第126話

「ああ、地上に降りるのはいいかもね。その後……」

「美味しいものいっぱい買ってくるね!一緒に食べようね」

その後から離れて暮らそう。そういう前にりんなが言った。

「もう大丈夫だって。1人で大丈夫だよ」

「みことが心配だから神の国にいるんだよ?そうじゃなきゃ地上に帰らないと。多槻さまに任せっきりだもの。帰った方がいいの?」

今神の国が少しずつ仲良くなってきてるのはりんなのおかげだ。だから神の国から居なくなるのは痛手すぎる。

「いや、まだりんなが神々と仲良くしてくれてると仕事しやすいから……居なくなられると困る、な。うん」

「じゃあ一緒でいいでしょ?ご飯だって一緒の方が美味しいし」

もう無駄だと思った。負けた方がいいと思った。みことは純粋無垢に負けたのだ。

「分かった。1日地上に帰るのか?それとも長く?」

「1日。明後日他の神と約束してるの。長居できないもん」

りんなはにこにことしていた。まあそれで神の国の安寧が得られるならいいかなと諦めていた。自分がしっかりしないととみことは自分の両頬を叩いた。

「どうしたの?」

「気合い入れようと思って。まあ、オレひとりでも大丈夫だから早くいけよ」

りんなは自分の部屋の鍵を渡した。私が居ない時開けられないでしょ?と。みことは自分の部屋に帰るからと言ったら、お風呂もキッチンも作った部屋なんだから!便利なのよ!だから1日私が居ないだけなら使うべき!などとくどくど怒り出した。

「……わかった。帰ってくるまで待ってるから。行ってらっしゃい」

「はーい、行ってきます」

みことは少しソファに座った。ずっとこんなままごとしてる訳にはいかない。そう考えてたら、りんなが再び帰ってきた。

「み、みこと、覚えていた?神に捧げる踊り……結局踊り子が怪我したまんまだから……私が踊ることに。みにきてね」

そうだった!忘れてた!そう思って雅臣に伝えた。

「凜菜さんが踊るのなら、凜菜さんと普段付き合いがある神も地上に来てもらいましょう」

その年の踊りは華やかで素晴らしかった。でも踊り子が居ないから縮小しようと言ってたのに、突然踊り子が乱入して踊り出した。他の踊り子も参加して何とかいつものように出来た。

「こんなに神々が来て下さるのは有難いです。本当にいつもありがとうございます」

トティランカの王ニノが堂々とみことに話しかけお辞儀をした。

りんなは慌てて衣装を外して見ていた素振りをした。息は上がっていたが、達成感はあった。

その日はりんなは地上に残り、みことはひとりりんなの部屋に戻った。

「ただいま」

誰も居ないがいつものように言ってしまう。自分の部屋に帰っても良かったが、りんなに怒られると思ってりんなの指示に従っていた。

「……広いな。ひとりだと」

ソファにすわってうつらうつらする。神への舞が終わったあと地上は祭りになる。神々は神の国にもどった。みことはその後いつものように仕事をしていた。

「確かにひとりだと何もしたくないな……」

ソファに寝そべり寝ようとした。怒られるなと思ったが、ソファに吸い込まれるようにそのまま眠りについた。

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