指示出しをします
「ん……ふぁぁ~」
朝。もっふもふに包まれていた俺は気持ちよく起きた。
気持ちいい理由……まず、俺はシロとクロを抱っこし、さらに毛布に包まっている。そしてベッド代わりに巨大化して寝そべっているモザドゥークの背中にいた。
そして周りには大量の犬と猫……これで寝れないなら病院行くしかないレベル。
『ん……おはよ、ケイ』
『ふにゃぁ~……おはよ』
「おはよう。いや~……最高のベッドだわ」
モザドゥークの背中最高。
まあ、家がないからやむを得ない感じでモザドゥークの背中借りて寝たけど、ほんともう家なんていらないくらい気持ちいいわ。
毛布を畳んで背中から降り、反対側で寝ているエリの元へ。
いや、女の子だからダメとか倫理観あるけど……まあ、異世界だしいいや。
「おーいエリ、朝だぞー」
「んん~……」
「にゃぅぅ……」
なんと、エリは猫娘のマオを抱きしめ、毛布に包まって寝ていた。
犬や猫も傍で丸まっているし、モザドゥークの背中が気持ちいいのかだらしない顔で寝ている。
すると、マオのネコミミがぴこぴこ動き、エリの顎をくすぐる……かわいい。
「んんん……もう朝?」
「ああ、顔洗ってメシにしようぜ。今日もやることいっぱいだぞー」
「ふぁぁい……マオちゃん、朝だよー」
「にゃあ……ご主人さま」
マオは起きると、俺に向かって両手を伸ばしてきた。
思わず抱っこすると、俺の胸に頭をぐりぐり押し付けてきた。なにこれかわいい。
「さ、さあ二人とも、メシにしよう」
「にゃあうー」
「はーい……あ、着替えよっと」
エリが寝ぼけて脱ぎ出したので、俺は慌ててその場から逃げるのだった。
◇◇◇◇◇◇
朝食は、エリが買ってきた保存食だ。
パン、炙った干し肉、水で戻した乾燥野菜を挟むサンドイッチ。干し肉ってしょっぱいし硬い……エリはともかく、マオにこんなに喰わせるのは。
「にゃあ、うまい」
……まあ、干し肉を噛み千切っていました。
犬や猫には魔法で出せるからいいけど……料理とかできるヤツいないしな。エリもできないし。
さて、メシを食ったら何も言わずにみんな整列する。
「えー、今日の作業だ。まず、エリがいろんな道具を買ってきたんで、犬たちは家の修理をさっそく始めて欲しい。みんなバラけてやるんじゃなく、三十匹で一軒……まず、俺たちの住む家を直してくれ」
『へい!! ご主人様、直すのはこの村長邸でよろしいんですか?』
犬たちのリーダー、ムサシが尻尾をブンブン振る。
ちゃんとお座りしてるし、どう見ても普通の犬なんだが……今更だけど、大工道具ってどうやって使うんだろうか、滅茶苦茶興味ある。
「ああ。ここが一番大きいしな」
『了解しました。野郎ども、聞いた通りだ!! 我ら『大工犬』の本領を発揮するぜ!!』
『『『『『わおーん!!』』』』』
「うおっ」
び、びっくりした……三十匹がいきなり遠吠えした。
というか、大工犬ってなんだ。いつの間にかそんな役になっていた。
ムサシが号令すると、犬たちは並んで走り出した。
ま、まあ頼りになるし任せるか。
「そして猫たちだけど、狩り以外では何ができる?」
俺はリーダーのトラキチに聞いてみた。
『にゃあ。我らも犬たちと同じく強化されてますんで、人間と同じことは何でもできます。そうですね……料理に洗濯、畑作などもできますね』
「おお、そりゃありがたい。じゃあ、何匹かはこれから料理担当になってもらうか。それと狩りと……あと、気になることあるか?」
『にゃおう……とりあえず、畑と川が気になりました。川が土砂で塞き止められてるんで、村を通る川が干上がっています。それと荒れた畑に街道……街道が復旧すれば、ご主人様たちも行き来しやすいし、ここから近い村とかにも行けるかも?』
ね、猫なのに俺よりしっかりしてるわ……やるなこいつ。
「よし、じゃあ猫たちは役割分担だ。塞き止められた河川、荒れた街道と畑、それと料理担当……それぞれ復旧作業に当たってくれ」
『にゃあ!! よしみんな、班分けするぞ!!』
『『『『『にゃあ!!』』』』』
うーん、かわいい。
犬猫たちはこれでいい。
俺は振り返り、エリ、シロにクロ、マオ、モザドゥークを見た。
「ちょっとケイ。犬猫たちが頼りになるのわかるけどさ、あんまり偉そうにふんぞり返って待つのなんて、あたしは嫌よ」
「わかってるよ。ところでエリ、一個確認」
「なによ」
「お前さ、俺の言うこと聞いてくれるのか?」
「はあ?」
「その……俺さ、こうやって犬猫たちに命令してるじゃん? それにさ、お前も入れていいのか? お前さ、俺にくっついてきただけだし、俺があーしろこーしろって言うのもおかしいかなって」
「あーそういうこと。エッチな命令するようだったら蹴り飛ばすけど、基本的にはいいわよ。でも、度を越えた頼みとか、横柄な態度取るようだったら言わせてもらうけどね」
「そういうことは言わない。よし……じゃあエリ、さっそくだけど頼んでいいか?」
「ええ、なに?」
エリは手を腰に当て、「任せなさい」と言わんばかりに胸を張る。
なんだか頼りになる。やっぱ現地人の仲間って大事だな。
「お前はモザドゥークと一緒に、この辺の見回りしてきてくれ。で、何か見つけたりしたら地図にいろいろ書き込んでほしい。もともとあった街道とか、廃村の位置とか、なんか面白そうなモンとか」
俺はエリに地図を渡す。
この地図、アリアさんからもらったんだが、かなり未完成なんだよな。
特にシャオルーン領地。大まかな街道しか書いてないし、廃村も三つくらいしか書かれていない。
エリは地図を受け取り、頷いた。
「任せて。こう見えてマッパーの経験あるし、こういうの得意よ。じゃあモザちゃん、行こっ!!」
『ハッ……では背中へどうぞ、奥方』
エリはモザドゥークの背に乗る。
今日のモザドゥークは大きさが十メートルくらいある。これくらいの大きさだと、物書きしながらでも乗りやすいとか。
モザドゥークは跳躍すると、あっという間に森へ消えた。
『じゃ、ボクらは昼寝してるよ』
『私たちのスキル、役立ててね~』
俺が何か言う前に、シロとクロは木陰に行ってしまった……まあ、スキル関連で大いに役立ってるから、あーしろこーしろとは言えない。
さて、残りは猫娘のマオ。
「にゃ……ご主人さま、わたしは?」
「マオは俺と一緒に、みんなのお手伝いだ」
主に猫たちかな。
猫たちはチーム分けして作業しているが、どう考えても作業効率は落ちる。
河川や街道、田畑など、俺とマオで見回りしながら手伝うのだ。
マオは多彩な霊魂を使えるし、俺もスキルがある。
まだ試していないスキルもあるし、いろいろ実験もさせてもらおうか。
「じゃあマオ。今日も一日頑張ろうな」
「にゃあー」
俺はマオの頭を撫で、ついでにネコミミを軽く揉むのだった……な、なんてフワフワな手触りなんだ。こりゃクセになりそうだ。
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