♯27 白河さんは取られたくない
「
「二人で何してるんですかー? ラブラブな雰囲気が出てましたけど!」
「そういう
「私、休日はここでランニングをしてるんです!」
「そうなんだ」
あっちゃー、まさかこんなところで知り合いに会うとは思わなかった。
しかも相手は、よりによって
「私のことを、めためたに振っておいて~」
「めためたにはしてないでしょう……」
「
「そうだよ」
「えっ!?」
同時に
「えっ……えっと、そんなにはっきり言われると私……」
「ごめん、同じ店舗内だからみんなに知られたくなくて」
「えっと、そんな……私……」
さっきまで半笑いだった
目元には涙まで溜まってしまっていた。
「わ、私……」
「ごめん」
「ふ、二人は付き合ってるんですか……?」
「まだ付き合ってはないけど……」
「まだってことはこれから付き合う予定なんですね」
「……」
この場合、なんと答えるの正解なのだろうか。
ありのままを彼女に伝えてしまっていいものか迷う。
「わ、私が卒業するまで待ってもらってるんです!」
「
急に
「チーフには学生の私とは付き合えないって言われてます! で、でも今日は私が無理を言って……」
「
……どうやら
「今日、誘ったのは俺。卒業するまで待ってて欲しいって言ったのも俺。それは事実だから」
「でも……」
「ごめん、
「
「え?」
「私、この会社に入ってから既婚者の人に声をかけられたりしました」
「……」
「彼女がいる人からは、これから別れる予定だからって言い寄られたり……」
「そっか……」
「だから、
「ごめん」
この子も、職場の汚いところを見てしまって悩んでいた子なのかなぁ……。
でも今の俺には謝ることしかできない。それがとても申し訳ない。
「……
「え?」
何故か、
「私もチーフのことが好きなんです。チーフのことを取らないでください」
「も、もー! 二人ともガチで謝らないで下さいよ!」
「でも……」
「本当に二人の関係が羨ましいなぁ……。スーパーなんて体の関係を求めてくる人ばかりなのに」
「か、体の関係!?」
「そうだよ、パートだろうがアルバイトだろうが遊ぼうとしてくる人ばかりなんだから」
「えぇええ!?」
男女間のいざこざで退職する人を、俺は何人も見てきた。
「でも、私、まだ完全に諦めたわけじゃないですから」
「へ?」
「私のほうが歳近いですから。またメッセージ送りますからね!」
そう言って、
一方、
※※※
「
「は、はい!」
そのままその場で食事を続けるほど、無神経にはなれなかった。
「どこで食べますか?」
「クルマの中で食べようか。ちょっと狭いけど」
「私は構いませんが……」
「どうしたの?」
「い、いえ……さっきの言葉が気になってしまって」
「さっきの言葉?」
「か、体の関係ってお話を……」
「あぁー……」
あんまりこの手の話は、
「
「気を付ける?」
「……
「そ、そうなんですか!?」
「例えばの話!」
「私の体にそんな価値があるとは思えませんが……」
お、俺だってこんな話をするのは恥ずかしいよ!
「だから最大限に気を付けること!」
「で、でも、チーフが私のことをお買い上げいただければそんなことには……」
「中にはお買い上げのものが欲しくなる人もいるの!」
「?」
あっ、また分かってない顔をしている。
いや、俺もお買い上げがどうのこうの所はよく分かってないけどさ。
「まぁ、いいや……。君は俺が守るから」
「ほ、本当ですか!」
「良い人ばかりじゃないからね。これだけは覚えておいてね」
「ありがとうございます! ところでなんですが……」
「どうしたの?」
「
「や、やっぱりそこは気になるの!?」
「だって、チーフのことは誰にも取られたくないんですもん」
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