第13話 夫婦は、破滅の道を (張純視点)
〜〜♪
「ご機嫌だな」
張純が部屋の中に入ると
妻である魯英が
子守唄を口ずさ見ながら服を畳んでいた。
「…あら旦那様いつお帰りに?」
「今さっきだが、それよりその服は?」
「あの子にあげようと思いまして」
そう言って魯英が愛おしそうに
畳んだ服を見る。
「あの子…劉良か?」
「ええ、旦那様が旅支度もまともに
させずに連れて来たのでしょう?」
魯英の抗議の視線を受けて張純は、
気まずそうに視線を逸らす。
「そりゃ仕事の都合上
強行しなくちゃいけなかったんだわ」
「それに劉良殿が付き合う必要が?」
「そりゃ俺が話したら自派閥よりの考えを
無意識に入れそうでな」
「それは、派閥の長として当然では?」
「いや今回は、刺史に任せて
大人しく裏方に回ったほうがいい」
そう言って服を着替えながら
張純が劉良から聞かされた策を話す。
「…なるほど、確かにそうですね
この策は、幽州の知識人達を
怒らせますしね」
(さすが俺が幽州にいない間の
派閥の管理を任せている魯英だ
少しの説明で
言いたい事を理解してくれる)
「そう言う事だ、まぁあの知識人ぶった
奴らにはいい薬だろう」
そう言った所で使用人がお酒をもってくる。
「おっ来たな!!」
「…旦那様」
張純が嬉しそうにしてるのを
魯英がジト目で睨む。
「いいじゃねえか、
今日くらい俺だって疲れたんだ」
「疲れているなら寝てください」
「まぁまぁちょっと…ちょっとだけな?」
そう言いながら酒の注いだ杯を渡すと
一つ溜息をついて
「もう仕方ないですね」
とお許しが出る。
「さすが魯英だ愛してるぞ!!」
張純が抱きしめようとすると
魯英は、するりとかわす。
「はいはい…とその前にお酒の匂いが
着いてはいけないので
この服を片付けませんと」
そう言って魯英は、
侍女を呼び出し服を預けた。
その時張純は、チラリと服が目に入り
疑問に思い話しかける。
「なぁ…その服…」
「……」
「…よかったのか?」
「…はい、誰にも着せず捨てるのも
あれですから」
魯英が悲しそうな目で服を見る。
その服は、私達の子供に贈ろうとした物で
贈る前に亡くなってしまい
贈れず数年経っても保管していた物だ。
「それにこの屋敷も手放すので
ちょうど良いかと」
「そうか…そうだな」
魯英がゆっくりとこちらに近づいて来たので
張純は、魯英の手を取り優しく抱き寄せる。
「…どうなさいました?」
「いや何にもない」
「…そうですか」
二人は、何かを必死に埋めるかのように
身を寄せ合う。
「ねぇ…旦那様?
あれに…巻き込むつもりですか?」
「…情が沸いたか?」
「…いいえ、情などあの日に無くしました
…ただ…」
魯英は、何かを思い出すように
遠くの方を見ていた。
張純は、情がわいたなと思ったが
わざわざ指摘する事はしない、
張純は、手を伸ばし杯を取り
酒を一口飲み呟く。
「…巻き込むつもりはないさ」
「…そうですか」
「ああ、こんな破滅への道にはな」
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