さっそくの問題

 さて、河川の方はアースタイタンたちに任せ、俺は一人で新しい家の様子を見に来た。

 犬たち総勢三十匹で頑張っている。カルシウムたっぷりの骨でも差し入れした方がいいのかなーなんて考えていたが、そんな必要なかった。


「……おおお」

『お、ご主人様!!』


 ムサシが来た。

 金槌を加え、どうやって巻いたのか頭にハチマキを巻いている。

 家は、立派になっていた……廃屋だったのに、三世帯住宅みたいな横長二階建ての家になっている。

 驚いて眺めていると、ムサシが言う。


『いやー、張り切りましたぜ。図面担当のポチマルが、せっかくなんでデカくしようって言いまして……材料も道具もあるし、総勢三十匹で張り切らせていただきました!!』

「す、すごいな……」


 犬たちを見てみた。

 まずノコギリ。器用に加えて『犬ならこうするしかない』って動きで器用に斬っている。口に咥えて左右に身体を揺らして木を切るなんてマジすごい。

 金槌は、口に咥えて軽くジャンプしながら釘打ちしてるし、カンナや材木を支えるのも口や前足でやっていた……すごいなんてもんじゃない、曲芸の領域だよ。

 安易な異世界モノだと、人間になったり二足歩行化したりするけど、ここにいる犬たちはマジで『犬』のままで仕事してる。


『ご主人様。内装は三部屋だけ急がせます。ご主人様と、奥方と、ダイニングですな』

「あ、ああ……って」


 よく見ると、家具も作っている。

 ベッド、椅子、テーブルなどの基礎的な家具を、犬たちが作っている……もうマジで『犬』なんだよ。二足歩行とかしてない、前足で器用に押さえてさ、咥えたノコギリでギコギコ……マジでもうすごい。

 これ、任せていいわ。


「あのー……なんか欲しいものあるか?」

『欲しいものですか? いえ、とくには』

「その、ご褒美とか。ここまでの出てくるなんて考えもしなかった」

『んー……じゃあ、肉が食いたいっすね。普段のカリカリしたヤツも美味いんですが、やっぱ肉が食いたいですわ』

「わかった。じゃあ、今夜はいっぱいの肉にしよう」


 スキル『犬のエサ』は、大雑把に『肉』と考えると、犬用の肉がちゃあんと出てくる。今日は大盤振る舞いしてやるか。

 よし、家は安心して任せ……。


「……ん?」

『……地震ですかね?』


 地面が僅かに揺れていた。一時的に作業がストップする。

 けっこうデカい揺れ……いや待て。


『ご主人様、水の匂いがします!!』

「水? あ、まさか……!!」


 すると、大量の水が流れてきた。

 鉄砲水……そういう表現で正しいのかわからん。でも、枯れていた川に水が一気に流れてきた。

 濁った水だ。木々とか廃材とか少し流れている。


「そっか、河川が開通したんだ。マオとアースタイタンと猫たちがやったんだな」

『おお、これで田畑も使えそうですね』

「ああ。よし……ちょっと様子見てくる」

『はい!! あ、川が復活したってことは……よしご主人様、川を渡る橋とかも修理しておきますんで!!』


 どこまでも頼りになる犬たちだ……よし、マオたちに合流しよう。


 ◇◇◇◇◇◇


「にゃあ。ご主人さまー」

『『『『『にゃあーご』』』』』


 村の入口に付近に向かうと、アースタイタンに乗ったマオ、猫たちが歩いて来た。

 ズシン、ズシンと歩くアースタイタンに、マオ、猫たちが肩に乗る……なんかこういう光景、映画とかで見たことあるな。


『ご主人様。河川が開通しました……任務完了です』

「おう、お疲れ。いやー驚いた……作業の速さもだけど」

『周囲を索敵した結果、河川は村を通り、別の河川と合流するようです。村のため池にも順調に水が溜まっています』

「おお、ありがとな。じゃあ次は……なあアースタイタン、お前って畑とか耕せる?」


 ちょっと思い付きで言ってみた。

 こいつが鍬持って畑耕すの、ちょっと見てみたい。


『可能です。モード変更します』


 すると、アースタイタンの両足がボディに収納され、キャタピラが出てきた。

 いや……キャタピラじゃない。これ、耕運機じゃん!! テレビのCMで見たことある!!


「お、お前……耕運機モードもあるのか!?」

『私はアースタイタン。不可能はありません』


 不可能ないのかぁ~……!!

 滅茶苦茶嬉しいぞ。いや頼りになりすぎる。


「じゃあ、村の畑を耕してきてくれ」

『了解しました』

『にゃあご。ご主人様、ワイらも手伝うぜ!!』


 すると、マオは飛び降りて俺にぎゅっとしがみつく。

 アースタイタンはキャタピラを動かし、村の畑エリアに行ってしまった。


「にゃあー、ご主人さまと一緒にいる」

「ははは、ありがとう。じゃあ、また一緒に見回り行こうか」

「にゃう」


 俺はマオと手をつなぎ、再び猫たちの手伝いをしに行くのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 が……事態は動く。

 マオと一緒に手をつないで歩いていたのだが。


「おーいケイ!! ケイ!!」

「ん?」


 俺を呼ぶ声……お、上空からだ。って上空!?


「モザちゃん、着地っ!!」

『はい』


 俺とマオの目の前に、全長二十メートルくらいの木箱を背負ったモザドゥークが着地。

 頭部にいたエリが飛び降り、息を切らして俺の前に。


「おお、おかえり。早かったな」

「ええ、地図は完璧。けっこう廃村あってさ、でもどこもボロボロ……街道も酷いモンだし、整備に時間かかるかも……じゃなくて!! モザちゃん!!」

『はっ、お任せを』


 モザドゥーク、エリの部下みたいになってるな。

 器用に木箱を下ろすモザドゥーク。


「なんだこの木箱? お土産か?」

「ちっがう!! ちょっと待って……ふんっ!!」


 エリは木箱の側面を蹴る。すると、側面部が壊れ、中が見えた。

 そこにいたのはなんと、デカいトカゲの集団だった。


「うおぉっ!? なな、なんだなんだ!?」

「魔族!! リザード族よ。集団で魔獣に追われてて、助けたの。怪我人も多いのよ!!」

「り、リザード族?」


 確かによく見ると、怪我人が多い。

 全長二メートルくらいかな。トカゲという割にはゴツゴツした甲殻みたいなのに覆われている。ガタイのいいトカゲもいれば、すらっと滑らかな肌をしたトカゲも多い。

 そして……小さな子供のトカゲもいる。


「ケイ。あんた、人と魔族の受け皿作るんだったわよね。早速だけど、頼むわよ!!」

「お、おう……」


 えーっと、回復魔法あったよな……ああもう、みんな怪我して息も絶え絶えだし、話聞くのは治療の跡で、だ!!

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