第9話:だが断る!

「クトラ。何で初めから全力でいかなかったんだ?」


「ん。思い知らせた」


「そ、そうか」


「疲れた。今日はもう寝る」


「分かった。女子寮まで送ってくよ」



--次の日-- 朝


昨日の試合で確信した。

クトラは磁場を操っている。ゴーウェルさんは雷と言っていたが雷というより磁力だ。強力な磁場を操り、N極とS極を空間及び自分に発生させて磁力で押し出したり、引っ張られたりしてあの驚異的なスピードを出している。身体のコントロールが難しい上にあのスピードだ。相当訓練したのだろう。そしてクトラは詠唱しない。魔法はイメージが大切だ。上手くイメージが出来れば詠唱は必要ない。詠唱をすれば威力が増すと授業で習ったが、クトラには必要ないのだろう。教えてくれる師もいない中でクトラは本能でそれを行っている。端的に言えば天才だ。


そんな事を考えながら1組の教室に入るとクトラに人だかりが出来ていた。


「クトラ様!是非私とお友達になって下さらない?」

「眠り姫よ。我が家の従士になってくれないか?」

「クトラさん!拙者をおんぶ係に任命して下さらぬか?」


昨日の1戦で更に注目を浴びることになってしまったクトラ。

大丈夫かな?俺が声をかけようとすると


「うるさい。散れ」


憧れもあるが畏怖もあるのだろう。クトラの冷たい一言に人だかりは一斉に散った。

こっちに気づいたクトラは俺におはよ。と言うと寝てしまった。


「あいつどうやってクトラさんと仲良くなったんだ?」


「クトラさんの強さを見抜いて有名になる前に口説いたらしいぜ?」


見抜いてないし、口説いてない。これだからTHE・貴族は・・・

申し開きをしてもしょうがないので放っておこう。



--Cクラス 食堂 昼


俺は1人Cクラスの食堂に来ていた。

バリスとジレッドは・・・・・・いた。


「あれ?エラン君。どうしたんですか?こんなところで?ここはCクラスの食堂ですよ?」


「バリス。彼は昨日の件で全男子生徒を敵に回してしまったからね。ボッチなのさ。それで僕たちに慰めて貰おうと思ってるんだよ。察してあげよう」


「ボッチなのは初めからだ。改めて昨日の実況に物申したくてな」


「あれは場を盛り上げるためでしょう?」


「盛り上げる必要が何処にあるんだよ?誤解も生まれてるんだぞ?」


「決闘なんてお祭りみたいなもんじゃないですか。人の噂もすぐに落ち着きますよ。ねぇ?ジレッド君」


「いや。昨日は言い忘れていたが、残念イケメンは確かに聞き捨てならない」


「自分の紹介はポンラちゃんの恋人だもんな?全然盛り上がる要素ないじゃん」


「失礼ですね!学園のアイドル・ポンラちゃんですよ!?盛り上がるに決まってるじゃないですか!自分もブーイング覚悟で身を削ったんですから!」


「・・・ブーイングは全く起きなかったけどな?」


「「「・・・・・・・」」」


「大きな声だしたらお腹空いちゃいましたね。何か注文しましょう」


「そうだな」


「そうだね」


そんな感じで3人で食事を摂っていると遠目に黒い制服が視えた。

人の事は言えないがBクラスの奴がここに来るなんて珍しい。

そんな事を考えてるとそいつが近寄ってきた。


「やっと見つけた!なんでこんな所にいるのよ?」


そいつは猪突猛進女アーシャ・ブリジットだった。

生徒は平等とか言ってたし、もう敬語の必要はあるまい。


「俺が何処にいようと勝手だろ?」


「エラン。彼女に失礼だろう?どうしました?レディ。僕で良ければご用件を聞きますが?」


「貴方には関係ないわ。私が用があるのはアルハートよ」


ガーンという音が聞こえそうな程にジレッドが俯いてしまった。ちょっと可愛そう。


「ようやく俺の名前を覚えたか?」


何故かセカンドネームだが。


「嫌でも覚えるわ」


「で、何の用だ?」


「私と決闘しなさい」


「は?」


ぶっ飛んでるなこの女。


「クトラの件は昨日の決闘で話はついただろ?」


「眠り姫とはついたわ。でもまだ貴方とはついてない」


何言ってんだこいつ。


「貴方がおぶらなければそれで解決するのよ」


「てか先生に報告するんじゃなかったのか?それで解決だろ?」


「先生にはクトラさんは体質だから大目に見ろって言われたわ。でも私は風紀委員として見過ごすわけにはいかないの」


「仮にそうだとして俺がその決闘を受けるメリットはない。お前に勝って俺に何の得がある?クトラは意地になって決闘を受けてたが俺は決闘を断る事が出来るお・と・な・だ」


「じゃあ貴方が勝ったら貴方が言う事を何でも1つ聞いてあげる。それでどう?」


何でも・・・・・・だと?


「ここまで女の子に懇願されているんだから受けてあげたらどうですか?エラン君は負けてもクトラさんをおぶらなくなるだけ。それにワンチャン勝てたら何でも言う事を聞いてくれるらしいですよー?グヘヘヘ」


手をモミモミしながら何を言ってるんだお前は。

その下品な笑みをやめろ。


「ちょ、ちょっと待って。その・・・エッチなのはなしよ」


アーシャは恥ずかしそうに顔を手で覆いながら赤面した。

やはり何も考えてないな。ちょっとからかってやるか。


「おっと?辺境伯家の娘が1度言った事を違えるので?アーシャ様の風紀委員の志はその程度だったのですか?」


「ち、違う。前言撤回よ。貴方が勝ったら私の身体を好きにすればいいわ。でも私は貴方に負けるつもりなんてないわ!」


だろうね。俺も勝てる気しないわ。

そもそも俺がおぶらなくても、クトラが他の男におぶってもらったらこの決闘は意味がなくならないか?

・・・それを説明するのも面倒くさくなってきた。


「そうか・・・だが断る!」


「なんですって!?あっ!待ちなさい!」


俺は逃げた。

てかこいつの風紀委員としての高い志はなんなんだ?

ちょっと異常過ぎるだろ。



--Bクラス寮 夜


今日は疲れた。

昼に猪突猛進女に絡まれるし。

クトラに1人でCクラスの食堂に行った事怒られるし。

さっさと寝よう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・


気づくと俺は真っ白な世界にいた。ここは?

いや。見覚えがある。


「よう!久しぶりじゃの。モブよ」


そこには金髪チビロリ女神がいた。

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