♯11 お出かけした次の日は気まずくなる
うーん……俺、何かしたかなぁ。
昨日のデートでがっかりさせちゃったとか?
(あり得る……)
彼女は、職場の俺しか見たことがなかったわけだしな。
プライベートの俺を見て、がっかりしたというのは十二分にある話だ。
(……)
正直、ちょっと寂しいかも。
「ち、ちちちチーフ……」
あっ、
「どうしたの?」
「こ、これ、値付けラベルが付いていなかったので……」
「あ、ごめん! 気がつかなかった!」
「い、いえ……」
「そ、それでは値下げに戻ります……」
「うん」
そう言って、
えぇえええ!? 目を見てもらえないほど嫌!?
高校生の女の子が、年上の人に憧れるというのはよくある話だ。
それが一過性のものかもしれないということもよく理解している。
(……でも、なんでこんなにがっかりしてるんだろうな俺)
彼女の純朴さが眩しくて、その光に当てられてしまったのかも。
(いけない! いけない! 仕事は仕事)
落ち込みそうな気持ちをなんとか奮わせて、俺は発注の業務を行うことにした。
※※※
「
「は、はひぃ……」
「今日は忙しくないから、張り切らなくても大丈夫だからね」
「あ、ありがとぅございますぅ……」
舌も上手く回っておらず、口足らずな小さな子供みたいだ。
「あっ、今日はいつものじゃなかったかも」
「い、いつものじゃない?」
「コーヒー、得意じゃないでしょう。今日はオレンジジュースを買っておいたから」
そう言って、
「ど、どうしたんですか今日は?」
「んー? よく考えたらみんな同じやつじゃなくても良かったかなって。
「き、昨日……見てくださってたんですか……」
白河さんの頭からプシューと煙が出たように見えた。
顔がモーリタニア産の蒸し蛸みたいに真っ赤になってしまっている。
「きょ、今日の白河さんおかしくない? 大丈夫!?」
「す、すみません。大分、昨日のことを意識してしまって……」
「意識?」
「なんだか昨日のことが夢みたいで……今日はちゃんとチーフの顔が見ることができません」
「……」
……。
……。
「ぷっ――」
「ち、チーフ?」
「あははははは! そんなことで、さっきから様子がおかしかったの?」
「わ、笑うことないじゃないですか! 一緒にお出かけした次の日は、なんとなく気まずくないですか!?」
確かに
昨日は普通に話していたのに、次の日になると職場のかしこまった話し方になる。
お互いのプライベートな姿を見たあとに、仕事モードのお互いを見なければならい。
二人だけの秘密を共有しているような……そんな感覚が気まずい雰囲気を作ってしまうのだと思う。
「ち、チーフはそういうのに慣れているからいいかもしれないですけど!」
「慣れてないよ。嫌われたかと思って落ち込んでた」
「え?」
俺がそう言うと、ようやく
「ど、どういうことですか?」
「あー、スッキリしたから仕事しよー」
「えぇえ!?」
俺が作業場の端っこにあるパソコンまで戻ると、
「わ、私がチーフのことを嫌いになんて――」
「
「は、はい!」
「そろそろ値下げに行ってきて」
「~~~っ!」
俺がそう言うと、
「やっぱりチーフは意地悪ですっ!」
口ではそう言いつつも、
「それに私、いつでもチーフに値下げしていただくのを待ってますから」
「へ?」
そう俺に言い残して、
「……ぷっ」
やっぱり
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