ハンチング探偵と学校のミイラ

@mayoinu

第一話 遺体

2025年9月


解体屋の男は、重機で旧校舎を取り壊していた。日焼けした太い腕が慣れた手つきでアームを操縦する。


児童たちは校庭に建てられたプレハブ校舎で授業を受けている。今朝方、様々な色のランドセルを背負った子供たちが正門から入ってくるのを見て、(俺が子供の頃は黒と赤だけだったのにな)などと時の流れを感じた。


既に内装撤去は済み、外装もほとんどが撤去され、もうすぐガラ撤去の段階に入れそうだ。


男は昼休みに何を食べに行こうか考えていた。男は夕焼け小学校が建っている夕焼け町から二三離れた町に済んでいて、今朝も仕事道具を車に積んでこの町までやってきた。だから、この辺の店には詳しくない。


せっかくだからチェーン店ではなく個人経営の店で食べたい。


「おい、うそだろ」


建物の基礎に近いところに、人の手のようなものが見えた気がする。内装解体のときには見つからなかったのだから、気のせいだろうと思いつつ、万が一を考えて重機から降りる。他の重機に巻き込まれないよう、周りに合図を送ってから瓦礫の中に歩いていく。


自らの勘違いであることを祈りながら、それを見かけた辺りへ行き、瓦礫の山に顔を近づけて目を凝らす。すると、劣化したビニール袋が裂けて、そこから乾涸びた、小さな子供の様な手が飛び出していた。


男は一瞬、体を硬直させた。人の死体と直感したからだ。しかし、それは割と茶色く小さな手だ。もしかして、動物の剥製ではないかと男は思い直した。


(頼むから動物であってくれ)


おそるおそるビニール袋の破けた部分を広げていくと、体育座りの状態で横たわる、乾涸びた人間の子供の死体が現れた。


男の喉から野太い悲鳴が絞り出される。男は瓦礫の山から転がり落ちるように降りると、死体が出たと親方を呼びに走った。

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