Pre Mission 嫁入り
命は有効に使いなさい。今日お前がこんなくだらないことで死んでしまってはご先祖様に顔向けができない。だからようく反省するんだぞ。
わたしが
しかしもう
わたしはちゃんと、この命の使い道を決めたのだ。
「顔をあげよ、
冷ややかな声がわたしを呼んだ。
大丈夫。わたしの命の使い道は、とっくのとうに決めたのだ。
「……はい」
顔をあげて最初に見たのは、この世のものとは思えないほどに
黒というよりは
いや、軍服が似あうのはあの
ほんの少しの
「
「
男は帝都で一、二を争う
だん! という
ぞくりと背筋を震わせるような双眸がこちらを見おろしていた。それはもはや殺気だった。花嫁に向ける
「俺が
正直、怖くないと言えば
それでも、
悠臣は小さく舌打ちし、
「これからよろしく
口とは裏腹によろしくするつもりなんてまったくなさそうな
わたしは頭をさげたままそれを見送り──内心でくすりと笑ってみせる。
(ばれてない……わたしの勝ち)
一人になった部屋で
(ばいばい、わたしの旦那様)
もう二度と会うことはないだろうけれど。
悠臣に別れを告げて庭園へと飛び降りた。部屋は二階。赤い
立ちはだかるのは、青灰色に
その
「有栖川美緒を
え、わたし? ──思わず一度立ち止まり、声のしたほうを振り返る。
二人の男が日本刀を構え、悠臣と
どくりと心臓が脈を打つ。
悠臣は
(助ける?)
一瞬よぎった考えを、しかしすぐに否定した。
助けてしまってはばれてしまう。だから
言い聞かせて
悠臣の
「
強い殺気が噴きあがった。高く
「まだここで死ぬわけには」
ぽつりと悠臣が
「なっ……」
「こいつ、有栖川美緒だっ」
背後から声がした。もう一人の男がいつの間にか回り込んでいる。
「捕まえ」
飛びかかってきて抱きつき、勝利を確信したようににやりと笑い。
「た──あ?」
ごんっ。背後から後頭部をひと
首筋にひやりと冷たいものを感じたのはそのときだった。
「っ……!?」
悠臣がわたしを
殺気を、
そのうえ
(というかこの人、自力で解決できたんじゃっ)
気づいたときにはもう
「お前、何者だ。有栖川美緒ではないな?」
ばれた。一気に血の気が引いていく。
伯爵
(いや、わたしは身命を賭すと……命の使い道を決めたじゃないか)
殺すなら殺せばいい。
覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じたときだった。
「いや、誰であっても構わない」
耳元でくすりと笑う声がして、
悠臣が──夜叉子と
「お前、俺の嫁になれ」
「…………はい?」
しかしそのときのわたしはといえば、この
なぜならば二度目の求婚は……今度こそ本気だと、わかってしまったから。
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