読まれる小説・読まれない小説を分かつ境界線

枚岡孝幸

第1話 読まれる・読まれないとは。


 まず、皆さんがこれまで読んできた本を思い出して下さい。出版されているということは当然ながら出版社の手により読まれるように調整された作品が出てきています。つまりは最低限の質は担保されたものが本なのです。もちろん、同人誌など出版社の手を経ていないものもあるでしょうがそれは除外します。むしろ同人誌はweb小説と同じような性質を持ったものなので同人活動を参考にするとある程度はPVが付くようになるかも知れません。

 学生時代において本を手に取る時、それはいくつかの理由があると思います。


1. 教科書などで少しだけ読んだ文で続きが気になった

2. そもそも本が好き

3. 話題になっている本だから

4. 家にあったから

5. タイトルに惹かれたから

6. 作者が好きまたは有名だから


 上記は私の本を読む理由を羅列してみました。もうこの時点でおわかりの通り、本になったものというのはほぼ既に勝ち組の作品しかありません。勝った作品が書籍になっているのです。

 え? そんなことわかってるよって? ですよね。

 カクヨムでもタイトルに【書籍化決定】とか書いてらっしゃる作品、多いですもんね。当たり前ながらPVや☆もたくさん付いてます。でもまぁ、「お前はどういう基準で作品を読んでるんだよ」 という私の基準を示してみました。


 上記でWeb小説に通じるものといえば、【5. タイトルに惹かれたから】ですね。少し話をWebというものに移します。2000年以降、インターネットが急速に普及しだしたことにより明らかに文化が変わりだしました。総務省の情報通信白書に記載されているデータによると2000年で37.1%であった2002年で57.8%、2010年においては78.2%、2020年以降は80%台を推移しています。

これが何を示すかというと、娯楽の多角化が進んだと共に電子化の娯楽が大きくシェアを広げてきたということです。今やインターネットは娯楽はゲーム、音楽、映画、放送、果てはあらゆる創作の場として欠かすことのできないものとなりました。多様な娯楽がどこかに出かけることなく、すぐに手に取れるようになったということです。


 ですが、人間にはほぼ変わらないものがあります。『可処分時間』と呼ばれるものです。これは生きるために必要な食事や睡眠、そして仕事や家事など生活を支えるための時間を抜いた時間です。つまりは自分の裁量で使える時間のことです。平均して一日に6時間程度が平均した一人の可処分時間です。つまりはこれを読んでいる人は、貴方の貴重な可処分時間を使って頂いているわけです。ありがとうございます。

 技術が進歩しても可処分時間が多少増えはするものの有限のリソースであることには変わりがありません。そして娯楽も多種多様となっています。その中で小説というものは文字を読ませる娯楽です。動画、テレビ番組、映画を見るなどとは違い、ある程度の気力がないと享受できない娯楽です。息を吸うかの如く文字を読める人もいるでしょうがそんな人ばかりではありません。そんな中、アイキャッチというものは非常に重要になるのです。タイトルで惹かせなければ超有名作家だったり書籍・アニメ化されていたり、口コミで評判になるほどの出来でない限りは見られることすらないのです。


 それで起こる現象が『最早タイトルがあらすじ』の作品の大量発生です。私が書いた一つだけの小説もその例に漏れずタイトルがあらすじです。動画配信サイトにおける動画のタイトルもそうですが、見せたい内容はきっちりタイトルに書いておかないと見られない時代となりました。もちろん、作品の質が高ければその限りではないですが『読まれたい』のならばタイトルは無難に内容がすぐわかるようにした方が良いです。副題でも構いません。もちろん、この傾向を嫌う人も多いでしょう。逆らいたくなる気持ちもわかります。ですが、可処分時間を無駄にしたくないという多くの読者の無意識には逆らわないほうがきちんと読んで欲しい人に届くようになると私は思います。カクヨムはキャッチコピーが大きく表示されるのでそこに力を入れても良いでしょう。


 貴方がタイトルで内容がわからないに関わらずに読まれているならこの意見は鼻で笑って下さい。既に読ませる力量や名声があるということです。上記、【6. 作者が好きまたは有名だから】の両方を満たせば何を書いても大抵読まれます。


 読者としては読みたい作品の傾向は個人においてはある程度限られています。私としては【能力バトル】【成り上がり】【主人公が活躍する】【悪が没落する】などの要素を含むものを好みます。その好みを満たすタイトルでないとなかなか食指が動かないのです。たまに明らかに好みではないタイトルのものでも読んだりしますが、評価が高かったりしたものくらいです。つまりは既に読まれたものがジャンル的に興味のない人の所まで降りてくるわけです。上記で本を読む理由であった【3. 話題になっている本だから】というところと似通っています。話題性があったり多くの人が読んでいるということは好き嫌いは別として作品の質を担保してくれるということです。


 今回のまとめ:人には使える時間に限りがあるし、他にもやること一杯あるからタイトルやキャッチコピーでどういう作品かわかるようにしないとあまり読まれないかも! でもランキングに載ったりするとその限りではないよ!


 次回があるならジャンル的なニーズについて書いてみたいと思います。

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