第24話 みんなでお泊り


「じゃーん、ドレスです!」

「わ! 素敵!」


 ヴィルが取り出したのは、キラキラな高級ドレスだった。

 こんな高価なものもらってもいいのかな。

 ていうか、どこに着ていくのさ、こんなの。

 でもまあ、服は全然種類がなかったから、助かるっちゃ助かる。

 でもふつう、ドレスの前に普段着がもっと欲しいところだけどね。


「でも……こんなの、どこで着ればいいんだろ……。森の中でドレスって」

「実は、お願いがあるんだ」

「え?」

「こんど、うちで行われる舞踏会に、いっしょに出てほしいんだ!」

「えええええ!? それって、貴族の舞踏会ってこと?」

「そうだ。実は、舞踏会では踊りを誰かと披露しないといけないんだけど、相手がいなくてね……。僕には他に、誘える人がいないんだ」

「え、でも。他の貴族の知り合いとかは?」


 貴族っていつもパーティーとかしてて、人脈は広そうだけど。


「それが……恥ずかしい話、うちは貴族とはいっても、まだ歴史の浅い家柄でね、いろいろ舐められていたりするんだ。差別ってほどでもないんだけどね。僕にはあいにく、仲のいい女性の知り合いは君しかいない。そこで、お礼をしにきたばっかで、ていのいいお願いだってのはわかってる。でも、僕はサクラと踊りたいんだ! お願いだ!」

「うん、いいよ」

「え、即決!? ほんとにいいの?」

「もちろん、貴族のパーティーって、興味あるし、街にもいちどいってみたかったしね。それに、案内してくれるって約束でしょ?」

「ああ……もちろんだ!」


 それに、ヴィルはお願いだっていうけど、これもお礼みたいなものだ。

 貴族のパーティーに招待ってそれだけでもお礼になるでしょ。

 普通の人はなかなかいけないし、いきたい人も多いと思う。

 

「もちろん、ノルンちゃんも友達として招待するよ!」

「え!? 私もですか!? いいんですか!?」

「当然だよ! もしよかったら、誰か男性の知り合いと一緒にきてほしい」

「ふええええ……私も知り合いあまりいないのですー」


 でもなんだか、楽しいパーティーになりそうだ。

 それはそうと、みんなにはそろそろ帰ってもらわないといけない。

 なにせ、明日の夜にはゾンビが来るのだ。

 それまでに、みんなには避難してもらわないと。


「あのさ、言いにくいんだけど、今日はもう遅いから泊っていってもらうとして、明日の朝には帰ってもらえるとうれしいんだよね」

「なにか予定でもあるの?」

「うーん、主に集団で来客といいますか」


 私がそういうと、ノルンちゃんが、


「わかります、ゾンビですね!」

「そう、ゾンビ」

「ゾンビ……?」


 ヴィルにはなんのことだかわからない。

 私はヴィルにことの経緯を説明した。

 

「てことで、どういうわけか、私は七日に一度、ゾンビに襲われる運命なのです、はい」

「そうだったのか……でも、それは大変だ。それをきいたら、なおさら家には帰れないよ」

「えぇ……かえってよぉ……」

「だめだ。君を危険にはさらせない。そうだ、お礼もかねて、僕らがみんな残って、一緒に戦うよ。そのほうがいいだろう?」

「でも、危険だよ? それに、罠やゴーレムもあるし、私ひとりでも大丈夫だよ」

「大丈夫、まかせておいてくれ、うちの従者はこれでも街一番の手練れなんだ。ゾンビの集団くらい、一網打尽だ」

「そういうことなら……お願いしようかな……」

「うん、大船に乗ったつもりでいてくれ。ゾンビをちゃっちゃとやっつけて、いっしょに街までいこう」

「うん、わかった、そうする」


 てことで。とりあえず今晩と明日も泊るってことで、私はみんなの分のベッドを追加でクラフトした。

 あとは、ゾンビ襲撃に備えて、装備を整えるだけだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る