10.M3-2
生存者数25が24に減り、討伐数0が1に増える。
どうやらこいつがタイプ:MTSのキメラで間違いないようだ。カマキリの英語読みであるマンティスから来ているのだろう。
眩い光が宇佐さんを包み込む。
宇佐さんは自身の初期スキルである拡散レーザーで、カマキリを焼き尽くした。
そこにいた林さんも巻き添えにして。
「宇佐さん!! 部長……!! どういうことですか!!」
友沢が声を荒げる。
「……お前もわかっているだろ? 友沢」
日比谷は真剣な顔つきで静かに返答する。
「っ……」
友沢は言葉に詰まる。
友沢だってわかっているだろう。
林さんはもう間に合わなかった可能性が高い。
あの場面でああすることは、<キメラを狙い撃ちにする>、<林さんを楽に死なせる>、そして、<スキルを回収できる>という三つのメリットがあった。
非常に合理的な行動だったと言える。
だが、問題があるとすれば、林さんはもう間に合わなかった可能性が高いというだけで間に合わないかどうかは完全には、わからなかったという点。そして、宇佐さんに人殺しをさせた点だ。
「友沢さん……私も……私があんな状況になったら殺して欲しい……です」
茂原さんが友沢に意見する。
迷いはするが、俺もそうかもしれない。正直、痛いのは嫌だ。
「っ……」
第三者、それも女性の意見に、友沢も反論することができずにいる。
「友沢……もし、私が同じような状況になったら、迷う必要はない……」
日比谷が追い打ちをかける。
「っ……! わかりましたよ!」
友沢はしぶしぶ納得したようであった。
友沢以外には、異論を唱える者すらいなかった。
沼倉さんがお前の気持ちもわかるよとでも言うように、太い腕で友沢の肩をぽんぽんと叩いただけだった。
だが、友沢もそれを受け、険しい表情を解く。
沼倉さんは今回初めて、同じチームになったが、友沢は、この人とも親しい仲にあるのだろうかと友沢の顔の広さにひっそりと感心する。
「宇佐さん……大丈夫……?」
俺は、それほど表情を変えることなく、状況を眺めていた宇佐さんに、恐る恐る確認する。
「大丈夫です…… 私はすでに殺しているんです…… 今更、四が五になろうが大きな違いはないですよ」
「っ……」
何と言ったらいいかわからなかった。
そうだね、か? そんな悲しいこと言うなよ、か? どちらも相応しい言葉とは思えなかった。
しかし……四が五ってどういうことだ……?
「お気遣い有難うございます」
そう言うと、宇佐さんはスタスタと少し離れたところに行ってしまった。
「……なぁ、水谷……」
俺は水谷のいる場所に、足を運び、珍しくも自分から彼に話しかける。
「お? どうした?」
水谷も珍しく感じたのか、俺に話し掛けられたことに驚いたような反応だ。
「宇佐さんはミッション2でも誰かを撃っちまったのか?」
俺はミッション2で俺とは別チームだった宇佐さんについて、宇佐さんと同じチームだった水谷に尋ねる。
「…………え? ……どうだったかな…………そんなことはなかったと思うが……」
「……」
「……宇佐さんがどうかしたか……?」
「いや……」
「俺もミッション1で意図せずではあるが、一人、手に掛けてしまっている…… 自分で言うのはどうかという気持ちもあるが、仕方なかったと思うしかないんだ。今回の件も……」
水谷は宇佐さんを
「そうだな…… とりあえず有難う」
◇
「早速で悪いが頼む……」
「はい……」
日比谷が宇佐さんに再び依頼をする。
宇佐さんはそれを受け入れ、メインストリートの真ん中に立ち、掌を前に向ける。
次の瞬間、掌の先にある通路のガラスや壁が派手に破壊され始める。
宇佐さんは衝撃波を誰もいない通路に放ったのである。
カマキリの襲撃の後、簡単な作戦会議をした。
まずは、キメラが擬態して待ち伏せをしている可能性が高いことの共有だ。
そして、相手が動いていれば、木田の空間察知で検知することができるため、この場から動かなければ、差し当たっての危険度は低いということ。
しかし、それでは、ジリ貧で、最悪の場合、時間切れになってしまう。
故に先制攻撃を叩き込む必要があるということだ。
それに最も都合がいいのが、宇佐さんが先刻、林さんから獲得した衝撃波であったということだ。
宇佐さんがメインストリートに衝撃波を放つと、こちらの目論見は成功する。ギィギィと異様な奇声を発する巨大なカマキリが六体、姿を露わにする。
予想通り、カマキリは臨戦態勢になると擬態を維持することができないようだ。
突然の痛覚への刺激に混乱したように、真っ直ぐとこちらに襲い掛かってくる。
「こうなっちまえば、でかいだけのカマキリだ!!」
「倒してやるヨ!」
沼倉さんと王さんが最初の一体を迎え撃つ。
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