サンタデコルテ(2)(2023/12/22)

 すっかり感傷的な気分で、三田みつだはクリスマスの街を進んでいく。サンタの格好も、サンタのネイルも、なくったって大丈夫。だってこんなにも街はキラキラしている。

 娘を真ん中にはさみ、奥さんと三人で手をつなぎ歩いた商店街。

 バス停では何度も手を振りあった。家路には、自販機のある公園へ寄り道なんかしちゃってさ。

 三人で、それから二人で、過ごした家。

 もう誰も住んでいない、物たちだけの沈黙する家。

 思い出はいっぱいで、胸もいっぱい。

 妄想と現実がミルクとコーヒーのように混ざっていく。甘くて苦くて、どうしてこんなに愛おしいの。

 だからこそここで、デコルテロスの連鎖を断ち切るのだ。娘の首はやらないぞ。気合いを入れ、「デコルテだいじに」なプレゼントの入った缶缶を抱え直した。

 じゃあな。三田はそっと、風に紛れる。

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