第32話 再び地上へ
一カ月後、満を持して、俺たちは地上に出た。
先発隊として地上に出たのは六人だ。
桐木勇人
御堂絵梨花
姫島加世子
中村麗亜
安田恭子
早乙女美香
全員がレベル50超えとなっていた。レベルが上がると身体にも変化が生じる。レベル15で髪が金色になり、レベル25で肌の色が白くなる。そして、レベル35で眼が青くなり、レベル45で女性は胸が大きくなり、男は筋肉がつく。
白人かっ、と佐竹が突っ込んでいた。絵梨花の件で険悪になっていた佐竹との仲は、ニーナのおかげで修復できた。佐竹はニーナに猛アタック中で、近々落とせそうだと言っていたが、ニーナに全くその気がないことは黙っておく。
ヒミカやカナが金髪碧眼で巨乳なのは、高レベルだからだった。ちなみにカナは俺たちの修行に付き合っているうちに、レベル80にまで上がっていて、ますます美しさに磨きがかかっている。
聖女やルミエールなどこちらの世界の人は、レベルの上がりが俺たちに比べてかなり遅く、まだレベル30前後であるため、安全が確認できるまでは、ダンジョンで待機してもらうことになっていた。
この一カ月間、エルフのダンジョンへの侵攻はなかった。恐らく地上で待ち受けているだろうと踏んでいたが、思った通りだった。
エルフの警官隊がダンジョン地区を包囲しており、俺たち六人が地上に出た瞬間に、様々な魔法を一斉に放ってきた。
「うるさくてかなわないな」
俺はそう言いながら、絵梨花の背後に回った。全員が魔法耐性を持っているが、絶対魔法耐性ではない。絵梨花が『ピンクシールド』を発動した。ピンク色の強力なお椀型の魔法シールドが全員を囲んだ。
絵梨花の魔法は色々とエッチで、「ピンクシールド」を発動中は、ずっと絵梨花の胸を揉んでいる必要がある。しかも、生乳だ。要するに、乳繰り合ってる間は、誰にも邪魔をされないためにシールドを出す、という仕組みらしい。
俺は夜の技もレベル50には行っていると思う。乳の揉み方にも年季が入っている。絵梨花が皆の前で声を出さずに懸命に我慢していると、職人としては、声を出させないと気が済まない。
鳴かぬなら、鳴かせてみようホトトギス
俺は豊臣秀吉の気持ちが痛いほどわかった。
だが、守っているだけではない。こちらからも魔法攻撃を始めた。小悪魔の加世子と魔女の麗亜が得意の魔法を放ち、美香が補助魔法で放たれた魔法の威力を増強させた。
シールドを張りながらなぜ攻撃魔法を放てるかというと、恭子が「ピンクシールド」に半透膜属性を付与しているからだ。恭子は魔法に様々なバイオ属性を付与することができるのだ。
半透膜にすることで、ある程度大きくなった魔法の粒子は通さず、細かい魔法の粒子を通すようになる。魔法は放った瞬間は粒子が小さく、時間とともに大きくなっていく性質があるため、外からの魔法は弾くが、中からの魔法は通すのだ。
加世子は精神系の魔法である「マリオネット」、麗亜は電磁系魔法の「マイクロウェーブ」を放射している。
エルフたちは大混乱だ。「マリオネット」で加世子にいいように操られ、同士討ちを始めるものが相次いだ。麗亜の「マイクロウェーブ」は金属嫌いのエルフには実に効果的だ。金属以外は透過して、分子を振動させ、高熱にするからだ。
エルフの警官隊が全滅するまで、三分もかからなかった。その間、絵梨花は声を出さずに耐え抜いた。
「ねえ、桐木くん、いつまで揉んでるの?」
「ああ、すまない。もう終わっていたか」
「あの、嫌って意味じゃないのよ。みんなの前では恥ずかしいんだからね」
「分かっている」
他の女四人は俺たち二人のいちゃつきを半眼で見つめていた。「ピンクシールド」を発動すると、いつもこの空気になるのが欠点だ。
「索敵には一人も引っかからないが、いつ転移してくるから分からないから、気を引き締めて行こう」
俺は空気を変えるために大きな声を出した。
しかし、エルフたちもよくやったものだ。見渡す限りの焦土だった。草木一本も生えていない。
「やっぱり転移は阻害されているみたい」
転移が出来る美香が転移を試したようだ。ただし、美香は単独でしか転移は出来ない。全員を転移させるには聖女に依頼するしかない。
「予定通り、ドワーフの国に渡るぞ。さあ、魔燃車に乗ろう」
魔燃車は魔石のエネルギーで走る水陸両用車だ。道具師の小百合が製造した。魔石は原子力をはるかに凌駕するエネルギーで、ほんのひとかけらで、百年は走り続けることが出来る。しかも、放射能も出ない安全でクリーンなエネルギーだ。
聖女とルミエールも呼んで、八人で魔燃車に乗り込んだ。魔燃車には「マネージャ」という駄洒落めいた名前を小百合がつけたのだが、誰もその名前では呼ばない。小百合に負けた気になるからだそうだ。
俺は最初の頃は「マネージャ」と呼んでいたのだが、小百合以外は誰も反応しないので、いつしか呼ばなくなってしまった。実は小百合とは話がよく合い、意気投合し、懇願されて遂にはやってしまった。
そうなのだ。小百合は実はすでにファミリーになっていた。小百合が魔燃車の運転席に乗り込んだ。
「ドワーフの国境に向けて、いざ出発っす。ルミさん、ナビ頼みます」
「はい、任せてください」
小百合に請われて、ルミエールが助手席に移動した。
魔燃車はホバークラフトのように地面に浮いて移動する。装甲は戦車以上に厚いが、時速は300キロを軽く超える。
「小百合マネージャ出ます」
ガンダムが出る時のやつだ。小百合とは本当に趣味が合う。
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