白い牢獄
『言の花の侍』ハナフサ ~刺すか咲くか
美しい掃除 ~得ると失う。失うと得る~
■29日目 ■
1人部屋に移って気が楽になった。
同部屋の源さんにカーテンの事で気を使わなくて良い。同じ東側の部屋。
1人部屋だから、狭く窓も小さい。
その為なのだろうか。
何故か部屋のコンクリートの壁が異様に寂しく感じ、冷たい。
大きく、陽の光を部屋に取り込められないだからだろうか。
この間までいた相部屋では朝食後、ベットの上でヨガのポーズを取ったり、上半身裸になり、身体ごと窓越しに陽の光を当てていた。
シーツ交換は毎週月曜日。
その間シーツは汚れていても汗をかいても変えられない。布団も干せない。
シーツや布団や枕。
陽に当て日光で消毒。
食堂フロアで自転車を漕いだりもしているのだが、制約の多い入院生活。
午前中は1人でいても入院患者の皆に見せていなくてもやる事は多い。
1人部屋でも。
入院生活中、掃除はやらなくて良く、午前中部屋の前にゴミだけを出すと後は、リンネ係兼掃除の職員さんがやってくれるのだが、しっかりやりたい時は掃除は自分でやった。
この部屋は何か仰々しい。
床を拭いた。壁も雑巾がけをした。
掃除担当の職員さんに1人部屋生活中、何枚も雑巾を借りた。いや、貰った。
「2階だけ雑巾の枚数が無い」と言われた。
何度も拭いた。何枚も使った。何枚もダメにした。
汚れて返せない程掃除をした。
要らない荷物も何度も整理をした。
使わなくなった物も何度も捨てた。
その結果、スッキリとした。壁は古いままだが、美しくなった。
袖を振り合う機会が増えて、掃除の職員さんとも仲良くなった。
入院生活も中盤に差し掛かってきたその日の夜だっただろうか。
日を周り、午前を迎えた頃、静寂な住宅街を割いて普段以上にけたたましく救急車のサイレンが鳴り響いた。この病院に着き、音が消えた。
確か、あの日も天気が悪かったんだっけ。
夢では無い現実のキャンパスの中に、鮮やかでコントラストに自分の記憶の中で何かが描かれた。
事件は本人のいない所や夜に起こるものなんだけれど、自分の知らいないところで何かが始まろうとしていた、
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