超カッコいい種族の生態
さて、蟲族の皆さんが村に来た。
用意した家に案内したけど、やっぱり種族で生活違うってことがよく理解できた。
まず一つ。
「申し訳ございません……我々にベッドは必要ありません。寝床は床に藁を敷いてもらえれば」
「え、でも」
「わかりました。では、ベッドは撤去して藁を敷きましょう。ドラゴニュート族の皆さん、お手伝いをお願いします」
「「「「「応!!」」」」」
金華さんに命じられ、ドラゴニュート族たちがベッドを撤去。
蟲族の皆さんも手伝い、ベッドルームには藁がこんもりと敷かれた。
金華さんは俺に言う。
「種族が違えば文化も違います。ご主人様、これを機に多種族の生活を見るのはどうでしょうか?」
「……ふむ」
「いずれ王になるなら、必要かと」
「いや王様はいい。とりあえず、いろいろ聞いてみるか」
「にゃあ。わたしもいくー」
「アタシも行く。蟲族って興味あるわ」
「あ、あたしは遠慮しておこうかな」
ミュウは興味津々、エリはやや苦笑い……虫、苦手なのかな。こんなカッコいいのに。
金華さん、そして昼寝しようとしていた天仙猫猫に村の仕事を任せ、俺はケルベロスを護衛にマオ、ミュウを連れてコーカサスオオカブト種のギルティアスさん一家のお手伝いをすることにした。
◇◇◇◇◇◇
さて、まずは食生活。
「我々の食事は樹液です」
「樹液」
「はい」
「樹液……」
虫、だよな……思わず聞き返しちゃったぜ。
奥さんのミグルネさんは、近くの木に切り傷を付けると、そこに受け皿を設置。
けっこう時間必要だよな…‥って思っていると。
「食事は五日に一度、樹液をコップ一杯程度接種すれば生きていけます」
「そ、そうなんですね……あの、飲食って他にできますか?」
「できないわけではありませんが……固形物は苦手ですね。果実など細かく砕けば食べられないこともありません」
「お酒とか飲めます?」
「はい。我々の数少ない趣向品の一つです」
「なるほど……」
けっこうエコな食生活だな。食べ物が樹液とか。
ちょっとミュウに聞いてみる。
「なあ、樹液ってフォルテの店にある?」
「いや、ないけど……」
「だよな。いちおう、フォルテに頼んでおくか」
「お兄ちゃんもびっくりしそう……六百年くらい生きてるけど、初めての注文だと思うよ」
そりゃそうだ。まあ、なんとかしてもらうか。
ギルティアスさん曰く『樹によって味が違う』とか『クリーミー』とか『マイルド』とか、樹液で使っていいのかわからん言葉がいくつか出た。
まあ、フォルテに任せるか。
するとマオ、ほんの少し溜まった樹液を指でつついてペロッと舐めた。
「にゃあ……にがい」
「こらこら。つまみ食い……つまり食いでいいのかわからんけど、勝手に舐めちゃだめだぞ」
「にゃうー」
マオを抱っこすると、舌を見せてくる。
「にがい……」
「ミュウ、水あるか」
「うん。はいマオ、飲んでいいよ」
「にゃ」
樹液は苦いのか……俺も『実はシロップみたいなんじゃ』と思ってたし、ほんの少しだけ舐めようか考えてたなんて言えない。ありがとうマオ。
食事情はわかった。ちなみに樹液が水分代わりなので水もほとんど飲まないらしい。
「睡眠は、毎日三十分ほどいただければ」
「はい!? そ、そんだけ!?」
「ええ。我ら蟲族、睡眠はほぼ必要としませんので」
「…………」
すげえ……文化や種族の違いというか、生物としての違いを感じる。
この人たち、一日がめちゃくちゃ長いんだろうな。
「基本的に、肉体労働は得意です。中でも植樹や薬草採取などは得意中の得意。植物を見れば毒の有無を発見できますし、秘伝の調薬法で様々な薬を作ることも可能です」
「す、すごい……ってか、そんな有能なら引っ張りだこじゃないですか?」
「……王、あなたは特別のようですが……普通の人間や種族は、我々の姿を見ると恐怖します」
「え、なんでです?」
「……王は器の広いお方だ」
意味わからん。
というか、めちゃくちゃカッコいいじゃん。殻を脱いでもらって着れるなら俺も着てみたいくらいカッコいいぞ。
為朝……あいつもいればダブルで興奮していたかも。
「我々は同じ魔族からも恐怖され、迫害されてきました。ですが……ここでは同じように迫害されたドラゴニュート族、そして外見に囚われないドワーフ族などがいます。彼らと共に過ごすことができて、私たちはとても嬉しいです……まだ、一部の者は恐怖しているようですが」
「あー……」
エリとか、ハーフの子供たち、犬猫たちも少し怖がっていた。
ちなみにギルティアスさん、強さ的には勇者レベル40くらいの強さはあるみたい。でも、他者や動物を傷付けることを良しとせず、戦うことなく迫害を受け入れて逃げたらしい。
しかも、蟲族みんなが争いを好まない温和な性格……マジで外見って当てにならねえ。
「…………」
ちょっと考えた。
もしこの人に『超越化』使ったらどうなるのかな……このフォルムがさらに強化され、初期フォームをモチーフにした最終フォームみたいな姿になるのかも。
やべ、ちょっと見たい……ドキドキする。
「王よ、如何しました?」
「あ、いえ!! すみません!!」
やばいやばい。まあ、機会はある……たぶん。
すると、マオがギルティアスさんをジッと見ていた。
「にゃ……おっきい。登っていい?」
「え?」
マオはギルティアスさんに飛び乗り、背中を伝い、頭のツノを掴んで勝手に肩車してしまった。
さすがにこれはまずい。
「こらこらマオ、勝手に」
「ははは、構いませんよ。どうだいお嬢さん、私は大きいだろう?」
「にゃあ。つの、硬い」
「ははは。岩をも砕くツノだ。ツノは我々蟲族にとって誇りであり象徴なんだ」
「にゃうー」
ギルティアスさんは子供好き、と……うーん、いい人すぎる。
とりあえず、種族の違いや文化はわかった。
「あの、ギルティアスさん。何か必要な物とかあります? その、暮らすうえで」
「そうですね……我々は寒さに弱いので、時期が来たら暖炉などを使えれば」
「なるほど。家に断熱材とかあればなー」
「断熱材? なにそれ」
「俺も詳しく知らんけど、今の家ってただの木の壁だろ? えーっと……壁を二枚にして、その間に断熱材を入れると部屋に熱がこもってあったかくなりやすい、だっけ」
超うろ覚えの知識。
昔、うちをリフォームした時、壁の間に断熱材っていうフワフワしたやつを入れてたのを思い出す。
異世界あるある……専門知識なんて都合よくねえ!! 断熱材あれば家はあったかい、くらいの知識しかねぇんだよ!!
ミュウは少し考えて言う。
「ドワーフのおっさんたちに相談してみたら? 薄ぼんやりでも、壁を二枚にして、その間にフワフワしたの挟めば寒くないかも、って感じでしょ」
「……確かに」
今、蟲族たちに与えた家は普通の家だ。
数もまだ多くないし、二重構造壁のアイデアを提供すれば、新しい家をすぐ作ってくれるかも。
「よし、じゃあドワーフたちと、建築担当のムサシのところへ行くか」
「うん、なんか楽しくなってきたかも」
「にゃあ」
「王よ、お供します」
俺、ミュウ、マオ、ギルティアスさんはドワーフたちの元へ向かうのだった。
「…………」
ちなみにケルベロス。ずっといたのに一言も話さず黙ってついて来るのだった。もう少し喋ってもいいからな!!
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