地元の能力者達
サイを殺害してから、数日後。つまり期末試験が終わってからの高校。
愛九は世界侵略にさらなる飛躍を見せていた。ようやくIRの軍事強化が完成して、日本から世界に羽ばたく活路を見いだせたのだ。
もちろん世界を相手取るのは少しだけ時間を要するが、それでも今の内に超日本列島を完全支配することは可能である。
というのも今現在、超日本に対する否定的な組織、抵抗軍が登場したのだ。彼らは北上していき、北海道本土に立て籠もり、籠城している。
なので愛九はまず抵抗軍を瓦解させる事を最優先事項としていた。もし世界侵略をしようとした時に、抵抗軍の予期せぬ奇襲を受けたら、元も子もないのである。
だが。
北海道本土侵略計画を進めている時、予想外のイレギュラーが立て続けに起きた。まずは日本には未だに能力者の存在があったことだ。これは衝撃的なニュースだった。
愛九が世界侵略をしようと羽を広げていくと、彼らは隠していた能力を使用し始めたのだ。
なので幾つかの地元の都道府県に於いて能力者の存在を確認する必要性が出てきた。
これまで愛九は特殊な能力について、自分だけが賜われた神から贈り物だと考えていた。だがしかし、実はそこそこ同じような能力を持っている人間がいるのだ。
彼らは能力を持ちながらもそれを使うことはなく、平凡に人生を生きていたのだろう。理由は様々あるだろうが、少なくとも愛九には信じられなかった。
授業中。
愛九は物語を紡いでいた。彼にとって芸術の創作活動こそが、最も有意義な時間だった。あらゆる人間のあらゆる感情を使い、あらゆる物語を紡いでいくのだ。
そこにはあらゆる制約を越えた創造的な自由があった。
愛九は既に、彼ら、つまり邪魔者をどうやって排除するか、そんなストーリーを頭の中で紡いでいた。これまでの経験や今の立場を駆使して、最も効率的な方法で駆逐するんだ。
愛九は日本を意のままに動かしていく。既に超日本は愛九の手の中にあるのだ。
地方報道組織と連携しながら、偽のニュースを一斉に伝播していくのだ。サイが愛九に対して行ったように、愛九が今度は彼の秘策を再利用するのだ。
「緊急ニュースが只今入りました」
「緊急ニュースが只今入りました」
「緊急ニュースが只今入りました」
すると効果覿面だった。彼らはまんまと罠に引っかかって、直ぐに自宅の住所をさらけ出してしまった。
だから愛九は今から最も効率的な方法で、複数の能力者達を一斉に粛清するのだ。軍事強化されたIR達を引き連れて、北海道本土侵略の為に超日本列島を横断していく。そしてそのついでに、これまでに割れた地元に散らばる能力者を殲滅する。
「それでは、北海道全土侵略の決行は明日です」
首相官邸の席につく木戸首相の身体を借りて、愛九は同時に軍事部に指示を出していた。これから強化されたIR機体を使用して、北海道本土に進行していくのだ。
軍事強化されたIR機体をメインテナンスしながら、前日は終わる。
決行は明日だ。
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