第2話:プルプルした物
お菓子ねぇ。うーん。
唯一この世界に来て後悔したところを上げると料理だ。
この世界は料理が不味い。さすがに今は慣れたけどやっぱり日本の料理は最高だった。という事はそれに比例してお菓子も大した事ないに違いない。
そもそも砂糖が高いからそこまで発展してないような気もする。
この世界で作れて俺でも出来そうなお菓子・・・。
--2日後 食堂 昼
食堂へ行くとクトラは相変わらず焼き菓子を食べていた。
こいつよく菓子ばかり食べて太らないな。てか栄養大丈夫なのか?
まぁいいかそんな事は。
「待たせたな」
(だれ?)
・・・こいつマジか。
「エラン・アルハートだ!2日前にお菓子の話しただろ?」
クトラは少し考え込むとポンっと手を叩いた。
(三男)
「おい!そこは覚えてんのか!まったく・・・まぁいい。お前の度肝を抜くお菓子を用意したぞ」
俺は手に持った皿をクトラの目の前に置いた。
(なにこれ?プルプルして気持ち悪い)
「フッフッフ。驚いただろう?これはプリンだ!!」
(プリン?)
「そうだ。これを作るのに俺がどれだけ苦労した事か」
この世界にも牛乳と卵は普通にある。しかし問題は砂糖だ。これがめちゃ高い。
今回は手持ちで何とかなったが、もうすっからかんだ。そして問題はどうやって冷やすか。氷属性の奴なんて知らないし、ましてや氷なんかない。まさか地下を掘るハメになるとはな。
(スライムみたい)
「いいから早く食べろ!温まったら不味くなるんだよ!」
クトラは少し怪訝そうな顔しつつもスプーンを手に取りプリンを口に入れた。
「ん。美味しい」
「だろ!?」
「ん!」
クトラのスプーンは止まる事を知らずにプリンをペロっと平らげてしまった。
あれ?今喋った?
「ん。おかわり!」
「ねぇよ!」
「・・・ケチ。三男」
「ケチじゃねぇ!俺は貧乏男爵の三男だからお前みたいに金がねぇんだよ」
大商人の娘の金銭感覚はどうなってんだ?そりゃ毎日焼き菓子が食えるハズだ。
「ん。だったらお金渡す」
「いや。そういう問題じゃないだろ?というか約束は守れよ」
約束という言葉に一瞬キョトンとしたクトラ。
あっ!と思い出したような顔をした。
本当にこいつは。
「ん。しょうがない」
いや。しょうがなくはないだろ。
■■■■
試験当日
俺は学園の敷地内にあるダンジョンに向かった。
クトラは・・・来てない。まさか寝坊したんじゃないだろうな?
「お待たせしましたー」
元気な声をかけてきたのは薬学を担当しているソフィア先生。
男子生徒の間で人気の美人教師だ。今回の試験担当。
「あっ!」
ドシャ!
石に躓いてピンクの髪を揺らしながら盛大に転んだ。
胸が大きすぎてバランス取れてないんじゃ?
とは言えない。
「ん。痛い」
よく見るとクトラも一緒に地面に伏せている。
どうやらソフィア先生がおぶってきたようだ。
「大丈夫ですか?クトラさん!」
ソフィア先生はあわててクトラの身体を起こした。
パッパッと土埃を払う。
「遅れてすいません。エラン君。クトラさんがなかなか起きなくて」
「いや。それは先生のせいじゃないでしょ?」
相変わらず生徒に甘い先生だ。
「というかありがとうございます。クトラをわざわざ連れて来てもらって。俺じゃ女子寮には行けませんから」
「いえいえ。今回の試験担当官ですし、何よりエラン君が張り切っていたので。これぐらいはお安い御用です!」
と、2つの山を揺らしながら胸を叩く。
2つの意味でありがとう。
「ん。三男。持って来た?」
「あぁ。言われた通り作って来たぞ」
俺は瓶の中に入れてあるプリンをクトラに渡した。
何故か試験当日に作って来いとお金を渡されていたのだ。
「ん。でかした」
「それはどうも」
クトラはペロっとプリンを平らげた。
「では早速行きましょうか」
ソフィア先生の後に続いてクトラと共にダンジョンの中へ入った。
ダンジョンの中は俺が想像したとおりに洞窟の中のようだった。
作られたダンジョンの為かやけに明るい。冒険者になったようで俺は少しだけワクワクしていた。
ここでこの世界のモンスターについて説明しておく。この世界では魔物は魔法生物に分類されており、倒すと灰になり魔石を落とす。この魔石は灯りを点けたり、飛空艇の浮力等に使われており用途は様々。消耗品なので需要は高い。魔物は主にダンジョンと呼ばれる魔素が高い場所にしか存在しない。倒してもしばらくすると魔素が高いので蘇るようだ。
次に魔獣に分類されるモンスターは元々存在していた生き物が瘴気の影響によって変化した者を魔獣と呼ぶ。倒してもそのまま残るので武器や防具の材料になったりする。
簡単に言うと
ダンジョン=魔物→魔石落とす
外の世界(瘴気の濃い場所)=魔獣→材料落とす
あとは魔族についてだが説明が長くなるので今はやめておこう。
「足元気をつけてくださいね」
ソフィア先生は引率というよりガイドさんだな。
湿気を帯びたダンジョンをしばらく進むと前方に小柄な人影が1つ視えた。
「コボルトだ」
この世界ではゴブリンに似せた魔法生物だと言われている緑色の醜悪な小鬼だ。
魔物図鑑で読んだことはあるが実際に見るのは初めて。
アルハート領では弱い魔獣を相手に訓練していたが殺意のある人型とは戦った事がない。コボルトの戦闘力は小さな子供が武器を持っている程度で高くはないと言われているが群れると厄介な相手だろう。
ここは慎重に行くべきだな。
俺が剣を構えようとすると
バチッ!と電気が走るような音がした。
ドサッ!
「え?」
コボルトを見ると立ったまま首から上が無くなっていた。
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