■ 32日目~入院生活中に交わす「久しぶり」と『キター!!』~■
「久しぶり!」
僕の隣にいただぁ君に挨拶をする。
「知っているの?」
たまらずだぁくんに聞いた
「前の入院で一緒だったんだ」と。
数日くらいだろうか。
60~70歳代のおばさん集団の中でご飯を食べ、何もする事の無い午後はそこで会話を楽しんでいるように見える。
一人ズバ抜けたお洒落な服装で。
違和感でしかない。
4日目5日目。
「あれ?」
色のトーンが大人し目な服に変わり、大きな丸いレンズの今どきのメガネ姿にもなった。
それでもデザインは十分お洒落。
黒やグレー、地味な色の服や入院患者パジャマ姿の患者の中で一際彩やかに目立つ。
相変わらず、気に食わないと老犬の⚫⚫さんは誰彼構わず吠える。
細かく細かく切っている「作り手の意図」を把握した上で早食いの私が誰よりもゆっくり食べていると「遅い」と難癖を付けてくる。
だぁくんと⚫⚫さんは2人で仲良く歳の離れた親友の様に冗談をだぁくんに飛ばしている。
サキは相変わらず、言われた事をその場で「分かった」と言っても翌日にはやろうとも3日坊主にもならない。
30~40歳で早から出来上がったツマラナイおばさん達は、意思を持たない歳の近いもの同士で仲良くオバサンと化している
くりりん君は、相変わらず私の横で昼飯時に一緒に冷や奴や納豆を食べている。
窓から、何処までも雲と可能性が伸びる澄んだ夏空の下、近所に住んでいるであろう小さい子どもの暑い夏や湿度にも負けない元気な大きい声が聞こえてくる。
また、ある夜、窓の外から近隣の保育園施設から打ち上げ花火が上がる。
何だかんだはあるし、住めば都でも無い。
都では無いが、それでもここで暮らさないといけない。暫くは。
そんな中、自室にいるのか。数日フミを食堂フロアで見かけなくなる。
その週末。金曜日のカラオケでは1曲目は、僕が聞いていて気持ち良い曲を歌う。
時折、こんな生活の中でもだぁくんと卓球を楽しむ。
時折、見かけない人達が他のフロアや隔離部屋から「これ誰?」という人達が押しかけるように増えている
そして、また週末を迎える。
テレビの前で一人髪の長い10だいの女の子が誰とも話さずカミを触りながら、「手持ちぶたさでやっているのか?」「話しかけれるのをまってるのか?」「テレビを見ることに集中してようにも見える 」「が、結果話しかけられにくくもなっている」
「それとも、話しかけれないようにしているのか?」
「さて、正解はどれだろう?」
週末の3日間、彼女はテレビの前でずっと集中しながら髪を束にながら伸ばしてる。
僕も暑いから、冷奴たべたり、もずく食べたり、納豆も食べたり、カラシやわさびチューブも使ったり…。
相変わらずクリリン君はピタッと横の席で同じものを差し入れで持ってきて貰って食べているし、「おいおいコイツ大丈夫か」
と、そう思っていたら、週明けだったか。
2人の女の子が「え?この人マジ?」と、面白そうな表情で向こうから僕のところに来た。
部屋から出てきたフミとこの間見かけたばかりの髪の長いユー。
これでボクのこの生活での大事な仲間が全員出揃った。
ここから、この入院生活は急激にシフトする。
不条理で理不尽な事は毎日何処かかんかで出てくるんだけれど、この夏、いや、一生経験することの無い「永遠の終わりたくない夏」。
ハードでタフでそれでも泣くくらい悲しい現実も。
オカシナ生活の中で、オトナにならなかった僕への神様からの甘酸っぱいプレゼント。
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寝る時以外四六時中ずっと一緒。
3人の女の子とオトナにならなかったオレ。
『本当の夏』が今から始まろうとした。
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