過去に戻ったのでダンジョン配信者になって人生をやり直す

赤雑魚

第1話 10年前の学園生活


 突き抜ける様な蒼い空。

 弧を描くように形成された試合場コロシアムの中心で、俺は安物の剣を握って立ち呆けていた。


「さあ! いよいよ決闘が始まります! 今回の戦いに名を挙げたのは『河見レンジロウ』! Cランクの彼は相手の不敗神話を超えることができるのかァ!? 」


 実況に名を呼ばれて我に返る。


 ここは学園だ。


 世界有数のダンジョン探索者育成機関である『逢見ダンジョン学園』。

 10年前の学生時代を過ごしたあの場所に、なぜか俺は立っている。


「これは、夢なのか.........?」


 俺はさっきまでダンジョン公務員として、薄暗い迷宮で凶悪なモンスター群と戦っていた筈だ。


 そうだ、思い出してきた。


 俺は上司の無茶な命令+圧倒的人員不足により、かれこれ30連勤かつ平均睡眠3時間というブラック環境で働き続けていたのだ。


 ほぼ一月を休みなしで戦い続けるという異常事態。

 極限の疲労でハイテンションだったのだが、ドラゴンを滅多切りにしていた辺りから記憶がない。


 夢かと思って頬をつねるが、普通に痛い。


 「現実だ............」


 何が起こっているのかはわからないが、学生服を着ていること、身体も若返っていることから察するに、俺は10年前の学生に戻っているらしい。


「うーん?」


 しかし、なぜ俺はコロシアムにいるのだろうか。


 ここは例えるなら、体育会系の極致みたいな場所なのだ。

 根暗が服を着て歩いているとまで言われる俺が、基本的に寄り付かなかった場所だ。


「.........あっ」


 そういえば入学して早々、コロシアムで試合をしたことがあった。


 観客の前で戦うというのが、どうにも性に合わなかったので参加したくなかったのだが、1年生は一度は強制参加という謎ルールで出場をしたのだ。


 あれは酷い試合だった。


 俺はダンジョン学園へ入学を果たし、秘められた才能を発揮し探索者として活躍することを妄想していた______ちょっと痛々しかった頃だ。


 実際、剣術の筋も悪くなかったので調子に乗っていた。

 だが、ちょっと剣が使える程度では、どうしようもない相手の当たったのが運の尽きだった。


「挑戦者を迎え撃つのはこの男! 現代の英雄! 伝説の聖剣遣い! 最高峰のSランク! 『勇者』神代ナギだァァアアアアアアアア!!」


 透き通るような白髪が靡く。

 息を呑むほどに整った顔立ちの少年が、美しい剣を携えて目の前に立つ。


 そうだ。


 ダンジョン学園に入学して間もない頃。


 十年前のあの日、俺は未来で人類最強とまで称される天才「神代ナギ」と決闘をしたのだ。


 凡人VS聖剣遣い


 絶望的なマッチアップとなったその試合では、完膚なきまでにボコボコにされたのは。






 ..................超逃げてェ!!!!

 

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