第7話 ないならある所から 前半

「劉良様、皆揃いました」


「ありがとう冬項」


日が沈み蝋燭の光が部屋を包み込んでいる

そんな部屋で劉良は、

春蘭、夏母、秋希、冬項の四人と向き合っていた。


この四人は、豪族達の集まりの為に

留守にしている高春が留守中、

劉良を補佐する人として指名した四人である。


「さてごめんこんな夜更けに」


「いえいえ、若君の為ならどこへでも

 馳せ参じますわ」


そう言ったのは、荘園で孤児院を経営していて荘園の内政も統括する恰幅のある女性、

夏母だった。


「うんありがとう、

 それで早速だけど今回集まってもらった

 理由だけど今来ている大守達の事だ」


「何か不手際がありましたでしょうか?」


「いやそれは大丈夫、

 大守達も満足してたよ

 そうじゃなくて…」


劉良は、先程あった事を皆に話す。


「なるほど、文官が欲しいですか…」


「話しを聞く限り若君は、

 何としてもうちから出したいと言うことですか?」


「ああその通りだ春蘭」


「それは何故?」


夏母は、少し試す様に問いかける。


「それはもちろん、

 張純様の元に自分達の手が入った者達を

 送りたいからだ」


「劉良様は、大守達と友好関係を

 築いていると思ってらのてるのですが」


「それは、送らない理由にならないよ

 だってこの関係がいつまで

 続くかもわからないし

 大守…しかも幽州の有力な派閥の長

 の元に送るこうきなんだ」


「なるほど…私はてっきり張純様に同情して言ってるものだと思ってました」


どうやら夏母のお眼鏡にかなった様だ

笑顔で頷いてる。


「はは!そこまで自分は聖人君主じゃないよ

 それで、皆に聞きたいのだが

 良い人材を知らないかい?」


そう問いかけると一様に考え込む。


「…やはり無理かな?」


「そうですね…

 あの時に言いませんでしたが 

 条件に合う人物はいます」


「秋季…本当?」


斡旋所の長をしている秋季が

申し訳なさそうに口にする。


「ええ…ただ…」

 

「そうねぇ〜うちも人手不足なのよね」


夏母の言葉にそうだったと頭を抱える。


「若様がこちらに来てから荘園は、

 より一層良くなりました」


「いやそんな事は」


夏母がふるふると首を振る。


「そんな事ありますわ、

 荘園内の整備を始め

 統治の機構を整えたり

 書式の統一もしましたわね」


荘園に移り住み母上の手伝いを始めた当初

我が家で雇っている使用人や流民達の

多さに驚きながらも

それゆえに管理が行き届かない場所も

多い事に気づき様々な対策を意見した。


ガタガタで荷車ですら通るのが

大変な荘園内の道を整備する

部署を作ったり、


荘園の問題の大半が

雇った者達の働き口を作るためか

果樹園や牧場、畑など

多種多様なものを見境なしに

荘園に作った為に起きている事に気づき。


それを管理する為に

使われる書式をわかりやすく統一し

統治機構を作った。


(いや〜我ながらよく出来たものだ)


「そのおかげで住みやすくなりましたが

 その分、仕事量が増え人手不足になっております」


「最近増員したんだけどな…」


「そうですけど、どれも経験が少ない

 者たちですので使い物になるには

 もう少し時間がかかるかと」


「そうか…、他のみんなの所はどう?」


夏母以外の三人に聞いたが何処も同じ回答だった。

 

(これは…やっぱり無理か?)





追記

・春蘭…侍女及び諜報の長

・夏母…孤児院及び荘園管理の長

・秋季…斡旋所の管理と人材確保担当

・冬項…劉良の護衛及び私兵の隊長

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