この空のどこにいようと。

十南 玲名

プロローグ

 夜の教会は清閑で、誰もいない。それはこの国の国教、【ミディカ教】も例外ではない。いつもであれば、暗い夜が明け、子供たちが踊り出すのを物静かに待つだけだった。そう。いつもであれば。

 暗闇の中、蝋燭の炎が一つ揺れる。金銀妖瞳の彼女は夢を見たのだ。真っ暗で、背筋が凍るような夢を。

「ミディカ様。この国で一体何が起ころうとしていると言うのですか…? 邪霞を生む者の誕生とは一体…?」

 彼女の問いかけに、神は答えない。自分を取り巻く蔦の収縮を感じたように思えて、彼女は身震いをした。

 ステンドグラスから差し込む月明かりが祭壇を照らし出す。

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