ごった煮ショート×ショート

いとう

【会話劇】たむろするのは喫煙所と大学生

タ「火のないところに煙はたたないって、あれはホントなんだよ。まったく、ほんとうに。」


キ「煙があるからといって、かならず火があるものかな。そもそも煙の定義は?」


シ「焼けぼっくいに、火がついたりする例もあるぞ。ありゃ、煙が見えないからタチが悪いんだ。」


タ「ばか、まぜっかえすな。煙の定義なんか猫にでもくわせとけ。あいつらはよく室外機の下なんかにいるから、なまじ俺たちより詳しい。」


キ「定義もわからないのに、実在、非実在の話なんてナンセンスだよ。生産性がない。」


シ「それに煙なら、オレたちだって負けず劣らず吸ってるねぇ。ニャンコ先生はお呼びでない。」


タ「ほんとに、揚げ足を取るのがすきだな。一酸化炭素で頭がやられたんじゃないか。肺だけじゃなくて、腹まで真っ黒だ。」


キ「あんまりうまくないね」


シ「キシリに1票。これで2票。」


タ「残念ながらここの喫煙所は直接民主制なもんで、人数不足により議会はひらかれないね。メグロとショウジがきていない。」


キ「あれ。5人中、3人がきてるから過半数は満たしてるけど。」


タ「残念ながらおれはここの喫煙所の国民じゃないんだ。よって4分の2で、決はとれない。悪いな。」


キ「国民じゃないのなら、不法侵入でここから追い出してしまおうか。」


タ「おっと、わるい。おまえがくる前までは国民だったんだ。そのときはまだ俺しかいなかったし、法よりも人が支配する時代だったから、おれだけ不法侵入罪が問われないという法案をとおした。」


キ「都合いいなあ。それでも、僕たちには帰らない人を帰す権利があるはずだよ」


タ「残念ながら、不退去罪もおれには適応されないんだ。ガハハ、わるいな。」


キ「タジリくんは勝手だねえ。ねえ、シマくん。」


シ「キシリに1票。これで全会一致。」


タ「あ、おい。かってにメグロとショウジの分をいれるな!いないからって、ズルイぞ!」


シ「国民じゃない人間には発言権がないからきこえないね。きこえない、きこえない。」


タ「おっ、そうやって煙に巻くつもりだな!」


キ「やっぱりうまくないね。」


シ「キシリに1票。」


ここで三人は、大きくタバコの煙を吸いあげる。

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