第八話 宿題

「う〜ん」チラッ 


うーんと唸りながら劉良は、

幽州刺史に会いに行く為に数日留守にする

賈詡先生から課された宿題に頭を捻らせる。


その宿題は、この幽州を発展させる策を一つ献策せよと言うものだった。


正直、前世で幽州の政務をしていた

人間としては、簡単過ぎる課題だと思うが

油断はせずに一から考え全力を尽くそうと思う。


「その為にまずは…幽州の現状を再確認してみようかな」チラッ


劉良は、木簡を広げ幽州の現状をまとめてみる。


幽州とは…それは、漢の北方に位置する州だ

その性質上、北からくる異民族から守る重要な場所である。


その為、兵は屈強で

それを維持する為の資金も幽州の下に位置する冀州から送られてきてるものもある為

には、あまり民に負担がかからない為

幽州は、辺境ではあるものの裕福と言ってもいいかもしれない。


「そのうえ今は、劉刺史(劉虞)の

 異民族に対する外交手腕お陰で

 平和であると…」チラッ


「そうよね良かったわ〜

 そのおかげで食料品とか衣類とかが

 少しとはいえ安くなったもの」


「…あの…母上?」


自分が考えてる横で何故か

くつろぎながら刺繍をしている母上の方を見る。


「何かしら?」


「何で私の部屋にいるんですか?」


「えっ息子がちゃんと勉強してるか

 見るために?」


…嘘だな、あいつが来てるから逃げてきたな。

「まぁいいじゃないほら続き続き」

「ハァ…わかりましたよ」


それでは、話を戻し

次は、幽州の問題をまとめよう


現状の幽州の問題

それは、異民族関係が中心だろう

その中で気になるのは、

やはり派閥争いだろうか。


「母上」

「ん?どうしたの?」

「現在の幽州の派閥状況ってどうなってるのですか?」

「ん?ああ今はね大体三つになってるわよ」


流石は、忙しい父の代わりに

小さいとはいえ荘園を運営し家計を潤し

使用人を使い様々な情報を集める女傑、

スラスラと説明してくれる。


「つまり、刺史派と穏健派、そして強硬派に分かれてると」


「その通り…刺史派は、

 そのまんま刺史を中心とした派閥」


「穏健派は、刺史派と協力して

 異民族とは、戦わずに

 友好を築こうと言う派閥」


「そして最後に、

 異民族は、敵である打ち払うべきだと言う

 強硬派の三つね」


この派閥の何が問題なのか…

それは、強硬派が強すぎると言う事だ。


何故強硬派が強いのか…

それは戦争が幽州を富ませていたからだ。


…戦争には、お金がかかる。

その為北の盾たる幽州に

冀州を中心に支援のお金や物資が来る

そしてその集まった富が

苦しむ幽州の民たちに降り注ぎ

飢えから守ってくれる。


それなのに、

異民族との戦争が終わってしまったら

支援がなくなり戦争の傷跡が残る

荒れ果てた大地で

飢えに怯えながら生活しないといけない。


そんな考えが幽州中に広まり、

強硬派の豪族に民衆の支持が集まり

刺史派と穏健派を追い越す勢いになっている。


「戦争に怯え平和を望んでいたのに

 平和になった途端、

 飢えに怯えて戦争を

 求めるようになるなんて

 …皮肉…いえ悲しい事よ」


母がポツリと呟く。


「ねぇ劉良?

 どうすれば解決できるのかしらね?」


解決する方法…か…普通に考えると

幽州を豊かにして、強硬派を抑える事だろう

ただしこれには、長い時間と労力がかかる。


でもそれじゃダメだ、後数年のうちに黄巾の乱と呼ばれる大規模反乱が起きる。

何か短期的で効果のある策はないだろうか?

劉良は、考え始めた。



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