第二十四話 劉良の弱点

「さて、色々問題がありますがどれから

 説明いたしましょうか?」


「ふむ、それじゃ質問いいかな?」


屯田制の詳しい内容を書いた木簡を見ていた

劉虞刺史が先頭切って質問をしてきた。


「はい何でしょうか?」


「もし屯田制を取り入れるとして

 予算は、どうする?」


予算問題、これはどんな政策を

しようにもつきまとう問題である。


「予算につきましては、

 軍宅は軍部に、民宅は州と豪族に

 出してもらいます」


「無理だな」

「無理ね」


その答えに、

華雄先生は、武官として

母上は、豪族として

否定の声を上げる。


「ふむ二人から否定されたが

 まず華雄殿、何故無理だと?」


劉虞刺史が進行役として話しを回してくれる。


「辺境の武官として言わせてもらうが

 国境を守る軍にそんな金を

 出せる余裕はねぇ」

 

華雄先生の言葉も一理あるが

そんな


「本当にそうでしょうか?

 国境を異民族から守る為に国から

 莫大な支援を国境軍は、

 もらっているはずです」


「あぁもらっているな

 異民族と戦い国を守る為に

 決して田畑を耕す為の物じゃない」


「そうですね、でもこの幽州においては、

 刺史のお陰で平穏が訪れました

 つまり戦争に回すお金が浮いてると言う事です」


その言葉に華雄は、深いため息をついて見るからに不機嫌になる。


「馬鹿な文官と話しているようだ

 ハァ…良、よく聞けよ、

 確かに今は平穏が訪れたかも知れない

 だがな、いつかはまた戦争が起こる」


確かにそうだろうな

それは、劉良もわかっている。


「だからこそ軍は、平穏な時には

 武具を揃え兵糧を蓄え調練し

 爪を研ぐのだ異民族から国を守る為に

 …そして、それには莫大なお金が必要だ」


「理解していますだからこそ

 軍宅が必要なんです!!」

 

「劉良!!まだわからないか!?」


華雄先生が立ち上がり叱りつけるが

私もここで引く気はない!!


「そちらこそ何故必要なのか

 分かってないじゃないですか」


「何!?」


「まぁまぁ落ち着け二人とも」


劉虞刺史が熱くなった私達を止めに入るが

ここで止めるわけにはいかない。


「華雄先生貴方は今、馬鹿な文官と言いましたね」


「ああ言ったな」


「なら私も言わせていただく

 その馬鹿な文官がいないと

 何もできない癖に

 良くもまぁそんな上から言えた物ですね」


「…おい今、俺を侮辱したのか?」


「ええ、もし本当にそう言う考えなら」


二人は、睨み合う…


「…華雄先生、貴方は言いましたね

 武具を揃え兵糧を蓄え調練すると

 しかし分かってますか?

 その武器兵糧を集めるのは誰か?

 調練する為の兵を集めるのは誰かを」


「それは…文官だが」


「そうですよねそれなのに武官は、

 良く文官の事見下しますよね」

 

「うっ…それは」

 

華雄先生は、罰の悪そうに呟く。


「賈詡先生」


劉良は、静観していた賈詡を呼ぶ。


「何です?」


「戦争時、軍付きの文官として苦労するのは何ですか?」


「そうだな、物資を集める事」


「では、平和な時の場合は?」


「…同じ…いやそれ以上に苦労するね」

 

「そうです、華雄先生このこと

 知っていましたか?」


「…いや」


まぁ武官は、知らないだろうな。


文官ならわかるが

戦時は、物資が少なく集めるのに苦労するが

商人達や権力者達が負けると困る為に

積極的に協力してくれる。


だが平和になると物資を集めるのに

逆に商人や権力者が

利益や利権を要求してくるようになり

戦時よりも苦労するのだ。


この事を説明すると華雄先生は、

納得したのか何も言い返せない様だった。


その代わりに賈詡先生が質問をしてくる。


「それで、これが屯田制と何が関係が?」


「はい、もし屯田制を導入すると

 軍自らが兵糧を作り出す事ができます

 …つまり」


「なるほど!!

 兵糧が税によって毎年の様に手に入る

 から商人や権力者の影響力を削げると」


「はいその通りです

 他にも屯田兵として

 兵力も手に入りますし」


「なるほど利は、分かった

 …だがな」


…やっぱりダメだったか武官ってこう言う所あるよな。


劉良は、理解してもまだ難色を示す華雄の姿を見て説得を諦めた。


「華雄先生の言いたい事はわかりました」


「ほう、劉良君は諦めるのか?」

賈詡は、少し残念そうに劉良を見て問いかける。


「はい」


賈詡先生の教えを受けたから弁舌も

上手くなったと思ってたんだけどな…


「そうか…残念だ」


「あっ…その劉良すまん俺も熱くなりすぎた」


華雄は、これが宿題の発表だった事を

思い出し大人がない事をしてしまったと

反省する。


「いえ…便自分の実力不足です」


賈詡は、劉良の言葉に何か違和感を感じる。


「穏便に?つまり過激な事をすれば

 納得させられると?」


「少し違います納得せざるを得ないですね」


「ほうなら何でそれを先に出さなかった?」


華雄先生が聞いてくるが

あんまり言いたくない。


「劉良?」

「………」

「劉良!!」

「…自分にも出来るかなって思ったんですよ」


劉良は、不貞腐れた様子で答える。

「何を?」

「舌戦です」


「舌戦と言うより罵り合いだったな」

「えぇそうですね」


「ぐっ!」

劉虞刺史と母上の言葉が胸を刺す


「…お前あれ舌戦のつもりだったのか?

 俺は、てっきり罵られてるだけかと」


「…良、後で弁舌のコツを教えてあげよう」


賈詡先生の哀れみが入った慰めに、


弁舌が下手だって文官は出来るんだからな!!


と心の中で叫んだ後肩を落とし

「…頑張ります」と小声で返事をした。




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