第11話 薊県

幽州…それは、北方に位置し

領郡が11ある州である。


ちなみに何度も登場する張純が

大守をする中山は、幽州ではなく冀州であり

郡ではなく国と呼ばれている。


そして劉良が住んでいる郡は、

琢郡琢県であり

幽州の政治の中心は、広陽郡の薊県にある。


さて何故こんな事を言うのかと言うと


「ハッ…ハッ…ッ…ついた…」


劉良は、汗をぬぐって城壁を見るそこには、

薊県と書いてあった。


そう劉良は、幽州の中心薊県に来ていた。


「おいおい情けないな劉良

 幽州の男たる者この程度で」


「こんな急ぐ…必要あったんですか?

 馬車使わずに馬で強攻して」


あの張挙、張純、両大守が来た次の日

夜中に考えた策を二人に話したら

突然刺史に会うぞと張純大守が言い出し

最小限の護衛と共に連れてこられた。


「そりゃ俺だって大守の身だ

 そんな長く中山を離れるわけには

 行かないからな」


「それなら刺史に合うのは後日でも」


「だから忙しいと言っただろ!!

 それに他の州の刺史に何回もあったら

 痛くもない腹を勘繰られるだろう

 劉良、疲れで頭回ってないぞ」


それは確かに、

張純大守が治めている中山は、

幽州寄りとは言え分類的に冀州に入り

ちょくちょく大守がこの幽州に来るのは、

幽州に西部を中心に根を張っている

自分の派閥を見る為に来ているのだ。


そうこう言ってるうちに

一つの屋敷の前につく

屋敷の中は、様々な使用人が

忙しく動き回っている。


「おい!!帰ったぞ!!」


「だっ旦那様!?

 もう御付きで!?」


「ああ、取り敢えず中に入れてくれ」


「はっはい!!」


張純達は、使用人に馬を預け屋敷の中に入る。


劉良は、張純の後をついて歩きながら

屋敷の中を見る。


(さすがに豪華だな

 ……だけど屋敷全体が寂しく見えるのは

 何故なのだろう?)


「どうした?」


「えっいや何でも」


「何でもって顔じゃないだろ

 遠慮せず言ってみろ」


劉良は、躊躇いながらも

今さっき感じた事を伝える。


「ああそれな、それは」

「引っ越し中だからです」


張純の言葉に被せるように

一人の女性が喋りながらこちらに歩いてくる。


魯英ろえい

「旦那様お帰りなさいませ」

「おう帰ったぞ、それでな」

「旦那様」

「んっ?何だ」


魯英と呼ばれた女性は、ニコリと笑うと

突然こちらに走り出し飛び上がると


「…何、人様の子供を勝手に

 連れ回してんねんッー!!」

「グハッ!!」


そのまま張純の胸目掛けて蹴りを放った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る