2023-12-16

 独占欲が世界を覆っている。今僕が見ている世界は他の人によっても眼差されているということが惨たらしく感じられ、憎い。

 ちょうど、中学生くらいの時僕だけが知っている漫画が人気であることと誰にも知られていないことの両立することを願ったように、今僕は世界に美しい人々が満ちていて、美しい力で自ずから輝いていて、その価値は誰にも明らかである形で、僕にだけ眼差されてほしい。

 神が世界を作っているときは、さぞ楽しかっただろうと思う。美しい人を眼差しながら、他の誰もそれを眼差すことなく、自身が眼差されることもなく、ただうっとりと、微睡みのような時間の中で、幸福を享受したんだろう。何と狡いやつか。

 しかしまあ、信仰心の不足といってもいい。神ではなく、ただ唯一存在する自分を信仰する力。他の誰も、本当は存在していないとする立場。その立場によれば、僕だけの美しい人が存在するのか。

 いや、違う。それは確かに矛盾する。美しさとは、そこに在るゆえに感じられるものであって、もし彼ら彼女らが僕に眼差されねば輝かぬのであれば、それは美しい人ではない。美しい人は、僕などに関与せずとも、自ずから在るのだ。

 だから、今日も祈る。美しい人々よ、在ってくれ。誰も、それを眼差さないでくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る