ。
「アヤト!! ほら、私とデートしよ?」
「ダメよ、アヤトはお姉さんの膝枕でよしよしされたいのよね?」
「えーっと……ちょ、ちょっと離れようか」
俺の一声で二人は離れ、互いに睨み合いながら俺の目の前に座る。
言う事はきちんと聞いてくれるんだよな、ただ、目の前の欲望に忠実すぎるだけで。
俺は一つ咳払いをし、姉さんに声を掛ける。
「姉さん、俺は今日、その……ミクとデートがしたいっていうか……そう約束してたのは事実なんだよね」
「デートなら家でも出来るわよ? 貴方がミクとデートをしながら、私に甘やかしてもらえば万事解決じゃない」
「えーっと、と、言っていますが、ミクはどうですか?」
「おうちデートじゃなくて、私は猫カフェに行きたいで~す」
ぶんぶん、と手を振りながら答えるミク。
その顔は満面の笑顔であり、ちらっちらっと隣に居るユウカを牽制している。
それにムっと、なったユウカは一つ咳払いをした。
「じゃあ、アレかしら? アヤトは私に一人寂しく家に居て欲しいってそう言うの?」
「あーっ!! その言い方はズルじゃん!! それじゃあ、アヤトが断れないの分かって言ってる!!」
「……ふふ、何年、姉をやっていたと思っているの?」
「ぐぬぬ……むぅ~、アヤトは私と二人きりで猫カフェ行くんだよね? ね?」
ぐわああああああッ!!
俺は心の中で頭を抱えてしまう。
寂しそうに俯いてしょんぼりする姉さんと縋るような子犬の眼差しで俺を見てくるミク。
ど、どうすればいいんだ。
と、俺は心の中でざわつくが、すぐに答えは出てくる。
こういう時、俺の答えはいつも決まっている。
「えーっと……両方って言うのはダメですか? ね、猫カフェに三人で行って、その俺がミクと姉さんに甘やかしてもらうという事で、手打ちにはなりませんか?」
「……いっつもそれじゃん、アヤト」
「そうね。いっつもそれね」
「え? だ、だって、二人に悲しんで欲しくないし……だ、だったら、これしかないじゃん。二人がこう平等に幸せになるにはさ」
そう、俺の行動原理はただ一つ。
平等、そして、二人が揃って幸せになれるように最大限努力をする事。
俺がこの道を選んだと同時に立てた誓いだ。
世の中の流れとは逆行し、決して認められないハーレムを手にした俺が負うべき責任。
すると、姉さんが大きな溜息を吐いた。
「はぁ~、本当にしょうがないわね、アヤトは」
「そうだね。ほんっとうにしょうがないんだから、アヤトは」
そう言いながら、姉さんとミクが俺の腕にしがみ付いてくる。
それから二人はニコリと笑った。
「アヤトにそんな事言われたら、断れないの知ってるでしょ?」
「……そうよ。本当にアヤトはズルいわ」
「えっと、いっつも思うんだけど……」
俺は腕に抱きついて来る二人に尋ねる。
「どうせ、こうなるなら言い合いしなくても良いような……」
「ダ~メ。だって、もしかしたら、アヤトが何か勘違いして、二人きりデートになる可能性が1%でもあるかもしれないじゃん」
「ええ、そうよ。何かの間違いであるかもしれないじゃない」
「……それは無いんだけどな。俺は二人を幸せにするって決めてるんだから」
俺がそう言うと、姉さんとミクが若干頬を紅く染める。
「知ってるわよ。だから、これは私達なりの我侭」
「そうそう。アヤトを困らせたいの。私もユウカさんも」
「困らせたいって……出来ればやめて欲しいんだけど……」
「ダメよ。困ったアヤトは可愛いんだから」
「あ、そうなんですよね。やっぱり、ユウカさんも分かりますか?」
先ほどまで喧嘩していたはずの二人が今度は俺の事で意気投合して、盛り上がっている。
いつも最後にはこうだ。
でも、こんな状況でも俺は強い幸福感を感じている。
それは間違いなく二人のおかげ。
俺には絶対に無くてはならない二人が側に居るから。
藤堂ユウカ 俺が世界で一番大事な元姉、現義姉であり恋人。
清水 ミク 俺が世界で一番大事な幼馴染であり恋人。
「それじゃあ、早く猫カフェに行こうよ!!」
「ええ、行きましょう。アヤト」
「わ、分かったから。二人揃って引っ張らないでって!!」
笑顔のまま歩き出した二人に引き摺られるように俺は足を進めていく。
そう、どうして、俺――藤堂アヤトがこんなハーレムなことになっているのか。
それはそう。あの日。
俺と姉さんの関係が大きく変わってしまったあの日から始まるんだ――。
――――――あとがき
新作です。
これに関しては前作の吸血鬼とは違い、しっかりと完結させる事をここにお約束します。前回のような失態は犯しません!!
本日13時にもう一話投稿されます。
もしも、イチャイチャ最高、ハーレム最高という方が居たら『☆』をつけて頂けると幸いです。
恐らくイチャイチャ度は『聖夜』の当社比『2倍』を予定しておりまする。
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