転生したらぼっちだった
kryuaga
プロローグ
#1
その日もいつも通り。
そう、いつも通り何の変化も無い一日だった。
彼、
近所付き合いすらしていない、ぼっちな護にはただいまを言う相手すらいない。
軽くシャワーを浴び、身奇麗にした後、ベッドに横たわり今日も呟く。
「はぁ、死にたい……」
中二から不登校、ほぼ自宅に引きこもりつつ月二の高校に通い卒業、今もバイト以外ではほとんど自宅から出ず、買い物は通販で出来る範囲の物で済ませる生活。
いずれ体を壊しそうではあるが、護に変えるつもりは無い。
眠りに入るまでの合間に、年に数度考えては放置している事を思い返し、また考える。
(何でこんな自分になったんだろうな……)
護の家族構成は両親に姉一人、兄三人に末っ子の護の七人家族だ。
本当に小さな、小さな子供の頃は家族皆、それなりに仲は良かったと思う。
小学校三年の頃だったか、兄二人と険悪になり、それが十年以上続いた。
両親や他の兄姉達は、喧嘩している所を見ると多少諌めはするが、積極的に仲直りをさせようとはしない。
そもそも両親からして近所付き合いが苦手で、人間関係の構築が下手な家族だった。
小学四年の頃、長男がネットゲームを始めた。
思えば、これが無ければ、まだましな人間になれていたかもしれない。
……所詮はたらればの話、見苦しい言い訳にすぎないだろうが。
その頃のネットゲームは月額課金が基本で、お小遣いが貰える中学生になるまでは画面の横から覗いているだけだったが、とても面白そうに見えた。
そして中学生になり、時折パソコンの使用で兄達と揉めたりしつつ、ネットゲームにどっぷりはまり込む。
中学二年になって、一日のほとんどをネットゲームに費やしていた頃。
最初に遅刻を繰り返すようになり、しばらくしてからは昼休みから登校する程度、遂には学校に行かず、自宅でひたすらネットゲームをしていた。
学校でいじめられていたわけではない、少なからず友達もいなかったわけではないし、普通に登校していた頃は勉強に付いて行けなかったわけでもない。
ネットゲームにのめり込み過ぎる事で寝不足になり、遅刻。
遅刻を繰り返す事で学校で気まずさを覚え、昼休み登校。
かといって、ネットゲームを我慢する事も、やめる事も無かった。
いいや、むしろ悪化した。……つまりは完全に不登校だ。
両親が叱らなかったわけではない、出来うる限りは学校に行かせようとした。
しかし両親は共働きで、いつまでも護一人に構っていられるわけもない。
兄達も時折諌めはするが、護に聞き入れるつもりもなかった。
朝はベッドにしがみつき、両親が出勤してからはネットゲーム三昧。
義務教育の中学校を卒業し、いっそニートになろうかとも思っていたが、両親はお通夜の様な雰囲気になるし、さすがに自身にも不安が無かったわけでもないので、それならせめて、と月二登校の半通信制の高校に入学。
月二登校な上、一年半の引きこもりで半ばコミュ障になっている護に、当然友達が出来るはずもなく。
結果、月二度は学校にこそ行くものの、それ以外は完全に休みだ。と、公然とネットゲーム三昧で引きこもる駄目人間が出来上がった。
時折単位を落としつつ、五年かけてようやく高校を卒業。
ちなみにそれまでの間に、兄姉達は上京だとか寮住まいの仕事だとかで出て行き、家には両親と兄一人、それと護が住んでいた。
卒業後、しばらく完全にニート状態であったが、その頃になると、さすがに少しばかり将来に不安を感じていたのか、就職した方がいいのではないか、と考えるも、採用される自信がねえ……! などと思考が逃げに入り、せめて予行演習、あるいは対人慣れするために短時間ではあるがバイトを始めた。
初めの頃は同僚も、世間話を振ってきたりして話しかけてくれたりもしたが、
「よく知らないです」「あまりテレビ見てないです」
などと、当時ネットゲームは控えめになっていたが、今度はアニメに漫画、ライトノベルを集め始めていた護には、ニュースやバラエティに興味も見る時間も無かった。
三年程勤めていたが、最後には事務的な会話しかない、ある意味護には心穏やかな、あるいは憂鬱な職場となっていた。
結局、事務的な会話には多少慣れたが、世間話などほとんど出来ない人間になってしまった。
二十四にもなって無職となり、気まずい空気の中相変わらず趣味に走る護だったが、それでも現状に危機感を覚えていないわけではなかった。
しかし、職場での無機質な空気には耐えられるが、自宅の気まずい空気にはとうとう耐えられなくなったのか、一念発起。バイトで貯めた金を使い、アパートで一人暮らしを始める事になった。
この無駄なやる気を別の方向に使えば良かったのだが、思考が変にズレている。
ともあれ、一人暮らしとほぼ同時に――結局就職はせずバイトを始め、以前の職場と同じ空気を作り、今にいたる。
(まぁ、ネトゲや甘やかした両親のせいだ。
なんて言うのは簡単だけど、俺の人生の責任を取るのは俺だもんな……)
(結局周囲に甘え、自分を甘やかした俺が悪い、と)
(何度過去の事を後悔しても答えは同じ、先の事考えなきゃ意味ないよなぁ……)
(でもなあ、それにしても、)
「……はぁ、死にたい」
いつもの口癖を呟き、眠りにつく護であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます