15🏠ルナ弾む

オカン🐷

第1話 ヤツがいる

「カエデちゃ~ん」

「ルナちゃ~ん」


 二人は手を取り合って、ピョン、ピョン兎のように跳ねて喜んだ。


「同じクラスになれたんだね。カエデが中学ここに来るって言ったから、ルナちゃんも来ると思ってたのにい」

「うん、お兄ちゃんたちの大学にお金がかかるから財政難ってママが言って。でも、二人とも国立受かったから高校は行っていいよって」

「ふーん、大谷家も大変なんだ」


 カエデとは小学校の頃からの仲良しで、私立の女子中学校へ一緒に行こうと約束していたのだった。


「あら、この子がカエデのいつも言っていたルナちゃん。私ミカ、よろしくね」


 ショートヘアーがいかにも活発そうで、ルナとは正反対のイメージに少し腰が引けた。


 殆どの生徒が中学からの進学組で、でも、公立の高校に行ったところで殆どが初めての面々であるはずだから変わりはない。


「ルナちゃん、まっすぐ帰るの? ミカと歓迎会するから来ない?」


 少し離れた席に座ったカエデが声をかけてきた。


「うひょ~、歓迎会、行く、行く」


 ルナは両手を叩き喜び満開だった。


「ねっ、ルナちゃんはこんな子よ。ミカはどうせ来ないと言ったけど」

「ふーん、じゃあ約束通り今日は賭けに負けたミカが奢るよ」


 帰り支度をして3人で廊下を歩いていると、前方から初老の男性と見覚えのある顔が近づいてきた。

 ギョッとしたルナだったが、向こうも同じ表情をしていた。

 どうしてヤツがここにいる。


「ああ、世田中学から来た大谷さんだったね。三橋先生のファンであとを追いかけて来たのかな。三橋君はもてるからねえ」


 ウワハハハッ

 理事長は上機嫌な笑いを遺して行ってしまった。


「何で、何で、ヤツがここに」


 ルナが呟くと、カエデが、


「理事長の娘婿になったらしいよ。ゆくゆくは後継者だって。でもね、悪い噂が絶えないの」


 カエデがクラスメートに訊いた話。中学2年の春休みのことだった。


 渋谷のHPビルの6階の織風眼科へ行った帰り、エスカレーターの中の出来事だった。

 4階から乗って来たカップルがいて、最初は静かだったのだが、女性が鼻を啜り上げ次第に大泣きし始めた。男性の方は顔を隠すようにしていたのだが、4階にはハヅル産婦人科があって何があったかなんて妄想の方が膨らんでしまって、隠しようがなかった。


「ひどい。私の赤ちゃん返して」


 エレベーターが1階に着くと我先に飛び降りようとした男性は、スーツの上着の裾を握り締められていて叶わなかった。


 ルナは、ハッとした。

 そのときルナもエレベーターに居合わせたのだ。

 5階の豆ははこ歯科クリニックに行っていたのだ。

 あれが、まさか三橋先生だったなんて思いもしなかった。



 



🏠カエデネコさんお名前をお借りしました。ありがとうございました。

作品 『天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする』


https://kakuyomu.jp/works/16817139558736593401



🏠みかぼしさん、お名前をお借りしました。ありがとうございました。

作品 『時を巡るアドベントカレンダー』


https://kakuyomu.jp/works/16817330667703039326



🏠織風 羊さん、お名前を拝借しました。ありがとうございました。

作品 『ルナ』

https://kakuyomu.jp/works/16817330665318455962



🏠羽弦トリスさん お名前をお借りしました。ありがとうございました。

作品 『もう一息』


https://kakuyomu.jp/works/16817330662976667449



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