第7話 聖法衣奪還

 コキの案内で私とティアはロメール国へ戻りました。3日後に控える戴冠式のため、国中はお祭り騒ぎになっています。変装した私たちはロメール国教会へ向かいました。私の聖法衣は一体どうなっているのでしょう。


「そんな……」


 いつも保管していた場所に、聖法衣はありませんでした。それなら、一体どこに?


「やや、盗人か……お前はルベリア!? 生きていたのか!?」


 部屋に入ってきた司祭長をすぐにティアは捕まえました。女の子に組み敷かれると思っていなかった司祭長は目を白黒させています。


「オジサン、聖法衣はどこだい?」

「くっ……それならここにはない。聖女が不在のため、新皇帝が新教皇として聖法衣を纏うことが決まった。これからはロメール聖国として、新体制を築いていくのだ」


 司祭長の言葉に私は驚くと同時に、不審なレムレスの態度に納得しました。


「最初から聖女を廃するつもりだったのね」

「ああ、新教皇はこんな古くさい国教会より、新興国と軍事協定を結ぶことを選んだのだ。神だの奇跡だの、馬鹿馬鹿しい」


 私より先にティアが司祭長に制裁を加えました。


「それでもお前は神に仕える身なのか!? 汚い人間め!」

「黙れ! 世の中金と権力だ! 悪いか!?」


 私は暴力は好きませんが、この男には神罰が下っているのだと思うと胸がすく思いでした。


***


 そして迎えた戴冠式当日、民衆に紛れて私とティアは大聖堂に忍び込みました。私の聖法衣を纏ったレムレスがやってくると、私の心臓は縮み上がりました。


「ねえリーベ、あの男どうする?」

「私は聖法衣さえ取り返せればいいです。彼には相応しい神罰が下るでしょう」

「違う、リーベはどうしたいのか聞いているの」

「私が、ってこと?」


 ティアは不思議なことを言います。


「そう。神様とか民衆じゃなくて、リーベの意見。個人的見解なら神も怒らないよ」


 私、私の意見……そんなこと、考えたこともなかった。


「そうね……私と同じ目に合わせてやりたいかしらね」


 するとティアは笑って見せました。


「わかった、任せてよ!」

「ちょっとティア、乱暴はダメよ!」

「大丈夫、ボクは絶対傷つけないから」


 言うが早いか、ティアはたちまち竜の姿に戻りました。かなり魔力が回復して馬ほどの大きさになっているティアが急に現れたことで、大聖堂は大騒ぎになりました。


「今だリーベ、あいつの聖法衣をひっぺがすんだ!」


 私はティアの言葉を信じてレムレスの元へ走りました。


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