第4話 褒美の品
次の日、リーサが教室に入って席に座ると、セイジとソージがそばに来た。その様子はただ事ではない。
「ちょっと、リーサに何の用なの!」
そばにいたマリが2人に言った。彼女は昨日、リーサが2人と競争して圧倒的に勝ったことを聞いていた。2人が文句を言いに来たかと思ったのだ。
「いや、用というわけじゃないけど・・・」
「俺たちはちょっとリーサに聞きたいことがあって・・・」
セイジとソージは何か言いにくそうだった。はっきりしない。リーサが聞いてみた。
「聞きたいことって何?」
「リーサの父って・・・」
「去年、朝駆けで一番乗りを取ったんだな?」
「そうだけど」
それを聞いてセイジとソージは顔を見合わせてうなずいた。マリは「そんなことか」と肩をすくめた。
「だからどうなの?」
「俺たち、ガンジさんにあこがれているんだ」
「かっこよかったぜ。あの走り。圧倒的に早かったからな!」
セイジとソージはうっとりした顔をして話していた。リーサは少し誇らしげな気持ちになった。
「それを言いに来たの?」
「まあ、俺たちじゃ、ガンジさんの娘には勝てないってわかった」
「この学校の『韋駄天』の称号をリーサに譲るよ」
「いらないわ!」
リーサはにべもなく言った。そんな称号、ありがたくもないと思った。
「そうか? せっかくなのにな?」
「それより話を聞かせてくれよ。一番乗りを取って王様からお言葉とご褒美をいただいたんだよな」
「ええ、そうだけど。私も門の外で見ていたからよく見えなかった」
リーサはこう答えたが、代わりにマリが話を続けた。
「でも『今年の朝駆け、見回り組騎士、ガンジが一番乗りいたしました!』って名乗りを聞いたわ。みんなしびれていたわ」
確かにその声をリーサは聞いた。父の走りも素晴らしかったが、その声にも感動した。マリはさらに話し続ける。
「王様から黄金3枚をいただいたのよ。リーサの家に飾ってあるわ」
「へえ。そんなものをいただけるんだ」
「でも俺だったら別の物が欲しいな」
「何だよ?」
「剣さ。王様からいただいたらうれしいだろ?」
「俺なら幟かな。」
「私ならきれいなドレス。それに王宮のパーティーに招待していただけるっていうのはどう?」
マリとセイジとソージは話している。それを聞きながらリーサは考えていた。
(私なら女官にしていただくことよ。そうやって王様に仕えられたら・・・)
するとふとある考えが浮かんでいた。
(そうだ。今年も父上が勝つだろう。そうならご褒美に私を女官にと王様に頼んでいただこう)
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