47話 点線
黒野だ。今日も家で眠れないので、深夜におでん屋に直行。
大根と牛すじを頼んで小腹を満たすことにした。
「おっ、そうだ。豆子ちゃん、この間の向田さんがまた来てね。ご自分のお嬢さんに歌を聞かせてくれって頼んだらしいんだ」
「へぇ、それでどうしたの」
「それがさ、お嬢さんはそれを拒んで聞かせてもらえなかったらしいんだよ。歩み寄っても拒絶されるんだから最近の子は難しいよねぇ」
「ふぅ~ん。」
私はぐびっと水を飲みながら、まぁ、いきなり言われたら戸惑う気持ちも分かるかもしれないと、娘さんの方に感情移入してしまった。
やはり家族間の問題は大変だろうな。
と、そういう話を聞いた矢先、学校でいつもの様に教室で黄昏ていると、佐藤の奴が相談者を連れて来た。
「こっちです。どうぞこちらに」
「うっす、ありがとうございます。佐藤先輩」
佐藤が連れて来たのは、短髪のボーイッシュな女の子であった。中性的な見た目をしており男と言われれば男にも見えなくない。佐藤のことを先輩と言っているから、どうやら一年生のようだ。
「それじゃあ失礼します‼」
体育会系のノリで席に座るボーイッシュ。さてこんなハキハキした元気有り余ってる奴が一体どんな悩みがあると言うのだろうか?
「自分、一年の
「あーはい、私は黒野 豆子。それでどんな相談があるっての?」
「はい、自分、実はこう見えてバンドをしてまして、ドラムやらせてもらってるんっすが、バンドのボーカルが悩んでる様でして」
「ボーカルが?なんで本人が来ないのよ」
「それが、ボーカルは別の高校に行ってるんっすよ。中学は同じだったんっすけど、その子の親が教育熱心で有名進学校に進んだんっす。でもその子は本当はロック歌手になりたくて、それで中学の時の友達のアタシ達とバンド組んだんっす」
なんかどっかで聞いたことある様な話だな。まぁ、話の腰を折るといけないから、今は突っ込んで聞いたりしない方が良いか。
「それでバンド活動してたんっすけど、その子がお母さんと進路のことで喧嘩しちゃって、ずっと冷戦状態が続いてたんっす。でも最近になってお母さんが、その子の歌を聞きたいって言ってきたらしくて、その子ビックリして拒絶しちゃったらしいんっすけど、明らかにそのこと気にしている様子でして、どうにかして親子関係を修復させる知恵を貸して貰えないでしょうか?自分悩んでるその子を見てるのが辛くて辛くて」
友達の親子関係を修復したいなんて、友達想いの良い子だな。最近の子にしたら珍しいタイプかもしれない。
それにしたって気になるよな。だって似た様な話を最近聞いたもんな。
話の流れ的に絶対そうだと思うけど一応聞いてみることにした。
「その子の名は?」
「向田 邦美っす」
はい出た。点と点が一本の線で繋がったよ。これはどうしたって私に親子関係を修復させようとする流れでしょ。
はい、つづくでしょ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます