幕間 第03話
昼休みになり、瑠璃の元にはたくさんのクラスメイトが集まっていた。
「深山さんってどこから来たの?」
「ブレザーかわいいな、ウチもそんな制服が良かった!」
「深山さん……。あなたにちょっとお話しがあるの……」
「すんすんすん。はぁはぁはぁはぁ…………」
周りは騒然としており、瑠璃は戸惑っている。
そこへ、史郎が丸いスポンジボールを持ってやって来た。
「皆んな、見て見て。このボール、今は右手にあるでしょ?」
史郎は、ボールを右手に持ったまま両手を握る。
両手を開くと左手に移動しているボール。
騒然となるクラスメイト。史郎に近くてアワアワしている女子生徒も。
「いくよ?」
左手に持ったボールを握りしめ、頼斗に向かって投げるポーズ。
「ほら、頼斗の胸ポケットに……」
興奮したクラスメイトは頼斗に駆け寄る。
「ちょっ、なんや! なんやねん!」
〈ボソっ〉
「おいで」
「えっ!?」
史郎は、瑠璃の手を取り教室を抜け出す。
瑠璃は訳がわからないまま、史郎に屋上まで連れられて行った。
「いきなり皆んなに囲まれたら困るよね。頃合いを見て戻るといいよ」
史郎が微笑み、瑠璃も微笑む。
「ふふっ、ありがとう。それにしても手品すごい上手だったよ。もしかして……合コンとかでよく使ってるの?」
「合コン? 行った事無いよ? 俺、モテた事も無いし」
「えぇーっメチャクチャ女慣れしてる感じだったよ? ホントに?」
「ホントだよ? だいたい頼斗……俺の右隣の奴が俺の予定決めてんの。マネージャーみたい。信じられる?」
「えっ! あのイケメン!? あっごめん史郎くんがイケメンじゃないって事じゃ無くて……」
「はははっ大丈夫だよ。そんな意味でとらえない。まぁアイツ、めちゃくちゃイケメンだしね」
「史郎くんも、じゅうぶんイケメンだよ? ちょっと腕を引かれて連れてかれた時はドキドキしちゃった……」
瑠璃の言葉の後半は、ボソボソと小さくなっていき、史郎にはほとんど聞き取れなかった。
「ありがとう。イケメンって言われたら嬉しい。そうそう、ご飯まだだよね。どうする気だったの?」
「それが、お弁当家に忘れて来ちゃったから、学食で食べようと思ってたんだけど……」
「それなら一緒に学食で食べない? そのあと、校舎も案内するよ」
「ホントに? 私、実は人見知りでかなり不安だったんだ……。一緒に食べてくれる?」
「もちろん。喜んで。じゃ、行こっか」
食堂へと向かう途中、何人もの女子生徒がハンカチを引きちぎる勢いで噛んでいるのを横目で見ながら、怖いところに転校してきちゃったとビビる瑠璃だった。
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