08.M3-1
「……また同じチームだな」
白川さんのカミングアウトのミーティングの後、友沢が話しかけてきた。ミーティングは少し前のことを思い返しているうちに終わっていたようだ。
「そうだな」
としか言いようがない。
ミッション3のチームメンバーは日比谷部長、水谷課長、木田課長、平吉、宇佐、友沢、林、王、早海、沼倉、茂原そしてミーティング後、すぐに立ち去ってしまった白川さんだ。
かなり強いメンバーが集められている。自分も含めるのが恐縮だが、前回のトップ5である平吉、宇佐、日比谷、水谷、林が全員いるというのは、やり過ぎな気もする。
ただ、白川さんという死んだら全員巻き込む爆弾と、早海さんというハンデを抱えていることを考えると、プラマイゼロということだろうか。
今回、初めて同じチームになるのは沼倉さんと茂原さんだ。
沼倉さんは、体格のいい男性だ。結構歳がいっていたはずだが、マラソンやバイクなどの長距離系のスポーツをやっていたらしく、肉体強化されたことで一層、生き生きとしている。
茂原さんは、落ち着いた雰囲気の女性だ。四天王ほどの美人ではないかもしれないが、四天王にはない武器を持っている。その雰囲気とは裏腹に落ち着いていない胸部により、顔より胸という、ぶれることのないポリシーを持った男性からは四天王を超える評価を得ていても不思議ではない。
「今回は宇佐さんもいるから心強いな」
「そうですか?」
俺がそんなことを呟くと、友沢の後ろに隠れて見えなかったが宇佐さんもひょっこりと現れる。その淡々とした様子を見て、なんとなく安心する。
「ミッション2での宇佐さんの活躍はすごかったぞ」
「おっ?」
さらに後ろからニューフェイスが現れる。
「これはこれは水谷課長殿じゃありませんか」
友沢が煽るように突如現れたイケメンに言う。
水谷だ。水谷は友沢と俺と同期でありながら、すでに課長職についている有能イケメンである。
「その呼び方は止めい」
水谷は苦笑いしながら流す。友沢はなんだかんだ言って、水谷とも仲が良い。と言うと俺と水谷が不仲のように思われるかもしれないが、決して関係が悪いわけではない。
「だが、まさかあの宇佐さんをまたも上回ってくるとは、平吉には正直、驚いたわ」
こんな風に水谷は素直に他人を讃えてくる。余裕の表れなのだろう。
「悔しいです」
宇佐さんも俺を立ててくれている……のだろうか。
「次回は同じチームみたいだから、よろしく頼むよ。不謹慎かもしれないが平吉が、どんな戦い方をするのかには興味があるよ」
「おぉ……」
俺もゲーマーでもないのに二回連続上位にいた水谷がどう戦うのかには多少、関心があったので同じだ。
「それにしてもよぉ、白川さんがファシリテイターだったなんて……正直、ショックだわ。色々とよ、騙されてたんだな」
友沢がフレッシュなニュースを早速、ピックアップする。
「色々と不明瞭な部分も多いが、白川さんが人の命の尊厳になんら関心がないのは確かだね」
水谷が真剣な顔つきで何やら難しいことを述べる。
俺は最初に知った時、きっと大変な思いをしてきたんだろうなと感じた。二回も命を救われたという補正もあるかもしれないが、人によって、考えることがこうも違うのだなと思う。
「だ、だがよ……水谷、白川さんにも何か事情が……」
「104……この数字がわかるか? 平吉……」
「……っ」
「104人……1回目のミッションで外に出なかった人の数だ……彼女は104人殺したんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます