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女は下腹部に重みを感じて目を覚ました。重いまぶたをこじ開けると、真っ先に視界に飛び込んできたのは、闇の中にぼんやりと浮かび上がる、白い女の顔だった。薄い笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。
心臓が凍りつき、一瞬遅れて、それが能面をつけた男であることに気がついた。自分の上に馬乗りになっている男が黒い服を着ていたせいで、闇の中に女の顔が浮かんでいるように錯覚したのだ。
気がついたと同時に、先ほどとは別種の恐怖が込みあげてきた。
次の瞬間、男の手が女の首を締め上げ、喉まで出かかった悲鳴を圧し潰した。
女の身体が酸素を求めてもがく。
充血し大きく見開かれた彼女の瞳には、薄笑いを浮かべる白い女の顔が映っている。木製のベッドが彼女の代わりにギイギイと耳障りな悲鳴を上げた。女の視界が徐々に狭まっていき、身体が痙攣し始める。
と、男が腕に込めていた力を緩めて女の首から手を離した。
女は激しく咳き込みながら、大きく口を開けて肺を酸素で満たした。視界が元に戻り、痙攣も止まる。
だがそれもほんの一瞬のことだった。
男は再び女の首を締め上げた。そして女が意識を失う寸前に再び手を離した。締めて、緩めて、締めて、緩めて、…。男は何度も何度も執拗にそれを繰り返した。
男は自分の掌の中で、女の命のともし火が明滅するのを楽しんでいたのだ。
もういっそのこと殺してください。女にはそう懇願する気力さえ残っていなかった。人体に備わった忌まわしい生存本能によって、辛うじて死んでいないだけだった。
どれほど時間が経っただろうか。女はようやく望むものを手に入れられた。彼女の意識は深い闇の底へと落ちていった。
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